2005年09月09日

リー・シッソンとロン・トロイヤーの話--その3

今日のオススメ曲「Grechen WilsonのI'm here for the party」

 私は今回の渡米でリー・シッソンとロン・トロイヤーにはじめて対面したが、まったく初対面といった感じはなかった。あとからシッソンにそのことを告げると、彼も私を古くから知っている友人のように感じたと言っていた。それは私が80年代のアメリカのフィッシングシーンについてシッソンとよく電話やメールで話していたからと思われる。彼は60年代後期からハンドメイドルアーを作り始め、70年代にバグリー社に入社し、メインデザイナーとして活躍した。私は近年になるまで彼がバグリーのデザイナーであった事実を知らなかったが、私がバス釣りと出会った頃、バグリーのルアーなしに釣行はありえなかった。そんな時代を経験し、少ない知識を彼にぶつけて話しを聞く日々が続いていた。シッソン曰く、現在のアングラーは昔の話に興味がないらしく、誰も振り替えそうとしないらしい。みんな最新テクニックを聞きたがるそうだ。昔話を聞きたいと申し出た私は日本に住んでいるわけで、変わったヤツだと思われながらも、彼との関係は狭まっていった。そんな背景があったため、ラスベガスで初対面したにも係わらず、シッソンはも私を一目見て誰かのか察したのだろう。

 リー・シッソン/ソーンウッドルアーズのブースに長居することができなかった私は、「持ってきてくれ」と言われたジャパニーズルアーを数個手渡して、「また来るよ」と言って立ち去るつもりだった。すると彼らは、「私たちもサンプルを持ってきているから、これを持ってけ」と両手から溢れるほどのルアーを渡された。シッソンからは発売予定中のプレミアム・バルサシリーズ、トロイヤーからは名称すら決定していないシャッドタイプのクランクベイトをもらった。

 その日の午後、私がランチ休憩をしてICASTの会場へと歩いている途中、後ろから私を呼ぶ声が聞こえた。トロイヤーである。彼はトイレ休憩から帰ってくる途中だった。
 「お互いに時間のない身だから長く話せない。ゆっくり話たいから、今夜、私たちと一緒にディナーを取らないか?」と誘われた。ウッドクランク製作おける神様的存在であるシッソンと、彼の技術に惚れて単身ニューヨーク州からシッソンのフロリダ州にある工場へと移ったトロイヤーと食事ができるとは、なんと光栄なことか。二つ返事でOKして、夕方5時にシッソンブースで待ち合わせた。
 
 待ち合わせの時間に行くと、トロイヤーが何を食べたいと聞いてきた。ラスベガスにはどんなレストランもあるが、なにせ、ここは観光地。アメリカ国内でも食事代が高くつく場所である。トビッキリ美味しいものが食べたければ値段は高くなるが、必ずありつけるだろう。うーん、どうしようか、とシッソンと迷っていると、トロイヤーが「シーフードはどうだ? 好きか? それともアメリカに来たんだから、ステーキがいいか?」と聞いてきた。シッソンと顔を見合わし、気分的にシーフードとなった。
 ICASTの会場からクルマで移動すること約10分。某ホテルに到着した。ホテル内にあるシーフードレストランを利用することにした。どこのホテルも同じだが、入るとそこにはカジノマシーンがドカーンと並んでいる。まったくギャンブルに興味のない我々は素通りし、レストランに……。
 ところが、トロイヤーがカジノのど真ん中で立ち止まった。「このホテルは客寄せのために、無料でショーを見せている。面白いから見ていこう」。私たちは、ちょうどスタートしたばかりのショーを観賞した。
 すると、隠れている面積がすこぶる小さいワンピースのスイムスーツ(ダンス用レオタード?)を来たオネーチャンたちが10人くらい出てきて、ステージで踊り出した。エッチな雰囲気の踊りではないが、ダンスのテクニックにはトップクラス。そしてトロイヤーが言った。
 「どうだ、イイだろ? 私はあのダークヘアーの女の子が好みだな。DODGEはどれだ?」と中学生のような語りぐさでニヤニヤしている。私も調子にのって「ん〜、基本的にレッドヘアーが好きだから、あの娘かな」と言うと、「グッド・チョイス」と返す。私たちは、ラスベガスでただのオヤジと化し、親交を深めた。
 「DODGEなら、きっと気に入ってくれると思ったよ。私が選んだシーフードは最高だろ?」。
 私とシッソンは顔を再び見合わせた。トロイヤーが言ったシーフードとは「See Food(See=見る Food=食べ物)」。すなわち、目の肥やしを意味していたのだ!
 まじめな性格のシッソンは、「日本に帰って、アメリカ人の変な部分を広められたら、どうするんだ」と言いながらも、意外とオネーチャンの踊りに釘付けだった(笑)。
 「まぁ、そう言うなよ」とトロイヤーが続く。「本当のシーフード・レストランは、この奥にあるんだよ。人気店らしい。ちゃんとガイドブックに掲載されていたから大丈夫だ」とお上りさんっぷりを激白。ニューヨーク州出身と言っても、彼が以前住んでいたソーンウッドという町はマンハッタンから1時間ほど離れたベッドタウン。日本でいうなら、距離的には東京と群馬くらい離れている。
 お目当てのシーフード・レストランに入ると、客が長蛇の列をなして店の外にまで並んでいた。

続く……

Posted by DODGE at 2005年09月09日 17:29 in 釣り