第1回
Fishing on Lake St. Clair


  冷たい冬風が強く窓を打っている。私は今、そんな窓越しに凍りついたレイク・セントクレア(Lake St. Clair)を眺めている。ボーっと眺めていると、いつの間にかクリアーで鏡のように滑らかな水面に愛用のチャンピオンボートをランチングして、アメリカ中でも高い人気を誇る湖を駆け抜けている姿を想像してしまう。
 私の名前は、ジョン・ボンディー(Jon Bondy)。アメリカ北部に横たわる五大湖レイク・エリー(Lake Erie)やレイク・セントクレア、デトロイト・リバー(the Detroit River)を中心にフルタイムのフィッシング・ガイドを営んでいる。基本的にここでの釣りは、ウォールアイ(Walleye)やスモールマウスバスがメインで、1年間で約200日は湖上で“仕事”をしている。日本でもスモールマウスが釣れるフィールドがあると聞いたので、私自身もエキサイトしている。スモールマウスはラージマウスとは異なった生態を備えており、そのファイトは「ラージ以上に強い!」と唱えるアングラーも多い。これは、スモールマウスを釣り上げたアングラーにしかわからないかもしれないが、その魅力はまさにFall in Love!……つまり、スモールマウスに恋をしてしまったようにも感じるはずだ。というわけで、私はbasswaveでスモールマウス・フィッシングのテクニックとアメリカ北部での釣りを中心に紹介していくつもりだ。
 インターネットを見ていると、日本語で書かれた多数のバスフィッシング関係のウェブサイトに行き着くことがある。私には読めないが、ルアーメーカーをはじめ、個人のサイトも多く、日本でも非常に多くのアングラーがバスフィッシングに触れていると思うと、同胞と呼んでもおかしくないだろう。スモールマウスのことは後述するとして、今回が最初ということで私のことも触れておこう。
 みんなにも釣りをはじめた動機があるだろうが、私が釣りの魅力に駆られたのは10歳のときだったと思う。近所に住んでいた友だちが「近くのクリークに釣りに行こうよ!」と誘ってくれたのが、そもそもの始まりだった。その日、私は彼とともにブルーギルやキャットフィッシュを釣り上げたことを覚えている。小、中、高校と釣りをし続け、時間があればいつでも釣りをしていた。しかし、気がつけば一緒に釣行している友だちの数も少しずつ減っていったのだ。なぜか!? それは、彼らが他に「楽しいこと」を見つけだしていたからだった。ゲームセンターであったり、車であったり、女の子であったり……まぁ、いろんなことに興味が沸く時期だったのだろうが、私はそれでもバスフィッシングを楽しんでいた。
  カレッジでは水産学を専攻した。日本にも私と同じ考え方の人がいるはずだ。あまりにも魚や釣りのことが好きだったせいで、水産学を学びたいと考えたり、実際にそれを専攻したアングラーがいるはずだろう。カレッジでは基本的に魚の育成を助けるエサの研究や養殖を学んだが、魚に関することであれ
ば産卵、遺伝、病気や正しくふ化させることで個体数を増加させる研究も楽しかった。だが、問題はここからだった。カレッジを卒業すると、「私が実際にやりたかったことは魚の養殖をすることではなく、魚をたくさん釣りたいことだ」ということを悟ったのだ!ところが……まず最初に、そんなこと私の両親が許すわけがなかった。というのも、彼らは私が地元で有力な自動車産業に係わる仕事についてもらいたかったからだった。
第10回
Northern Open 第1戦で2位入賞

2005/08/11
待ちに待ったBASSノーザンオープンが開幕。今年は出だしから好調だ
第1回
Fishing on Lake St. Clair

2002/03/09
 
第2回
With Mickey Bruce

2002/06/13
 
第3回
Walleye, another great game-fish

2002/07/15
 
第4回
Smallies!

2002/08/28
 
第5回
Monster Fish

2004/03/12
 
第6回
KVD Interview

2004/05/20
 
第7回
Northern Open 第1戦
2004
2004/05/20
 
第8回
Northern Open 第2戦
2004
2005/01/11
 
第9回
Northern Open 第3戦
2004
2005/03/15

  私が現在住んでいるのは、カナダのオンタリオ州にあるウィンザー(Windsor)というところで、近くで大きな街といえばトロント(Toronto)ある。このウィンザーは1本の川を隔ててアメリカのミシガン州デトロイト(Detroit)と隣接している。デトロイトと聞けばピンとくる人も多いかと思うが、ここは重工業が盛んな地域で、自動車産業が大きな割合を示している。デトロイトといえば、映画「ロボコップ」の背景になった場所でもある(ちなみに、ロボコップが所属していたのはデトロイト警察署だ)。周りの友だちの多くがこの自動車産業に携わっているため、私の両親も必然的にその産業に入っていくと感じていたのだろう。
 しかし、私はそういうビジネスに付きたくなかった。それで私はこのチャンスを逃す手だてはないと感じ、思い切ってフィッシング・ガイドになることにした。それが今から8年前のことだ。
 
