2005年02月09日

琵琶湖・外来魚の再放流訴訟:禁止判決 生態系保護に“お墨付き”/滋賀

 ◇傍聴券求め144人
 ◇原告側、控訴の方針
 「琵琶湖本来の生態系回復には外来魚の絶対数を減らすことが不可欠」。外来魚の再放流(リリース)禁止を定めた県の琵琶湖のレジャー利用適正化条例の是非が問われた7日の大津地裁判決は、全国的に定着しつつある地域固有の生態系保護の動きを支持するものだった。地裁には多くの傍聴希望者が詰めかけ、この問題の関心の高さをうかがわせた。主張を全面的に退けられた原告側は判決後の会見で、控訴する方針を明らかにした。【深尾昭寛、森田真潮、岡村恵子、平野光芳】

 判決は、原告の訴えをことごとく退け、県側の主張をほぼ認めた。外来魚の捕食による在来魚減少の因果関係を科学的根拠をもとに認め、「両者の共生が可能」とした原告側の訴えを真っ向から否定。原告が「規定は琵琶湖から人を遠ざけるため、外来魚駆除効果は薄い」とした点についても、条例施行後の外来魚回収状況などから採用出来ないとした。
 また、原告の1人が外来魚駆除事業の公金支出は違法として起こしていた訴えについても、稲葉重子裁判長は「事業には十分な合理性がある」などとして退けた。
 国松善次知事は「見事なまでに県の主張が受け入れられた」と歓迎。「琵琶湖の生態系の危機や、県がとってきた対策を理解していただき、全国への波及効果もあると思う。(釣り人にも)真しに受け止めていただいて、ご理解、ご協力をお願いしたい」と話した。
 県水産試験場が琵琶湖沿岸域で94〜95年度に行った調査では、捕獲された魚類の全重量のうち、オオクチバスやブルーギルなどの外来魚がヨシ帯の外側で49%、内側で70%を占めた。自然環境保全課は「かつてに比べ生態系が貧しくなっているのは明らか。外来魚の駆除を徹底すると同時に、在来魚の産卵・成育場所になるヨシ帯や内湖の再生などに取り組んでいく必要がある」としている。
 地裁前に傍聴券を求めて集まったのは144人。大部分は釣り愛好家だった。原告の1人で大津市の会社員、浅野大和さん(30)は判決後の会見で、「(集まった人々らと)力を合わせて戦いを継続したい」と語った。そして、「リリース禁止が正しいというわけではない。魚を殺すか生かすかは自分で決めること」と悔しさをにじませた。
 原告代理人の南出喜久治弁護士は、外来魚駆除に対する県の補助金に触れ「今後も監査請求などで見ていく必要がある」と指摘。「そもそも(駆除に用いる)刺し網、エリ漁は在来魚を取るもので、間違った手法。在来魚と外来魚が混在するのは明らか」と語った。
 地裁前で判決を待った県釣り団体協議会の加藤誠司会長(44)は「リリースは釣り人にとって譲れないルール」と主張。遊漁船業、平村尚也さん(32)は「バス害魚論でかたがつき、バスさえ駆除すれば環境問題すべてが解決できるように思われてしまう。全国にリリース禁止が広がるのか気にかかる」と話した。
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 ■視点
 ◇規制だけでなく議論を 
 琵琶湖での外来魚リリース禁止に「お墨付き」を与えた7日の大津地裁判決。琵琶湖本来の生態系の回復を前提とした県条例制定の適法性を明確に認定したが、固有の生態系保全が世界的な潮流となる中で、当然の判断と言える。しかし、規制だけで生態系が守れるわけではない。「固有の生態系を守るためにはどうしたらいいか」。判決をきっかけに、議論を深めてほしい。
 琵琶湖でブラックバスの存在が確認されたのは74年。その後、外来魚による在来魚への「食害」が指摘された。県は85年、外来魚駆除に補助金支出を始めるなどの取り組みを進めてきた。
 環境省は先月、特定外来生物被害防止法に基づき輸入や移動などを禁じる「特定外来生物」の指定リストにオオクチバスを入れる方針を決めた。また、国際自然保護連合(本部・スイス)は「世界の侵略的外来種ワースト100」にオオクチバスを選定している。判決は、こうした国の環境政策や世界の流れなどを踏まえたものとみられる。
 一方で、「魚を殺すことを強制するのはおかしい」とする釣り愛好家らの言い分も、同じ「命を守りたい」という思いから発したもので、理解できる部分もある。条例には罰則がなく、釣り人の理解と協力が不可欠。行政と釣り人の歩み寄った議論に期待したい。【田中龍士】2月8日朝刊

+Yahoo!ニュース-滋賀-毎日新聞

●この他、この判決に関する続報\n
『<琵琶湖>リリース禁止訴訟で、禁止反対派の訴えを却下』

 滋賀県の琵琶湖のレジャー利用適正化条例が定める外来魚の再放流(リリース)禁止は、釣り人の権利を違法に侵害しているなどとして、タレントの清水国明さん(54)ら2人が、同県を相手にリリース禁止義務の不存在確認を求めた訴訟の判決が7日、大津地裁であった。稲葉重子裁判長は「琵琶湖本来の生態系回復には外来魚の絶対数を減らすことが不可欠」とリリース禁止について初の司法判断を示し、訴えを退けた。
 県は03年4月、減少するホンモロコなど琵琶湖固有の在来魚保護を目的に、ブラックバスやブルーギルなど外来魚の再放流の禁止を盛り込んだ同条例を施行した。
 判決は「琵琶湖で魚釣りを楽しむ権利には、特定の魚類を取って放流することまでは含まない」などとして訴えを却下したうえで、琵琶湖の生態系について「(外来魚による)捕食が在来種減少に大きな影響を与えているのは明らか」と判断。「条例制定には十分な合理性がある」と認めた。
 原告側は、在来魚減少は湖岸開発による産卵場所の縮小などが原因とし、「リリース禁止は立法裁量の範囲を逸脱している」などと主張していた。【田中龍士】(毎日新聞)

+Yahoo!ニュース-社会-毎日新聞

『「バス再放流禁止」にお墨付き=清水国明さんら釣り人敗訴−大津地裁』

 琵琶湖で釣ったブラックバスなど外来魚の再放流(リリース)を禁じる滋賀県の条例に反対するタレント清水国明さん(54)ら釣り愛好家2人が「リリースを信条として釣りを楽しむ権利を侵害する違憲な条例」として県を相手取り、リリース禁止義務の不存在確認などを求めた訴訟の判決が7日、大津地裁であった。稲葉重子裁判長は「(外来魚による捕食が)琵琶湖の生態系の変化に大きな影響を与えたのは明らか。条例は適法」として請求を退けた。(時事通信)

+Yahoo!ニュース-社会-時事通信


Posted by jun at 2005年02月09日 00:00 in ブラックバス問題

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