ここがヘンだよ害魚論。特別編
「この人に聞いてみました。」

-バス害魚論の裏側にあるものを知ってほしい-
鈴木康友さん(株式会社つり人社代表取締役)

 

 

 

外来魚のリリース禁止が盛り込まれた滋賀県の条例要綱案。すでにこの条例要綱案に対しては1万件を超す意見が滋賀県に届けられているそうです。本サイト内のコラム「ここが変だよ害魚論。」でも触れていますが、今回の条例要綱案は琵琶湖の環境破壊を外来魚に押しつけている感が拭えません。また、私は先日、琵琶湖北部で大量のコアユが死んでいる光景を目の当たりにしました。はたして、今、琵琶湖で何が起きているのか……。そこで、今回は株式会社つり人社の代表取締役であり、アユ釣りなどにも詳しい鈴木康友さんにお話をお伺いしました。

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琵琶湖北部で大量に浮いていたコアユの死骸。体表には穴があいているのが認められる
 
−本日はお忙しいところありがとうございます。(写真をお見せして)実は先日、琵琶湖でこのようなコアユを多数目撃しました。アユ釣りに詳しい鈴木さんなら原因をご存じかと思いまして……。
鈴木「(写真を見ながら)私は水産の専門家ではありませんし、きちんと検査をしないと確実なことは言えないのですが……。この症状だけを見ると、冷水病の可能性がありますね」。

−冷水病ですか?
鈴木「冷水病というのは、ある細菌が感染することによって起こる魚の病気です。東北地方で畜養されていたギンザケから菌が発見されたのが最初とされていますが、アユの菌とは由来が異なるともいわれています。特に低水温期に発病することが多いので、この名がついています。体表に穴があいたり尾ビレが欠損したり、顎の周辺から出血するのが特徴です」。

−ということは、この写真のコアユも冷水病の可能性がありますね。魚体に穴があいてしまうというのは見るからに恐ろしい感じがしますが、全国的にも被害があるのでしょうか?
鈴木「そのとおりです。ご存じの方も多いと思いますが、琵琶湖産のアユは、遊漁用として全国各地の河川に放流されています。放流された河川にいる天然遡上のアユにも感染してしまいますから、冷水病の被害は全国的なものといえます」。

−なんとも、恐ろしいですね。
鈴木「たしかに冷水病自体も恐ろしいのですが、なにより恐ろしいのは、この冷水病に関する滋賀県の対応なんです」。

−と、いいますと?
鈴木「実は、琵琶湖でこの冷水病が初めて確認されたのは10年以上前のことなんです。ところが、滋賀県はこれに対してなんの対策も行なわなかったんです。さらに、琵琶湖のコアユを全国の河川に供給する『全国内水面漁業協同組合連合会』という組織があるんですが、この組織も冷水病を承知のうえで全国の河川に琵琶湖産のアユを放流し続けてきたんです」。

−つまり、病気のコアユだと知っていながら、滋賀県はそれを隠蔽したわけですか?
鈴木「そうです。誰だって病気の魚など釣りたくはありませんよね。このため、アユを釣りに行く人が激減してしまったんです。その結果、遊漁料収入が減ったことで全国の河川を管理していた漁協は経営破綻に追い込まれるなど、大打撃を受けました。アユは一年魚ですから、たとえ発病を免れたとしても秋には死んでしまう。ところが、この冷水病はフナやオイカワなどアユ以外の魚にも感染することがわかっています。まだ調査はされていないようですが、アユを食べるバスにも感染する可能性があると思いますよ。これは、全国の河川を破壊したに等しい行為だといえるでしょう」。
 
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