第9回
BASS Bassmaster Northern Open 第3戦


  ジャパニーズ・アングラーの諸君、元気にしているだろうか。前回のストーリーは昨シーズンのBASSノーザン・バスマスター・オープンの内容だった。少し時間が経ってしまったが、せっかくなので全戦を紹介するということで、今回は第3戦(最終戦)のスミス・マウンテン・レイク大会についてレポートしよう。
 まず、大会レポートの前に記しておきたいのは、オープンは全3戦でトレイルが組まれていること。第2戦はニューヨーク州ハドソンリバーで開催されたが、得意だったこのフィールドでミスを連発し年間成績ポイントで苦しいポジションに追い込まれてしまった。最終戦でトップ10でフィニッシュできれば、なんとか2005年度のバスマスターツアーにも昇格できる。トップ20に入れば、オープン・チャンピオンシップに出場できるだろうと予測していた。だから、この試合にはいつも以上に気合いが入っていた。

 バージニア州スミス・マウンテン・レイクは、美しい景観のフィールドだった。しかも今回のトリップでは、あのデビッド・ダッドリーが「家に来ないか?」と誘ってくれて、彼の自宅に私と友人の2人がプラクティスから本戦が終わるまでステイさせてもらった。彼にとってスミスマウンテンは地元のレイクということもあって、彼はこの大会にだけエントリーしていた。彼の自宅におじゃますると、まずところ狭しと飾られたトロフィーや記念品の数々に驚いた。若干29歳だが、バスフィッシングを通してすでに200万ドルを稼いでいる。彼は私たちセミプロのヒーローであり、スミスマウンテンを熟知するアングラーなのだ。そんな彼が「今は、3/8ozジグにズーム社のスーパーチャンクをトレーラーにしたものを桟橋の下に滑り込ませるテクニックでいい反応を得ている」と教えてくれた。もちろん、細かいことまでは聞かなかったのだが、これがヒントになって、翌朝のプラクティスではどこからチェックすればいいのか検討がついた。デビッドにはホントに感謝しっぱなしだった。
 プラクティスは1週間行なったがタフのひと言につきる。それでもいくつかのエリアに目星をつけられたし、そのエリアだったら本戦でも確実に釣れるだろうと確信した。デビッドに教わったテクニックやストラクチャー以外にも試してみたが、やはり一番反応がいいのはジグのスキッピングだった。とにかくドックの奥の奥に滑り込ませることが重要。レイクのショアラインには住宅が建ち並んでいて、ドックは数え切れないほど存在した。さて、どのエリアのドックにバスが集中しているのか……これが問題だった。
 
 本戦初日、私はスモールフィッシュを4尾ウエイインし7Lb4ozをスコア、27位につけた。デビッドは14Lb10ozをウエイインして、初日をリードした。「さすがデビッド」と感心したが、感心ばかりしていられない。自分に課した順位でフィニッシュしなければ目標が達成できない。この日、ジグの他には、一時期日本で大流行したというゲーリー・ヤマモト社のセンコー(国内ではヤマセンコー)のワッキーリグを使って1尾をキャッチした。
 予選2日め、なんとかして27位からトップ10に入れるように努力するほか方法はなかった。桟橋という桟橋を攻略して、少しでも多くのバスにアピールするつもりだった。残り10分になった時点でまだスモールフィッシュを2尾しか持っておらず、これが約3Lb程度だった。私はまだギブアップする気持ちではなかったし、それから数分間釣り続けた。
第10回
Northern Open 第1戦で2位入賞

2005/08/11
待ちに待ったBASSノーザンオープンが開幕。今年は出だしから好調だ
第1回
Fishing on Lake St. Clair

2002/03/09
 
第2回
With Mickey Bruce

2002/06/13
 
第3回
Walleye, another great game-fish

2002/07/15
 
第4回
Smallies!

2002/08/28
 
第5回
Monster Fish

2004/03/12
 
第6回
KVD Interview

2004/05/20
 
第7回
Northern Open 第1戦
2004
2004/05/20
 
第8回
Northern Open 第2戦
2004
2005/01/11
 
第9回
Northern Open 第3戦
2004
2005/03/15
「ここ一帯のドックを攻めて終わりにしよう」と決めて撃ち続け、残り2つとなったドックのひとつにジグを送り込むと、ドッカーン! ついに来た。人生最大のビッグバイトがロッドに伝わったが、その姿を見て再度驚いた。「これはイケる!」と思わせる巨大なバスだったのだ。そいつはドックの下でボイルしたり、なんとか逃れようと暴れるが、私も必死だ。そのデカさと時間ギリギリの感動でボーっとしているコ・アングラーに「ネットだ、ネットですくってくれ!」と叫び、ランディングに成功した。こんな重要な大会でビッグバスをキャッチするなんて、ホントに信じられないことだが、やはり感動に浸ってはいられない。会場まで飛んで帰らないと帰着遅れで、せっかくのバスがゼロになってしまう。私はそのデカさから……強烈なインパクトから「絶対に10Lbオーバーだ」と思っていたが、なんてことはない。6Lb8ozだった。しかし、この大会のビッグフィッシュ賞は獲得できた。
 このビッグフィッシュのおかげで、27位から8位にジャンプアップ。9位にはジャパニーズ・アングラーのノリオ・タナベがつけていて、どうも同じテクニックでスミスマウンテンのバスを攻略していたようだった。最終日は、欲張ることなく2尾をウエイインできればツアーやオープン・チャンピオンシップも夢ではないポジションだった。しかし不運にも、最終日の私は最悪だった。この日、私は人生でもっともハードに釣りをしたつもりだったが、1尾すらキャッチできなかったのだ。言葉では表現できない落胆を感じた。25位に順位を落としてフィニッシュしたが、それでもまだ完全に諦めていなかった。たしかにツアー昇格のポジションでは終えられなかったが、ひょっとしたらオープン・チャンピオンシップにはクオリファイされるのではと、わずかな希望を託していたのだ。
 それで私と友人はオフィシャルの集計を1、2時間待った。クオリファイのリストが配られて、名前を探すと、私が18位にいるではないか!  もう過剰なほどにエキサイトして、友人と抱き合って、勢い余って家族や地元の友達にまで電話してしまった。ところが、さらに1、2時間が経過したころ、群衆の中から「このリスト、間違ってるよ」と指摘する声が上がった。その瞬間、私は強烈な痛みを胃に感じた。新しい順位が発表されて、恐る恐る見てみるとさらに仰天。なんと21位まで降落していたのだ。
 チャンピオンシップに出られるのは20位までで、20位との差はたった4ポイントだった……。このときの私の気持ちは言葉では表現できない。落胆、感激、落胆と、なんとも心理的な起伏の激しい最終日だった。
12時間におよぶ帰路は、言うまでもなくローーーングな旅だった。このショックから立ち直るのに……つまり、このレポートを書くまでに数ヶ月を要した。とはいえ、落ち込んでばかりもいられない。来季も挑戦するつもりなので、そのときはまたトーナメントをレポートしたいと思う。
 
 追伸:快く私たちを迎え入れてくれて、太っ腹にも必勝テクニックを伝授してくれたデビッド・ダッドリーは、結局優勝して5万ドルを手に入れた……。

JON BONDY (オフィシャルサイト