2004年01月07日

競技化された総合格闘技

Date: 2002-12-25 (Wed)

今日のオススメ曲「中村雅俊で俺たちの旅」

 さて、PRIDE24はまた最悪の興行となってしまった。カードはよかった。選手層も厚かった。総合格闘技の大会としては、まずまずの展開であった。では、何が決め手とならず、平凡な興行となったのだろうか。それはPRIDE22と同様に、24はビッグイベントとビッグイベントの狭間にある、いわゆる“繋ぎ”の興行となったためだった。

  ヘラ釣りのネリ餌を作る際、必ず重要となってくるのが“繋ぎ”である。繋ぎの分量、質、そして何を混ぜるのかによって、全体のバランスが構築される。分量を間違えたのであれば、次回の釣行時に配分を変えればいい。だが、待ちわびた貴重な週末を繋ぎの分量1つで台無しにしては、いくら次回に反映できるといっても悔しい。
 釣りはまだいい方だ。PRIDEは2ヶ月に1回のペース。次回の興行は3月に開催される。しかも、アリーナシートは10万近い値で売り出されている。ただの繋ぎの興行としてやられた日には、観戦した者にとってはいい迷惑である。
 興行主にとっては、線で繋がる一興行でしかないかもしれないが、客にとってはそれが唯一だ。もしPRIDE24を総合格闘技の観戦デビュー興行にした人がいたなら、もう2度と行きたくなくなるかもしれない。
 
 21世紀の総合ファンは目が肥えている。特に、日本のファンは目が肥えていると言われている。グランドでの関節技の取り合いにしても、一つのムーブでそれがどの技に移行できるのかをファンが瞬時に判断できる。“客のくせに”「なんであの技が来る体勢にあって、防御できないんだよ!」と怒るファンもいる。実際にリングに上がる選手にとっては、対戦相手に勝つと同時に試合内容でも観衆に魅せなければならないから、ここ近年の総合格闘技では選手に高いハードルが与えられたといえる。
 
 要するに、「何でもアリ」であったPRIDEは総合格闘技と化し、現在では“実力”だけが唯一であった興行に、エンターテイメント性まで求められている。ハードルが高くなって当然だ。
 端的に言えば、PRIDEは強さだけがクローズアップされるべきリングであるにも係わらず、プロレス的感動や観衆を魅了する要素が十二分に求められているということだ。
 PRIDE23では、高田引退という大きな図式が成り立ち、それを盛り上げようとカードも最高のものだった。高田戦(第8試合)に向けて、盛り上がるような試合順とカードがあったわけだ。
 では、PRIDE24では、何がテーマとなっていたのか?ひとつ1つのカードにはテーマがあるにしろ、興行全体にテーマがないからダラダラと試合が進み、シコリを残して終了した。
 
 これは、主催者側が興行の流れを考えずに、消化試合のごとくPRIDE24を開催したためと、もう1つは同大会に参戦した選手のプロフェッシャナリズムの低さが目立った。特に後者は致命的だ。
 PRIDE24に参戦した選手の技術は、初期のPRIDE参戦選手とでは、比較にならないほどレベルが高い。
 ただし現在の“攻防”が興行の質を下げている。選手はお互いに高いレベルにある選手だとわかって対戦しているため、“攻めながらにして防御のことも考慮した構え”にある。
 そもそも、強い選手には、どの位置からどのように攻められたとしても防御できる、瞬時に対処できる瞬発的な頭の回転のよさと身体が自然に動いてしまう動物的感覚の両極端な部分が備わっている。しかし、“攻めながらにして防御のことも考慮した構え”ではどうしても心境的に前に出られない。「アイツがパンチを打ったら、下に潜り込んでタックルをして……」とプランを考えているようでは、本当の意味でプロのバーリ・トゥーダーなのだろうか?
 真のバーリ・トゥーダーとは、とりあえず攻める。かわされたら、それに相応した対応をとる。
 負けない試合をすること、判定で白星を稼ぐことは、そんなに重要なことなのだろうか?
 PRIDE24において、松井大二郎、アントニオ・ホジョリオ・ノゲイラ、ホドリゴ・グレイシーの判定の末の白星は、そんなに貴重なものなのだろうか?
 ダイナミックな展開に欠けるバーリ・トゥードなんて、リリース禁止状態の琵琶湖と同じだ(意味がないということ)。
 
 PRIDE24では、プロのバーリ・トゥーダーになりきれていない選手と、エンターテイメント性にかけた選手、要するにセミプロ・バーリ・トゥーダーが多数出場したことで、興行自体を消化不良とさせた。
 
 “繋ぎ”の興行に一流のプロの選手を出す必要はないかもしれない。だが、ファンは誰が一流で、誰がセミプロなのかわかっている。
 競技として成立した現在のPRIDEは、さらに競技化を見つめなおすUWF JAPAN (U-STYLEに改名)に勝てるのだろうか。

Posted by DODGE at 2004年01月07日 17:45 in 2002.11〜12月