2004年02月18日

バービーが破局! その原因とその後を推測する

今日のオススメ曲「DESTRUCTIONのAntichrist」

 驚愕のニュースを発見! バービー人形のバービーと彼女の“彼氏”とされてきたケンに破局が訪れたらしい。情報によると、2人の“代理人”(バービー人形の営業担当者)は、「それぞれが別れて、充実した時間を過ごすときが来た。友人関係は維持する」とお互いは別離することに理解を示し、発展的破局だったと強調した。

 2人が出会ったのは1961年らしいのだが、それ以後、彼女たちが1度も結婚することなく「ただ付き合っていただけ」とは知らなかった。
 アメリカの法律では(州によって異なるが)親密な関係を持つ男女が同じ屋根の下で8年間生活していた場合、それは法的に結婚していると認められる。たとえば彼氏がこの世を去った場合、遺留品や財産を彼女が相続できるという配慮からだ。この法律がなければ、「ハイ、サヨナラ」で終わってしまう。8年間も連れ添ったのだ、「ハイ、サヨナラ」では悲しすぎるから、夫婦として認めるというもの。
 アメリカの場合、神父さんなり、結婚を認可する人(免許が必要)に結婚したことを認めてもらい、それを役所に届けるため、日本のように勝手に婚姻届を提出できない。しかし、8年間連れ添った場合は、第三者の見届けナシでも婚姻が成立しているというものだ。
 バービーとケンの場合、バービーハウスで8年間以上一緒に住んでいた可能性が高いのだが、オフィシャルは彼女たちは夫婦ではなく、ただ交際関係にあっただけだとした。
 
 ところが、忘れてはならない事実がある。ケンは知っていたのか定かではないが、バービーはウェディング・ドレスを所有していた。これはすなわち、バービーは結婚を考えた時期もあり、それに備えて購入していたのだ。 また、バービーの友達のアランと結婚して妊娠したミッヂ(ミッヂは妊婦人形でお腹から赤ちゃんを取り出せる仕様)を見て、「いいなぁ」と感じたときもあったであろう。これらの証拠から、バービーには結婚願望があったと断定できる!

 では、ここから先は、僕の推測に基づく2人の破局物語をお送りしよう。 

 結婚願望が強くなってきたある夜の食後、ソファーでスポーツ紙を読んでいるケンにバービーが語りかける。勇気を振り絞り、声にならない声で切り出した。
 「ねぇ、私たちって、そろそろ……」。
 男性は基本的に、脳の構造から1つのことにしか集中できない。そのため、新聞を読んでいたケンは、無視をしているわけではないが、バービーの声が小さかったのもあり、ハッキリと聞こえなかった。
 「ん、なに? なんか言った?」
 「うんん、なんでもないんだけど……。ただね、思ったの……」
 「ハッキリ言えよ。いつも言いたいことは何でも言うじゃん」
 「別に今日じゃなくてもいいの。また今度、話すわ」とハッキリと言い出せないままバービーは話を止める。

 ところがケンはわかっていた。バービーが言いたいことはわかっていたが、結婚して落ち着くより、もうちょっと自分の世界を楽しみたかったケンは、「ズルズル行くとバービーに迷惑だ。俺も伝えなきゃいけない」と決心する。

 日曜日の午後、ビルの間から陽が差し込むオープンカフェにバービーを誘い出したケンは彼女に告げる。
 「俺たちって、そろそろ、お互いに外の世界見てみないか? 何か新しい発見があるかもしれない……」。
 別れ話を告げられるのだろうと薄々感じていたバービーは、
 「そうね。少し時間を取った方がいいかもね(微笑)」と強がりを言ってみせた。
 女心をわかっていないケンは、
 「そうか、バービーもそう思うのか」とあっけらかんと返すと、
 (「私の気持ちをわかってくれない男を押し切って結婚したって、幸せになれないわ」と内心に秘め)「じゃ、行くわね。バイバイ」と笑顔混じりで立ち上がり、走って地下鉄の階段を駆け下りた。

