2003年12月19日

後生に語り継げる興行、PRIDE23

Date: 2002-11-29 (Fri)

今日に推薦曲「レッド・ツェッペリンの天国への階段」

 一般層でK-1やPRIDEがプロレス以上に人気が高いのは、ある程度、一見さんでもわかりやすい試合内容だからだ。K-1はノックアウトするだけ、PRIDEは何でもアリのルール。プロレスのように曖昧な判定はない。前者からは、“勝った負けた”という白黒がハッキリした結果が出やすい。後者は“乱入により無効試合”などという判定もよくある。
 PRIDEとK-1のファン層を比較すると、PRIDEの方によりマニアックなファンが多い。立ち技だけでなく、グランドでの攻防が含まれるため、見る側にも少なからず“技を見極める知識”が必要とされる。「アントニオ・ホドリゴ・ノゲイラのファンです」と言われても、ボクからするとそれは普通だが、エメリヤーエンコ・ヒョードルのファンというのは、かなりヲタク路線まっしぐらだ(実はボクもリングス時代からの両選手のファンだが……)。

  見る側が知識を習得してより試合を楽しもうとすれば、選手自身も負けずと研究し、練習し、対応する。PRIDEの定義はそもそも異種格闘技戦でありバーリ・トゥードだったが、いまや総合格闘技という1つのジャンルになってしまった。要するに、空手家vsプロレスラー、サンボvsキックボクサーという“何が起こるかわからない”対決は、選手たちがそれぞれの技に対応できるようになったために、“何が起こるかわからない”危険度が低下した。
 昔は、柔道や空手の町道場が主流であったが、現在では総合格闘技の道場まで出はじめている。
 このPRIDEの“総合格闘技化”が、最近の興行をつまらなくした原因だと断定できる。この件に関しては、数週間前の編集後記で触れたとおりだ。
 
 では、PRIDE23の話をしよう。この興行は東京ドームで開催された。PRIDEはさいたまアリーナで興行を行なうことが多い。同会場は札止めでも2.5万人くらいだろう。ドームは6万近い集客が可能だ。ところが、この会場を客でいっぱいにするには、それなりに注目されるカードが必要になるのは当然だ。
 同大会のカードは、どれをとっても最高のものばかりだった。名古屋で開始されたPRIDE22に比べると、100倍くらいいいカードが出揃った。
 
 メインの桜庭戦。相手が誰であろうと、ファンは復活を夢見た。セミの高田vs田村戦、吉田vsドン・フライ、金原vsシウバ、ノゲイラvsシュルト、ヒョードルvsヒーリングなどと、普通であればメイン級のカードばかりだ。
 
 「この興行はここ2、3年の中でベストな大会だ!」と全試合が終わったあとに叫べたくなるほどサイコーだった。試合の流れもそうだが、特に高田vs田村戦、吉田vsドン・フライ戦、ヒョードルvsヒーリング戦に関しては、酒を飲まないボクが、3夜連続徹夜でこれらの試合を酒の肴に語ってもいいくらいだった。涙と感動が入り乱れる、後生に語り継ぎたい興行である。
 ターザン山本はよく「会場に行かなければ、何もはじまらない」、「試合を目撃することで、その場の証人となれ」などと活字プロレスを展開してきたが、PRIDE23は、ターザンが今まで言い続けたことが身にしみてわかった。
 あの空気を体感すべきだったと思う。
 
 PRIDE23を見てない人は、民放放送で見るか、PPVの再放送を見るか、ビデオ・DVDを買って見てほしい。そこには、青春の蒼さがあると同時に、青春の終焉がある。PIRDE23は、我が青春の終着駅だった。

Posted by DODGE at 2003年12月19日 20:03 in 2002.11〜12月