2003/9/25
駆除を経由して市民権を得た
カリフォルニアの害魚、パイク


 
ノーザン・パイク。あまり聞き慣れない名前かもしれないが、国内では近年流行しているマスキールアーのマスキーと同属の魚と言えば、なんとなくイメージが湧くだろ。マスキー(Esox masquinongy)とノーザン・パイク(Esox lucius)の学名を見れば明確で、同じエソックス属の魚である。ともに胴体が長く、鋭い歯を持つ。生息域はシャローの藻場で、エサやルアーを目の前に通せば簡単に釣れる肉食性の大型魚である。ヨーロッパ原産で、成魚になると1mを越えるため、ゲームフィッシュの世界でも人気が高い。北米ではカナダとアメリカ北部に生息しており、基本的には低水温域を好む魚種だ。当サイトOVERSEASに掲載されているジョン・ボンディーの記事にあるように、マスキーやパイクは北米淡水魚の中で最強と呼ばれるほどの肉食魚である。そのパイクが現在、カリフォルニア州サンフランシスコの水瓶とされる河川の上流に位置するリザーバーに生息し問題となっていたが、どうやらその騒動も一段落したというので、当サイトではそれらの記事をまとめて報告しよう。

 誰が、いつ、何の目的のためにシエラ・ネバダ山脈(California 州東部の山脈)に所在するナチュラルレイクとリザーバーを含むフィールドにノーザン・パイクを放流したのかは、いまだわかっていない。多くの憶測が飛び交う中、地元ではパイクが釣れることで有名な話として広がっていた。しかし、レイクを監査する立場にあるフィッシュ・アンド・ゲーム局やワイルドライフ事務局は、あまり歓迎できないことと否定的な見解を持っていた。パイクがネイティブフィッシュの生態系を破壊するかもしれないと発表し、早期決着をつけるべく、駆除作戦に乗り出した。
 
 最初の措置はポイズニング、いわゆる毒物の散布で1997年に行なわれた。これに対し州は200万ドルを消費し、加えて920万ドルが周辺地域住民への保証金として分配された。というのも、このポイズニングを行なったレイクは、地元住民の水道水として使用されていたため、州は「人体に害のない毒を散布した」と言うものの、賠償金を支払うことになった。
 このポイズニングで一番の問題は、多額の税金が投入された部分ではなく、皮肉にもパイクが生き延びたところにあった。
 その後駆除は、電気ショック、網による捕獲、罠、フッキングなどが試されてきたが、ことごとく失敗に終わり、行き着いた最終兵器は “爆破”だった。
 今年の3月、シエラ・ネバダ・レイクのとあるワンドで試験的爆破が行なわれた。13エーカーに及ぶワンドのシャローフラットに4マイルの爆破用コードをセット。方法論としては、爆破でパイクを吹っ飛ばすのではなく、それによって発生する余波(アンダーウォーター・ショックウェーブ)でパイクを撃破するものだった。スポーニングの直前に行なえば、卵も一緒に駆除できるという計画だったようだ。
 そして爆破による駆除が行なわれた。学者や州関係者はある程度の数字を期待していたようだが、パイクの死体は水面に浮いたのもあれば、湖底へと沈んだものもあり、はっきりとした尾数を集計できなかった。
 ではなぜ駆除がここまで規模の大きい事業に成長したのかというと、その背景にはやはりネイティブフィッシュを守るというのが根底にある。レイクにはレイク・トラウトが住み、もしパイクが下流域の河川に流出すれば、天然サーモンにも影響があると予測されたからだった(特にサーモンは減少傾向にある)。

 爆破による駆除も事実上失敗に終わった連邦、州、地元オフィシャルは、次の手だてを思案すべく、地元住民とのミーティングを持った。しかし6年前のポイズニング以来住民との溝は広がり続け、話は一向にまとまらない。住民の中には政府のやり方を支持する者もいるが、おおよその人は逆の姿勢を保っている。またポイズニングや水抜きをするとなると、オフィシャルはさらに信用を失うことになる。「(住民の意見を聞いたとしても)オフィシャルは自分たちのしたいようにするんだから……」と諦めたようなコメントを残す者もいる。地元の学生は州都へ抗議に向かい、レストラン経営者は自分の店にオフィシャルが立ち寄ることも嫌った。なかには保証金を「汚い金」と表現する人も出てきた。
 それでも学者は「レイク・デイビス(最初に毒物散布の駆除が行なわれたフィールド)の件はほんの小さなことに過ぎない。もしパイクが河川に逃げ出したら、その影響はカリフォルニア・デルタ付近にまで及ぶ」と警告する。なぜなら、その昔アラスカ州のとある地域にパイクが違法放流された際、河川のトラウトやサーモンの個体数の減少を招いた。その結果、とあるレイクではパイク以外の魚種は全滅し、最終的にパイクはお互いを捕食していたという。そのため、オフィシャルは早期対応を唱えてきたと主張する。
 次回の駆除は2005年までないとされているが、これから10年間に3回の大規模な駆除が行われ、水抜きもその計画の1つに入っている。

 「最初に彼らがポイズニングをしたとき、町は暗く落ち込んだ。どんなに良いことが起ころうと、悲惨な事実は消えなかった。あの一件が落ち着くのに2年はかかったんだ」というのは、地元のショップオーナーである。
 またレイクに隣接したキャンプグランドのオーナーは「パイクは、連中が予想したほどのダメージは起こしてないし、そんなに大きな問題とも思えない。トラウトが食われていると言うのなら、ペリカンの方がいっぱい食ってるよ」と言う。
 パイクの個体数が多いことで有名なミネソタ州から引っ越してきた人は「パイクは大きくなるまではシャローにいて、大きく成長すればトラウトを追うこともある。でも、(ミネソタに居たことは)パイクがそんなに大きなダメージをレイクに与えていた印象はないし、彼らは共存できるようだ」と述べた。
 ゲーム・アンド・フィッシュ・オフィスの近くでバーを経営している者は、「あいつらのやり方には飽きあきだ。いっそ、パイクをキープしてゲーム・アンド・フィッシュが出ていけって感じだ。こんなときこそ動物愛護団体の連中が必要なんだが、どこにいるんだ?パイクだって生きる資格はあるはずだろ?」と語る。                            
 昨夏はメリーランド州でスネークヘッド(ライギョ)が発見されたことで、駆除が行なわれた。五大湖周辺の河川ではレンギョやソウギョが増殖中で問題となっている。

ソースはここここここここ