 その後、お節介をやくのが大好きな友達連中に、
 「ケンって、ホント鈍感よね。責任取らないなんて、サイテー。何年振り回したと思ってんのよ。大丈夫よ、バービー。あなたには、きっとイイ人が現れるから。ヨシッ、今日はみんなで食べよう。いっぱい食べれば、イヤなことも忘れられるから、ね? 実はね、ウチの会社の営業にいいオトコがいるんだけど……」とマシンガンのようにしゃべり倒し、すぐさま新しい男とくっつけようとする。

 数ヶ月後、街角でバッタリと出会ったケンはバービーを見て驚く。
 「バービー、どうしたんだ? 会わない間に、ちょっと……」
 「太ったって言いたいんでしょ?」
 「いや、そういうワケじゃないんだけど……。あっ、バービー、紹介するよ。今付き合ってるチェルシー。チェルシー、この子は……」
 「チェルシー、まさか貴方がケンを付き合ってるとは。会社の営業のオトコを紹介するって言っておいて!」
 「ち、違うの、バービー、聞いて……」

と、泥沼化した昼ドラ風の展開を見せるバービー劇場は第1章を終えた。

 第2章もついでに行ってみよう。

 ケンと別れて数年が経った。あれから、数人の男と付き合ったが、ケンと一緒だったころのような熱さは得られず、すぐに別れてしまう。30歳代も半ばを迎えたバービーの心には、結婚願望とケンと別れることで知った自由奔放な生活の楽しさの二局面の狭間で悩んでいた。
 「自由な生活は捨てたくない。ただ『捨ててもいい』と思える男性が、この世にどれだけいるんだろう。周りの友達はみんな結婚しちゃったけど、夫婦生活、家事、育児、仕事……。そんなリアルな大変さを見ちゃったら、恐くて結婚できない。それに、離婚した子たちだっているし。結婚なんて……しなくてもいいかぁ」と思想の転換が訪れていた。
 若いころは、「絶対に23歳までに結婚したい」と賜っていたが、大学を卒業して社会に出てみると、「そんな若くして結婚するのはもったいないかも」とも思っていた……ケンに出会うまでは。

 バービーは周りを見て判断することにした。都市部の自分と同じ世代(30歳代半ば)の女性の54%は未婚である。友達はみんな20歳代で結婚したが、子供が幼稚園に入学するころには30%が離婚している。つまり30歳代で子持ちの離婚だ。
 それを端から見ているバービーは、「離婚したって、ちゃんと慰謝料とか養育費を払い続けてくれる男なんていないし、結局子供の世話と仕事をやらなきゃいけないし。経済的なことを考えたって、離婚する方が不利に決まってる。だったら、いいオトコが現れるのを待つよりも、1人で生きていく方法論を考えた方がいいかも」と未婚の30歳代女性にありがちな結論に落ち着いたのだった。
 未婚の30歳代女性たちは、大体が容姿端麗で、キャリアもあり、経済力だってそこら辺の男には負けていない。何が原因で結婚できなかったのかと問えば、妥協することを知らない頑固さに問題があった。

 海に夕日が沈む景色を一望できる高台に建設されたマンションの一室。なにも置かれていない入居前のフローリングの床に寝ころんでバービーは囁いた。
 「ついに、買っちゃった」。
 貯め込んだ1500万円を頭金にして、新築マンションを購入したのだった。
 「やっぱり、これからのオンナは仕事よね!」と自分に気合いを入れ、独身貴族入りを宣言した。

 引っ越しの準備をしようと、今まで住んでいたアパートを片付けていると、ドアをノックする音が聞こえた。友達が片付けの手伝いに来たのだと思い、「もー、遅いよー」と元気よくドアを開けると、ケンが立っていた。

 一瞬にして、ケンとの思い出が走馬燈のように駆けめぐった。

Posted by DODGE at 2004年02月18日 16:51 in 2004.1〜4月