2004年01月16日

桜庭vsシウバ戦に感情移入できなかったのは……

Date: 2003-08-19 (Tue)

今日のオススメ曲「Nino RotaのTHE IMMIGRANT」

 桜庭和志がまたしてもバンダレイ・シウバの軍門に下った。そのKOシーンは唐突にやってきた。大振りのフック、通称ロシアンフックを繰り出す桜庭のカウンターを攻略し、シウバは相手の顎を目がけ的確にパンチを撃った。桜庭はPRIDE参戦以降、2度めのKO負けを味わった。ドクターストップなど微妙なTKO、KOも中にはあったが、完全に落ちたのは前戦(ニーノ・シェンブリ戦)と今回のシウバ戦だけである。
 桜庭和志の強みは、グランドでの攻防にある。グレイシー一族との抗争で彼の寝技の威力は世界へと広まったが、グレイシー以外の試合でも95%は寝技で仕留めてきた。この傾向は、UFC第1回大会ホイス・グレイシーの戦略に遡る。

  グレイシー柔術は、己の武術が、流派が、総合格闘技界でもっとも優れていることを証明するためにUFCを主催し、スタートさせた。他流試合の場がなかった当時、UFCに興味を示す者は多く、世界各国から強者が集結したが、ホイス・グレイシーの寝技の前に悉く敗れる。打撃も重要だが、相手を破壊するなら、降参させるのなら、「寝技が最強」という言葉が一人歩きした。
 
 さて、桜庭和志がサブミッションに重点を置いたのは、高田延彦の敵を討つためでもあった。アマレス出身者であり、その過程を踏んでいるからこそ、あの優れた技術は伴っている。ヒクソン・グレイシーに勝つためには、彼の寝技をかわせるだけの技量がさらに必要だった。ところが、桜庭の打撃はどう見ても、ハードストライカーに勝てるだけの技量がない。
 現在のPRIDEマットには、バンダレイ・シウバ、クイントン・ジャックソン、エメリヤーエンコ・ヒョードルとサブミッションに対応しながらも、打撃で勝利を描くファイターがリードしている。
 
 先日開催されたPRIDE GP 2003の桜庭vsシウバ戦を見て思うのは、「もう言い訳はできない」ということ。
 PRIDE13でシウバと初激突した際、桜庭は冷静さを無くし、相手の土俵で闘い、流血の末、レフェリーストップとなった。そもそも、あの流血も交通事故のようなもので、ファンは負けを認めなかった。
 PRIDE17のときは、肩の脱臼により、再度レフェリーストップ。ファンはそれでも負けを認めなかった。桜庭の気持ちは折れていなかったため、リング上で涙しながら「強くなって戻ってきます」と訴えた。というか、これらの敗戦はアクシデントであって、最終的にどちらが強かったのかは、桜庭、シウバ、ファン、レフェリー、主催者も解明できないままであった。
 どちらかが、「ギブアップ」 or 「KO」を取らない限り、誰も真の勝者を作り上げたくなかった。
 
 ところが今回は有無を言わせぬ完全KO----完敗でシウバ上位の図式が2年越しに成立した。桜庭ファンの中にはシウバ上位論を唱える者も多い。ただし彼らもそれを認めたくなかった。だからこそ、桜庭に勝ってほしかったというのが本音である。
 無論、これで白黒はハッキリした。しかし今さら桜庭がシウバにリベンジをふっかけるのを見たいとは思わない。
 私自身、UWFと出会い、UFCを初戦から観戦し、パンクラス、リングスも見続けてきた自負がある。桜庭が登場し、無敵を掲げるグレイシー一派に勝利したときは、泣いて喜んだほどだった。だから、桜庭が持つDNA、すなわちUWFインター=高田の流れを見てきたことで、時代を共有していた感もあった。
 今回桜庭が完全敗北を喫したが、意外と悔しい感情は沸き上がってこなかった。なぜだろうか……。それはたぶん、桜庭というより、シウバにあるのだろう。
 
 シウバは強い。1997年から22試合に出場。黒星は3回。PRIDEに出場以降は無敗である。現在PRIDEミドル級チャンピオンであり、大いなる可能性を踏まえている。大勢の強豪と相まみえて、誰が一番強いのかを見せて欲しいと願っている。
 だが、PRIDE主催のDSEや桜庭のワガママで、シウバは桜庭と2年間で3試合をこなしてきた。普通のバーリ・トゥーダーは、年間3〜4戦。となると、シウバの賞味期限は桜庭によって早められている気もする。実際、今大会でどれだけのファンが、桜庭vsシウバ戦を望んでいたのか。ファンとしては、特にシウバ戦でなくてもよかったのではないだろうか。
 どちらにせよ、今度はシウバがワガママを言うポジションにいる。個人的には、シウバのK-1参戦を希望している。ヒョードルとの統一戦も……。

Posted by DODGE at 2004年01月16日 17:59 in 2003.5〜8月