第5回
Monster Fish


 日本のみなさん、ご無沙汰してしまって申し訳ない。2002年の夏以降、BASSノーザンオープン戦やエバースタート・ノーザン戦に参戦していたため、とても忙しくて記事をアップできなかったんだ。今シーズンはBASSのみに絞って出場する予定だし、今はオフシーズンなので、またレイク・セントクレアの話をレポートしよう。

 詳しいことは、私がbasswaveのために書いた記事を見てもらえばわかるけど、私がメインにガイドしているのはレイク・セントクレアという北米五大湖エリアにある小さな湖だ。レイク・ヒューロンとレイク・エリーの間にあるハート型のこの湖はアメリカとカナダの国境に位置し、平均水深は約3m、最深部でも6.4mというシャローレイクだ。五大湖の大きさに比べたらワンド程度といえるかもしれないが、その面積は約1114平方キロメートルもあり、釣りをするのに狭いということはない(basswave注:琵琶湖は約674平方キロメートル)。
 私はカナダのウィンザーという町に住んでいる。ここやトロント(カナダ南東部の主要都市)の目の前を流れているのがデトロイト・リバーで、川の反対側がアメリカのミシガン州デトロイトだ。関税などの違いでアメリカ側のほうが価格が安い場合、私はバスボートに乗って川を渡り、マリーナにボートを停留してデトロイトで買い物をすることもある。「カナダ人はフランス語を話す」と思っている人もいるようだが、それはケベック州の人たちで、私の住んでいるウィンザーやトロントの人は、ほぼ英語しか話さない。ただし、アメリカの英語と比べると、少しばかり英国訛りがある。
 以前にも書いたとおり、レイク・セントクレアやデトロイト・リバーにはさまざまな魚種が生息している。ここにはラージマウスバスもいるのだが、前にも書いたとおり私のオススメはスモールマウスバス、ウォールアイ、マスキー、パイクだ。特にここのスモールマウスは数もサイズもラージマウスより上なのだ。ホームレイクだからといって自画自賛するわけじゃないが、スモールマウスを世界一楽しめるフィールドだといっても過言ではない。それくらいサイズもイイし、釣果もイイのだ。
 だから今日はそのスモールマウスの話を書こうと思ったのだが、知人に聞いたところ、最近日本ではビッグベイトが流行しているという。日本にはマスキーが生息していないのに、マスキー用のルアーを使っているアングラーもいるらしいので、今回はマスキーがどれほど獰猛な魚なのかをレポートしたい。

 昨シーズンのある日、私はミシガン州から来たお客さんにスモールマウスを釣らせるためのガイドをしていた。このとき私たちはショアから6マイルほど離れた地点にある小さなハンプで釣りをしていた。このハンプというのは基本的にソフトボトムで頂点部分が岩盤になっていて、周りには特にストラクチャーがないから、魚がステイする格好のスポットなのだ。濃霧に襲われながらなんとかスポットに辿り着き、私はまずファットフリー・シャッドで釣りはじめた。ハンプの大きさは直径16ftくらいで、水深が14ftくらい。広範囲に探れるクランクベイトはパイロットルアーとして欠かせない。すると、1投めで4Lbほどのスモールマウスがヒットした。その後、私はお客さんに釣ってもらうことにして横で見ていたが、日が昇ってバイトが止むころにはラクに20尾は釣りあげていた。 “釣りきった”感じはしなかったが、とりあえずスポットを休める目的で、近くのハンプで釣ってみたが、最初の場所にはかなわなかった。

 いろいろとルアーをスイッチして、最終的にズーム・フィネスワームのグリーン・パンプキンカラーをセットしたダウンショットリグをお客さんに手渡した。すると、さっきまでのノーバイトがウソのように、またラッシュがはじまって……。次の数分間、私たちは腰を抜かすような事件に遭遇した。
 お客さんがスモールマウスをフックアップした。ロッドの曲がり方からして2Lbクラスだった。するとバスは、ボートの方向に向かって猛スピードで泳ぎ出した感じがした。ロッドのテンションは弱まるし、ラインを巻き取るスピードもおぼつかない。「オォォーーッ」などと言っていると、今度はピタリと止まった。

第10回
Northern Open 第1戦で2位入賞

2005/08/11
待ちに待ったBASSノーザンオープンが開幕。今年は出だしから好調だ
第1回
Fishing on Lake St. Clair

2002/03/09
 
第2回
With Mickey Bruce

2002/06/13
 
第3回
Walleye, another great game-fish

2002/07/15
 
第4回
Smallies!

2002/08/28
 
第5回
Monster Fish

2004/03/12
 
第6回
KVD Interview

2004/05/20
 
第7回
Northern Open 第1戦
2004
2004/05/20
 
第8回
Northern Open 第2戦
2004
2005/01/11
 
第9回
Northern Open 第3戦
2004
2005/03/15
 ちょうど中層くらいの水深でボトムに引っかかったように見えたのだが、その周辺にストラクチャーはないし、根ガカリするはずもない。しかもロッドを煽ると、ゆっくりとバスが浮上してきたのだ。2ポンドのスモールマウスなのに重い。その重さはどう見ても2Lbではなかった。その10倍くらい、いや、それ以上……。
 ロッドが折れるか、ラインが切れるか。それくらいの重さだった。「水中に浮遊していた巨大なゴミか?」と思いつつ、3分ほどが経過した。すると、ヤツは姿を現したのだ!  なんと、30Lbを楽々と超えるマスキーが、ルアーを口につけたスモールマウスを、横向きの状態でくわえていたのだ。
 
 まぁ、モンスター級のマスキーを何度も釣った経験のある私は、このような光景をワンシーズンに2、3度は見ている。ところが、次にマスキーが起こした行動は、いまだかつて見たことのないものだった。ヤツはお客さんのスモールマウスをくわえたまま水面から飛び出し、バスにトドメの一撃を食らわそうとした。スケールとしては、大型犬がオモチャをくわえて頭を振っている感じだ。マスキーはカミソリのようにシャープな歯でスモールマウスを噛み切ろうと頭をシェイクしたのだが、ラインにテンションがかかっていたためか、うまくいかず、諦めて帰っていった。そして、ルアーもバスのクチから外れてしまった。すると、どうだろう。瀕死状態だったバスは、およそ4ftほどをテールウォークをして、その不死身っぷりをアピールしようとしたのだ。
 しかーし、スモールマウスは甘かった! マスキーは水面から数ft下で待っていたのだ。バスがフリーになったのを見つけると、魚雷のごとく猛スピードで傷だらけのスモールマウスに再度アタック。巨大マスキーはバスをくわえたまま、ミッションを追えたドイツ軍の潜水艦のように沈んでいった。最後に、マスキーが帰っていく際、チラッとこっちを見て笑ったような気がした(恐)。
 日本ではスモールマウスが小魚を食い荒らすギャングだと言われているそうだが、ここセントクレアではマスキーのベイトフィッシュになることさえ珍しくないのだ……。

(今回は一瞬の出来事だったので、写真に収めることができなかった。その代わり、他の釣行時に撮影したマスキーを掲載しておこう。これでマスキーの雰囲気がわかるだろう)。

JON BONDY (オフィシャルサイト