W.B.S. 2003シリーズ・シーズン第1戦

 大藪厳太郎選手の優勝がいまだ記憶に新しいW.B.S.クラシック11th。9月中旬に開催されたあの日から早くも3ヶ月が経過した。3ヶ月のオフ期間が終了し、12月8日からは次期シリーズが開幕した。
 
 初秋のパターンと冬のパターンが交差する12月。W.B.S.プロチーム・トーナメント2003第1戦の開催日、12月8日を“ウインター・パターンと捉えるか否か”では、展開が大きくわかれる。他のフィールドに比較して一般的にいうディープの少ない霞ヶ浦において、“冬のリザーバー、12mボトムパターン”のようなことはまずありえない。
 浚渫はアリだろう。ただし、「風が出ると、ドロが巻き上がって、流れてその周辺が沈黙するんです」と語るのは、山田貴之選手。プラクティスでバスやベイトフィッシュのストック量の多い浚渫を見つけだす際、「どの方向の風が吹いた場合、どの浚渫が潰れるかを考えないと、(本戦パターンと結果が)見えてこない」と言う。
 すると、北や北東の風が吹く冬のカスミにおいて、西岸、南岸は風が直接吹き付けるエリアに相当する。それでも南岸を12月のマイ・ウォーターとする選手もいるだろうが、風によって低下する水温を相手にパターンを組めば、ギャンブル要素は強くなる。
 
 同時期、最高のエリアと呼ばれるのは、「風裏で水が動かないエリア」と蛯原英夫選手は言う。彼は、昨シーズン第1戦を制覇した選手である。
 「でも、麻生(蛯原選手が勝った大会のメイン・エリア)は、他の人たちにもマークされてるしね」と敬遠するのは林俊雄選手だ。
 「麻生は、北東から風が吹いたときは定番なエリア。たとえ蛯ちゃんが得意だったエリアじゃなくても、マークしたいエリアだよね」と加えた。麻生の天王崎を回れば、それには風裏となるスポットが存在する。エリアのバッティングは避けられないだろう。実際に、某選手は本戦中そのスポットを1歩も動かなかったらしい。林選手も本戦時、麻生に立ち寄った1人である。
 一方蛯原選手は、昨年そのエリアで優勝したとはいえ、過去のパターンに惑わされず、ひとつ1つ今大会用のパターンを組んでいた。メイン・メソッドは昨年と変わらないものの、ルアーのサイズが問題だった。今回メインに使用したのは、タイニー・プレデターだという。
 
 ジャークベイトのパターンは、林選手も取り入れていた。
 「浚渫でキッカー・イーターを使うと、リアフックに絡んでくる。フッキングしたとしても皮一枚で掛かっている感じ。だから、バレることも多い」と本戦数日前に語っていた。
 しかし、キッカー・イーターとタイニー・プレデターでは、サイズに違いがありすぎる。その違いは、プラ時の天候、本戦時の天候にあった。

 
 
 
 
 
 
 
 プラクティスの時点で、「優勝するための最大ファクターは水質」と林選手は述べていた。「とにかく水が悪い」と何度も語ってくれた。
 実は、ここ数週間に渡り林選手提供の「今週の霞ヶ浦情報」をお休みにさせていただいたワケには、彼の「『水が悪くて釣れてません』だけでは、情報提供にならないでしょ。自分も不確定な情報を提供したくない」とのことから、更新すべきではないと判断したからだった。
 要するに、水質が“比較的”よいエリアを捜し出すことが、もっとも重要なパターンだと彼は考えていた。そのエリアを捜し出せれば、「ルアーは何でもいい」とまで感じていたという。
 彼はW.B.S.発足当時から同団体に参戦する選手の1人であり、カスミ以外のフィールドに足を運ぶこともほぼ皆無。それは、同湖の可能性が未知数であるからであるがために、「釣っていて飽きない」のだという。数年前に比べれば、何らかの理由で釣れなくなったと言われるカスミであるが、彼は「(バスは)いるところには、いる」と信じて止まない。事実、W.B.S.の大会では、毎回誰かはビッグ・ウエイトを持ち込んでくる。“釣れない”のではなく、“ハイ・プレッシャー”と呼ぶのが相応しい。
 ハイ・レベルな競技を行う上では、もっとも適したフィールドとも捉えられるのではないだろうか。
 