 
 では、レイク・セントクレアとスモールマウスの話を少しすることにしよう。レイク・セントクレアーにおけるスモールマウスとラージマウスの比率は、前者が10とすると後者は1くらいの割合。なぜなら、ここのフィールドコンディションはオープンウォーターが中心で、それに適応しやすいスモールマウスの方が繁殖力に富んでいるからであろう。ラージマウスはもっと湿地帯じみた地域や水生植物の多いフィールドのショアライン沿いを好んで生息する。そのため、これら2つのバスの大きな違いは、ラージマウスはストラクチャーの影でステイしてベイトフィッシュが横をとおり過ぎるのを待つ傾向があり、スモールマウスは回遊して自らターゲットとなるベイトフィッシュをサーチして、15フィートの深さからでも水面に突撃してエサを獲る習性を備えている。ゆえに、スモールマウスがいるエリアを特定することは難しいが、回遊経路やパターンを絞り込めば、トーナメントで勝利を上げるほどのウエイトを叩き出すこともできる。一般的にスモールマウスはラージマウスよりサイズが小さいといわれるが、このセントクレアではスモールマウスのパターンで優勝しているプロアングラーがたくさんいるほどだ。
 従来、スモールマウスはウィスコンシン州、イリノイ州、ミシガン州を中心としたアメリカ本土における中西部に生息していた魚で、現在では北はカナダや南はテキサス州でもその生息が確認されている。ラージマウスはアメリカの南部を中心に生息している魚種と思われがちだが、除々に低水温地域での定住にも適応しつつある。ちなみに、4パウンドのスモールマウスが、そのサイズに成長するためには10〜15年の歳月が必要とも考えられている。日本でもおなじみのケビン・バン・ダム(Kevin VanDam)のお兄さん、ランディー・バン・ダム(Randy VanDam)はミシガン州のレコードバス(9パウンダー)を釣り上げている。果たして、これは“何年もの”のスモールマウスだったのだろうか……。
 
  スモールマウスは多くの場合、オープンウォーターでルアーにバイトする。一方で、ラージマウスはカバーの下にルアーをプレゼンテーションして釣り上げる方が確実だろう。そのため、スモールマウスを釣り上げるためには、広範囲に探れるタイプのルアー、スピナーベイト、ジャークベイト、バイブレーションなどがベーシックチョイスとなる。チューブ系ワームも多用されるが、前述したルアーの方が手返しがいい。私がラージマウスをねらって釣るのであれば、ラバージグ、ワーム、バズベイト、スピナーベイトなどをストラクチャーに対してタイトに攻略する。手数が多い釣りだ。
 また、ラージマウスは小さな池でも生息できるのに対し、スモールマウスは規模が大きめで、贅沢をいえば、ボディーウォーターにカレントがあるフィールドがいい。小規模なリザーバーであっても、少しでもバックウォーターからのカレントがボディーウォーターに影響している方がベターであり、さらに、そのフィールドにある程度の水深があることも重要なポイントの1つなのだ。

  私は、そんなスモールマウスをメインに釣り上げられるレイク・セントクレアを中心にガイド業を営んでいるが、アメリカ中を釣り歩いてもいる。そうすると、それぞれの地方でのショップに行き着き、それぞれの地方で人気のあるルアーに出会ったりする。その中でも忘れがたい釣行は、昨年メキシコで釣りをしたことだろう。その結果、多くのフィールドでフィッシング・フレンドを作ることができた。次回からは、私が今までに経験してきたことをみんなに伝えていこうと思う。現時点でもそのアイデアが浮かんできて、どれを最初に書こうかと悩んでいるほどだ。さらに、私には多くのプロアングラーの友だちもいるので、彼らにもインタビューしていこうとも考えている。ガイドをしているときに起こった出来事や地元のショップ、「セントクレアはこんなところなんだ」とイメージできるように伝えていきたい。

 私自身もトーナメントに参戦することがあるので、トーナメントアングラーとしての視点でいろんなことを紹介できそうだ。もしみなさんの中でアメリカやカナダのバスフィッシング、スモールマウス・フィッシングに興味がる人がいるなら、いつでもメールを送ってもらいたい。もちろん、私にガイドを依頼したいという日本のゲストも大歓迎だ。また、私のウェブサイトもあるので、興味がある人はそちらもチェックしてほしい。では、次回の掲載を楽しみに待っていてください!

JON BONDY (オフィシャルサイト