2004/1/21
ニシンがオナラをする!?

 
カナダのブリティッシュ・コロンビア大学生物学博士と彼の研究チームによると、ニシンが肛門から空気(オナラ)を出すときにハイピッチサウンド(高周波音)を出していると発表した。ベン・ウィルソン博士は「甲高い囀り(さえずり)のように聞こえる」と語っている。彼らはなぜニシンがこのような音を出すの今回の研究では解明できていないが、日没後の暗くなった水中で群をなして泳いでいられることに関係しているかもしれないという。

 ウィンドソール大学の水中音響のスペシャリスト、デニス・ヒグスは「興味あるし、びっくりだ」と語り、「これは、魚類が高周波音を使ってコミュニケーションする最初のケースになるだろう」とつけ加えた。別のスペシャリスト、アーサー・ポッパーは「(オナラのことは)今まで考えつかなかったが、魚は私たちに理解できない行動もするからね」と述べた。

 魚が仲間を呼ぶ際、浮き袋を使って気泡を作り、ブーブーという低いバズ音を出すことは知られている。そして生物学者たちは今回、浮き袋が単に浮力調整の機能だけではなく、そこからハイピッチサウンドを発しているのではないかと仮定した。ところが、実はその音が鳴るタイミングは魚がオナラをする、肛門から泡を出すタイミングと合っているのに気がついたのだ。つまり、浮き袋から肛門へと空気が流れるタイミングで高周波音を発していたのだ。
 彼らはこの音をFast Repetitive Tick (以下:FRT)と名付けた。ウィルソン博士は、人間のオナラとは異なり、FRTは消化活動が原因ではないと言う。魚にエサを与えた場合にも音が変化しなかったからだ。また彼らはニシンの入った水槽にサメの匂いを与えて恐怖を感じさせる実験を行なったが、音に変化は現れなかった。

 その結果、研究チームは3つの研究結果から、FRTはコミュニケーションをするために発しているものだろうと結論付けた。
 まず、1つのタンクに大量のニシンを入れたとき、FRTの計測量が増加した。
 次に、ニシンは室内を暗くしたときのみFRTを発している。これはお互いが視覚で確認できない場合に、仲間を音で確認していることになる。
 そして、ニシンは他の魚が聞き取れないほどの音域であるFRTを聞き取っている。このコミュニケーション・システムにより、ニシンは敵から自らを守るアラート(警告)を出しているといえる。
 ウィルソン博士は「現段階では、これは仮説に過ぎない」と強調するが、「この発見は今後意味を持ってくるだろう」と加えた。イルカやクジラのハイピッチサウンドが機械で捜し出せるように、ニシンのFRTも追跡されることになれば、漁に使用されることもありうるだろう。
 これによって、乱獲からニシンを守る保護の問題も浮上した。専門家によれば、人間が作り出す音が水中の哺乳類にダメージを与えるという意見がある。もしこの仮説が証明されると、人間が作り出す音は哺乳類だけでなく、魚類にまで影響していることになる。

ソース:
newscientist.comここ