 さて、話をプラ時の水質問題に戻そう。どの選手も水質が一番の難点と挙げていたことは間違いないが、本戦前日、関東地方には冷たい雨が降った。これでパターンの組み直しをせざるをえなかった選手も多い。
 急激な気温変化に伴い、水温も2日間で2〜3度低下した。12月初旬、10度前後の厳しいコンディションでの2、3度の水温低下は、バスの活性を急激に低下させた。
 大会開始時の水温が8.5度というから、季節外れであった。
 
 大会当時の天気予報、雨の確率は60%。都内では雪の可能性もあった。しかし、12月8日といえば、二十四節気の1つ、大雪(たいせつ)である。太陽の黄経が255°に達したときをこう呼ぶ。ゆえに、暦の上では降雪があってもおかしくない。
 
 それでも僅年の平均気温からすれば異常気象である。
 また、「異常なのはフィッシング・パターンにもある」と2000年度クラシック・チャンピオンの林俊雄選手は言う。
 「ここ数年、パターンが当てはまらない。シーズナル・パターンが当てはまらないのが、パターンなんだよ。言うなら、そのパターンのウラにあるパターン、新(真)パターンを捜し出せるかが、これからも勝敗を左右するだろうね」と語っていた。「具体的にその新パターンとは何かと言えればイイんだけど、それがわからないから難しいんだよね」と加えている。

 第1戦、勝利チームである柴努・安藤毅組は、その林選手が語った、新パターンの答えの1つを証明した。
 彼らのメインパターンは、12月初旬、水温8.5℃、前日雨、北東の風のコンディションで、西南岸を攻略するものだった。彼らは突風が吹きつける南岸のとあるエリアに、ブッシュで囲まれたスポットを見つけだしていた。安藤選手が見つけだしたスポットだという。他のエリアとは異なり水質は極上。水温ですら、2℃ほど高い。風はブッシュを回って入る程度で、ボートはさざ波に若干押されるくらいだった。
 
 完璧な風裏である。
 蛯原英夫選手は、「風裏が絶対条件。さらに日溜まりならなおいい」と語っていた。
 これを考慮すると、柴・安藤組のパターンは、この日のカギをすべて含んでいる。風裏は、日が上がれば水温も上昇する。さらに、南岸はフィッシング・プレッシャーも低い。
 
 柴・安藤組のメソッドはフリッピングだった。水深1mのシャロー。ルアーは柴選手がエスケープツイン、安藤選手がゲーリー・グラブの4in。お互いに3尾ずつ釣り上げ、計6尾をウエイインした。アタリは2パターンあったとか。1kgに充たないバスはルアーにバイトすると横に走るらしいのだが、キロフィッシュはただ重くなるだけで、気をつけていないとフッキングミスをするほどだったそうだ。
 ちなみに、彼らは1970gを釣り上げ、ビッグフィッシュ賞も獲得した。
 
 大会全体を通して見ると、今大会には43組が参戦し、15組がノーフィッシュで終了した。これは34%がノーフィッシュであったことを示している。このノーフィッシュでフィニッシュした選手の中には、栗島英之選手、西村嘉孝選手、海藤真也選手や赤羽修弥選手のように、上位常連選手が多数含まれていた。
 しかし、昨年第1戦を振り返ってみると、47組中17組がノーフィッシュと、それは36%にあたる。2001年度は2デーで開催され、初日のノーフィッシュは9%、2日めが11%。2000年度はノーフィッシュが11%とデータだけを見て考慮すれば、年々厳しくなっているように取れる。
 
 2003年度シーズン第2戦は、3月29〜30日に2デーの日程で開催される。昨年の結果からすれば、次戦もタフな大会になりそうだが、その結果や如何に。
 

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