文:高木匡一
Text : Masahito Takagi
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 U.S.OPENはまさに夢のようなトーナメントで、優勝者には、ボーター、つまりプロ部門では賞金の他にトラックとレンジャーボートの副賞が、AAAというアマチュア部門でさえも1万ドル、さらに3日間のトーナメント期間中に最大のビックフィッシュをキャッチするとレンジャーボートが貰えるという、まさにギャンブルの町ラスベガスにふさわしいビックトーナメントです。
 私たち夫婦は、昨年のDAIHATU Basserカップで準優勝して、U.S.OPEN出場のチケットを手に入れました。それまでアメリカのトーナメントに参戦するなんて夢にも思っていませんでしたが、やはり私にとって本場のトーナメントは憧れです。出発日が近くなるにつれ、その憧れが現実のものへと変化していくその気持ちは、最近味わったことのないワクワク感でした。一方の妻はパートナーとうまくコミュニケーションが取れるかどうかという不安の方が大きかったようですが……。


【到着初日】

 サンフランシスコ経由でラスベガスに入りました。ラスベガス空港の中は噂どおりスロットマシーンが立ち並んでいました。空港内は冷房が効いていて少し寒いぐらいですが、空港の外に出ると、日差しが強く、湖に出るのが少し恐ろしく感じます。しかし、この暑さの中で3日間のトーナメントを乗り切らないといけません。体力的に過酷なトーナメントになるように感じました。
 空港を出て、オフィシャルホテルであるサンセットステーション・ホテルから程近いウォルマートでフィッシングライセンスとライフジャケットを購入。ウォルマートは釣り具だけでなくあらゆる日用品を扱う大型のスーパーマーケットで、なにしろほとんどの商品が安価。そのため、妻は買い物魂がうずいていたようでした。もちろん、荷物になるので諦めましたが……。そのあと、サンセットステーションでレジストレーション(参加登録)を行ないました。翌日はプラクティスが控えていたため、早々と宿泊先のホテルに戻り、就寝しました。

【プラクティス】

 プラクティスでは、過去に2度U.S.OPENを制しているバイロン・ヴェルビックと同船しました。
 プラクティスとはいっても、私たちが参戦するカテゴリーはAAAというノンボーター部門なので、プラクティスで魚を見つけたり、パターンを見つけたりというよりは、むしろ天候に身体を慣らしたり湖の状態を見る程度のものでしかありません。中には魚を釣らないでバイトだけを確認するプロもいるそうですが、バイロンとのプラクティスはどちらかというとガイドに近いものでした。バイロンも「今日は楽しんで釣りをしましょう」と言ってくれました。とはいうものの、2日後に控えたトーナメントのためにかどうかはわかりませんが、バイロンはちょっとしたヒントをくれました。
 まず1つめは「マッチザベイト」です。数年前はスーパースプークなど大きいルアーでも反応したらしいですが、近年はベイトのサイズにあわせた小さいものが有効とのことでした。もうひとつは「ノーベイト・ノーフィッシュ」です。ワンド内などを攻める際、ベイトがさしていないとバスもいないとのことです。2点ともあたりまえのことですが、レイクミードでは回遊するベイトの群れが、バスを釣る上で重要なファクターになっていることを再認識させられました。

 釣果はというと、私は2ポンドフィッシュを含む数本のバスを見ることができましたが、妻はノーフィッシュでした。バイロンだけに限ったことではありませんが、日本の人たちに比べて、アメリカのトーナメンターの多くはトローリングモーターの速度が速いという印象があります。これは、大きなフィールドを効率よく攻めるためには、素早いテンポでエリアをチェックする必要があるからだと思われます。妻がノーフィッシュになってしまった理由として、トローリングモーターの速度に慣れることができなかったからだと思います。「トローリングモーターの速度に慣れる」の意味は、無駄なキャストをなくし、正確においしいスポットだけを手返し良くルアーのトレースしてくるということです。これも言わずと知れた非常に基本的なことなのですが、基本の大切さを今回のプラクティスで身にしみて感じました。

【レセプション&パートナー抽選】

 トーナメント前日はオフリミットデイになり、一切の釣りが禁止されています。その日にサンセットステーション・ホテル内では、各スポンサーメーカーの帽子、ルアーのサンプル品などが配られるスポンサー・パーティシペーションと呼ばれるイベントがあります。あまりにも量が多すぎて、日本に持って帰る際に荷物が増えるなあとうれしい悲鳴をあげてしまいました。そののちに食事をとり、いよいよ初日のパートナー抽選となります。第一フライトからプロ、アマの順で呼ばれていきます。プロの名前が先に呼ばれるので、有名プロの名前が呼ばれると、自分が当らないかなあと期待してしまうものです。
 さらにその抽選は、パートナーの組み合わせを決めるだけのものでなく、景品の抽選も兼ねていて、運がよければエレキ、魚探、ロッド&リールなども当ります。今回同行した知人は、ラッキーにも魚探を獲得しました。妻は、第2フライトという早い段階で名前が呼ばれました。パートナーは、なんとあの有名なゲーリー・ドビンスです。私は第7フライト、パートナーはラスティー・ブラウンという人でした。ちなみにお楽しみの景品は、妻は十徳(?)プライヤー、私がサンオイルなどの詰め合わせでした。