ここがヘンだよ害魚論。特別編
「この人に聞いてみました。」

-バス害魚論の裏側にあるものを知ってほしい-
鈴木康友さん(株式会社つり人社代表取締役)

 
 
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水面でフラフラと泳いでいたコアユ。尾柄部がただれており、潰瘍のようになっている
鈴木康友(すずきやすとも)
1949年東京生まれ。1971年に株式会社つり人社に入社し、日本で最古参のつり専門雑誌月刊「つり人」の編集にたずさわる。1988年から同誌の編集長を務め、その後バスフィッシング専門誌「Basser」、フライフィッシング専門誌「Fly Fisher」を創刊。バスアングラーにはおなじみの「Basser」創刊時の編集長でもある。1997年から同社の代表取締役社長。国内外のさまざまな釣りに精通し、特にアユ釣りやハゼ釣りなど、日本の伝統的な釣りに造詣が深い。
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−なぜ行政側は対策を講じなかったのでしょうか?
鈴木「ひとつは日本の行政の体質でしょう。BSE(狂牛病)をはじめとした問題をみればわかるように、目先の面倒を回避するために、マズいことはひた隠しにしてしまう。冷水病の場合も、琵琶湖の水産業への打撃を恐れて隠蔽したようです。しかも、漁業者に対して『これが問題になれば魚が売れなくなるぞ』と恫喝していたという話もあるようです」。

−しかし、それが結果的に全国的な被害へと拡大してしまった……と。BSEという話が出たので心配になってきたのですが、冷水病は人間には影響ないのでしょうか?
鈴木「現状では魚類以外への感染はないといわれているようです。このためにあまり社会的な問題として大きく取り上げられることが少ないんですね。ですが、先に言った全国の漁協、そしてアユ釣り関連の道具を扱う釣り具業界に与えた打撃は計り知れないんです。なにより、アユ釣りを楽しんでいる全国の釣り人の楽しみを奪った罪は小さくないと思います。釣り人のことなど、行政はまるで考えていないわけですね。こういった行政の体質を、バスアングラーの人たちにも知っていただきたいんです」。

−先日、滋賀県はバスやブルーギルのリリース禁止を盛り込んだ条例要綱案を発表しました。これについてはどのようにお考えですか?
鈴木「ひどい話ですよね。環境破壊や冷水病対策など、行政の不手際を外来魚問題にすりかえているとしか思えません。現在の琵琶湖から外来魚がいなくなったとしても、問題が解決するわけではないんですから。なにより……もしも琵琶湖が本来の環境を取り戻したとしたら、外来魚が台頭することはないでしょう。琵琶湖は400万年の歴史をもつといわれてます。つまり、琵琶湖の固有種と呼ばれる生物たちは、途方もない年月をかけて琵琶湖の自然環境に適応してきたんです。もし琵琶湖が本来の環境を保っていたなら、過酷な生存競争を生き抜いてきた固有種たちが外来種に負けるはずはないんですね。琵琶湖総合開発をはじめとした行政の開発事業が、どれだけ琵琶湖の自然環境を破壊してきたのか。この問題をないがしろにして外来魚に責任を押し付けるなど、言語道断です」。

−その意味では、私たちバスアングラーも琵琶湖の歴史や環境、そして滋賀県の行政について正しい知識をもつ必要がありますね。
鈴木「そのとおりです。今回の問題をきっかけとして行政について興味をもった方も多いはずです。特に若い方たちには、バスフィッシングに関することだけでなく、広い視野でこの問題について考えてほしいと思います」。

−どうもありがとうございました。
 
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