2003/10/29
エバースタート・シリーズの歴史

 エバースタート・シリーズ(Everstart Series)は、FLW Outdoors主催のプロ/アマ形式+地方主体のプロトーナメントで、FLWツアー始動から2年後の1998年に開戦を迎えた。シリーズタイトルの「エバースタート」とはバッテリー会社の名称で、同シリーズをリードするという意味でその名前が使用されている。1997年10月に発表されたエバースタート・シリーズの詳細には、「Wal-Mart FLW Tourへの道」と記されており、FLW系最高シリーズであるFLWツアーへの登竜門トレイルとして、エバースタートははじまった。シリーズの年間成績も重要だが、各トーナメント優勝者もFLWツアーへの繰り上げを企画するなど、トーナメント界に新しい方法論を持ち合わせた。また、エバースタートは、基本的にエントリフィーを支払えるアングラーであれば、誰でも参戦できるシステムを持っている(ツアーへはクオリファイが必要)。
 初年度はイースタンとセントラルの2地区のみで開催された。各全5試合が行なわれた。4日間の日程のうち2度のフィールド・カットによって、「予選と決勝進出」を観戦者にわかりやすいシステムも導入した(elimination-style competition。ゴルフなどでも採用している形式)。最初の2日間は予選として定員である150名が出場。2日め終了時点の総合重量の30位以上がセミ・ファイナルに進出し、ファイナル・ラウンドにはさらにトップ10へと絞られる。3日からはスコアがゼロに戻され、最終日も再びゼロからスタートする。

  歴史的エバースタート・シリーズ第1戦は、1998年1月28〜31日にかけ、フロリダ州レイク・オキチョビーで開催されたイースタン戦だった。セントラル地区最初の一戦は1998年3月25〜28日の日程でテキサス州サム・レイバン・リザーバーを舞台に開催された。
 2000年からは参戦者数が150名から175名に増加され、各地区戦は全5戦から全4戦となった。それぞれの地区の年間成績からトップ75名がイヤー・エンドに開催されるインビテーショナル・チャンレンジにクオリファイされ、フロリダ州サイプラス・ガーデンにて2000年11月8〜11日にかけて開催された。この大会が現在のエバースタート・チャンピオンシップの原型となる。
 そして翌年、ノーザン戦がシリーズに加わった。またこの年に開催されたチャンピオンシップではコ・アングラーとして出場したレニー・フレッシュは、エバースタート史上初の女性アングラー優勝の快挙を成し遂げた。
 2003年にはウェスタン戦がスタートされ、エバースタートはシリーズ始動の1998年から5年を経て、全米を4地区に分けたビッグ・トレイルと発展した。


2003年度エバースタート・チャンピオンシップ
10月29〜11月1日の日程で開催


 エバースタート・チャンピオンシップが10月29〜11月1日の日程でテネシー州オールド・ヒッコリー・レイクを舞台に開催される。優勝者には3万5000ドルのキャッシュとレンジャー519VS Comancheのフルリグが授与される。同大会にはウェスタン地区の年間順位からトップ30、各イースタン、セントラル、ノーザン戦からトップ40が集結し、トータル150名で競技される。エバースタート・チャンピオンシップには、それぞれのディビジョンで勝ち上がったコ・アングラー選手もクオリファイされる。この中には、ウエスタン戦同部門を27位にランクされ日本人初のエバースタート・チャンピオンシップ・クオリファイを成し遂げた小東和裕さんも含まれている。

 小東さんはW.B.S. にも参戦した経験を持つアングラーで兵庫県出身。2003年度からエバースタート・ウェスタン戦にコ・アングラーとして挑戦している。彼の1年間の成績は、第1戦レイク・プリーザント大会61位、第2戦レイク・ミード大会14位、第3戦クリア・レイク大会83位、第4戦カリフォルニア・デルタ大会95位、総合27位に入り、チャンピオンシップ出場を手に入れた。小東さんは初日、アリゾナ州出身のクレッグ・マッコイと同船する。


オールド・ヒッコリー・レイクとは

 終戦後、特にこれといって大きな動きもなく、政府はU.S.アーミーの対処について困り果てていた。戦争のために大勢の若者を軍隊に雇用するが、戦後は逆に人員が溢れていた。そんなところに目をつけた政府は、ダム建設に乗り出す。ダムの建設現場の労働者をU.S.アーミーで賄ったのだった。この時代、特に1940年代中期から1950年代後期にかけて、アメリカ本土では多数の巨大ダムが建設されたが、その多くにU.S.アーミーが絡んでいる。1946年に建設が開始されたオールド・ヒッコリー・レイクもその1つである(完成は1954年)。カンバーランド・リバー・ベイスンに作られた同リザーバーは、全長はおよそ97マイル、標高445ftに所在する。同湖にはラージマウス、スモールマウスが生息している。湖からほど近い町にはナッシュビルがあり、ナッシュビルといえば、現在ではカントリー・ミュージックの聖地として全世界に知られている都市だ。このように大きな町に隣接しているため、多数のバス釣りファンが年間を通して訪れている。ゆえに、フィッシング・プレッシャーが高いレイクと言っていいだろう。

各ディビジョンからの注目選手

 まずイースタン戦総合1位は、ウェスリー・ストレイダーである。昨年は、BASSサザン・オープン戦で3試合、バスマスター・クラシック、FLWツアーで6試合、ツアー・チャンピオンシップ、エバースタート・イースタン戦で4試合、セントラル戦で1試合、合計年間16試合を闘い抜いた。ちなみに、BASSサザン・オープンでは総合2位に入った。またエバースタート・イースタンでは初戦は挫いたものの、残りの3戦はすべてトップ10以内でフィニッシュしている。今回エバースタート・チャンピオンシップの頂点にもっとも近いアングラーである。
 セントラル地区では、ジャッキー・デイビスがAOYを獲得した。セントラルといえば、イースタンと並び、もっとも参戦希望者が多いディビジョンである。強者の巣窟を勝ち抜けたデイビスだが、彼は今年からプロトーナメントに本格参戦したアングラーだ。FLW系トーナメントではルーキーが異常なほどに勢いを見せており、また強豪がひしめくセントラルで年間トップを獲得した自負もあり、デイビスに追い風は吹いているかもしれない。
 ノーザン地区の年間優勝は、マーク・ゾナだ。以前「文字ニュース」でもお伝えしたように、彼は「ZONA-2」とあだなを付けられるほど、2位でフィニッシュした回数が多い。昨年のチャンピオンシップでも2位に終わり、今年はノーザン全4戦中3戦を2位でフィニッシュした。そろそろ、てっぺんを取らせてあげたい気もする。
 今年から開催されたウェスタン・ディビジョン。初年度の年間優勝は、ブレント・エーラーが成し遂げた。彼は全4戦中3戦を3位でフィニッシュしているが、「Ehrler-3」というあだなは付いていない。FLW Outdoorsサイトにはマーク・ゾナの「私はまだエーラーに会ったことはないが、もしチャンピオンシップの会場で出会ったら、私は彼にビールをおごるよ。もしくは、彼がおごってくれるのかな」といったコメントが掲載されている。チャンピオンシップのウイナーが誰であろうと、2位と3位がゾナとエーラーであったなら、これはミラクルとしか言いようがない。