2003/2/11
バスマスターツアー第3戦
レイク・セミノール大会


 2月に入り、B.A.S.Sバスマスターツアーも第3戦めを迎えた。この大会が終了すれば、最初のカット(175名中上位100名が残留できるフォーマット)が行われる第6戦まで残りわずか3戦。ちょうど前半の折り返し地点に入ったということになる。
 1月からスタートしたバスマスターツアーは、第1戦、第2戦とフロリダ州のハリス・チェインとレイク・オキチョビーで大会を開催したが、この第3戦のフィールド、レイク・セミノールはジョージア州と表記されてはいるものの……実はフロリダ州のレイクでもある。このレイクはジョージア州とフロリダ州に跨るリザーバーなのだ。ウエイイン会場がジョージア州側に置かれているため、ジョージアと表記とされているに過ぎないのだ。後半戦が「ウエスタン勢に有利」だといわれていたのに対して、この序盤3戦が「フロリダのアングラーに有利」だと囁かれたのも当然のことだった。第3戦の日程は、2月6〜9日の4日間。
 記憶に新しいところでは2002年、このレイクで同時期に開催されたバスマスターツアー。マイケル・アイコネリが制したこの大会で、桐山孝太郎は4位入賞を果たした。彼にとって、ここはバスマスターツアーでの最高位をマークした、ゲンのいいレイクでもある。
 トーナメントスタート直前のレイク・セミノールのコンディションを検証してみよう。気温は20度前後を行き来する状況。水温は比較的安定しているが、天候が悪く、曇り空が続いている。スポーニングを意識したバスがシャローに上がりはじめているものの、反応は渋い。急深なスポットからブレイクを伝い、突然シャローへと向かうバスが多いのも特徴的な傾向だ。加えて、サブマージド・ストラクチャーにバスがつきやすく、サスペンドしたバスをいかに食わせるかがひとつのキーになっていたようだ。
 もちろん、ダイレクトにシャローエリアをねらうパターンも有効だろう。が、天候の急変でもっともダメージを受けるのはシャローエリアにほかならない。事実、“名実ともに”フロリダ州で開催された第1戦、第2戦では、この天候の急変によって魚を見失うアングラーが続出していた。
 日本人として、誰よりも大きな期待を背負っていたのが桐山孝太郎だ。昨年の実績はもちろん、入賞アングラーの常連だったウエスタンオープン時代も、春のリザーバーで数多くの上位入賞を経験している。
 昨年の大会を制したマイケル・アイコネリに加えて、地元フロリダのショウ・グリズビーも優勝候補のひとり。このレイク・セミノールで圧倒的なウエイトを叩き出し、余裕の優勝を飾った彼の姿を覚えている人も多いことだろう。しかし、この季節のセミノールは、そんなグリズビーにとってもイージーな場所ではない。大会前には「フィールドとしては得意だが、2月のセミノールは……本当に難しい」と苦笑いを浮かべていた。
 前半戦に好ダッシュを見せたデビッド・ウォーカーは、Buschビールのパッチを着用していないためアングラー・オブ・ザ・イヤー・ポイントを獲得できない。それだけに、“真の王者”に対するモチベーションは高いことだろう。ウォーカーの動向も気になるところだ。
 では、第3戦の初日から最終日までをダイジェストでお伝えしよう。
 初日首位を獲得したのは、第32回バスマスターズ・クラシック覇者のジェイ・イエラスだった。タフといわれた状況下で22Lb9ozをウエイイン。2位には西海岸から参戦しているルーク・クラウセン、3位にはベテラン、ロン・シャフィールドが入った。
 また、今年からバスマスターツアーへ参戦している清水盛三は6位と、好調な滑り出しを見せた。7位には初戦を制したスキート・リースがつけて好調ぶりを見せつけた。8位にケーシー・イワイ、11位にはマーク・タイラーと、上位にウエスタン勢が入ったのが印象的だ。
 この日イエラスは、「神様からのギフトがあった」とコメントした。それは彼が4バイト4フィッシュで22Lb9ozをウエイインしたことと、その内の1尾が10Lb4ozというビッグフィッシュだったことを指している。これらの4尾はモーニングバイトだったらしく、その後辛い時間を過ごしたらしい。
 クラウセンは、「(初日に)これほど釣れると思っていなかった。予想ウエイトをはるかに超えていたし、ほぼ1ケ所で今日のウエイトを揃えてしまった。ちょっと釣りすぎた感じもする」と話した。
 
 2日め、初日4位につけたゲーリー・クラインがトップに躍り出ると、14位だったジム・ビッターが2位にまで順位を上げてきた。ビッターは第2戦めまでの年間総合で暫定1位。フロリダを地元とするビッターにとって、この序盤戦は最高のスタートダッシュだといえるだろう。アングラーオブザイヤーも夢ではない活躍ぶりだ。そして、期待の桐山がここで勝負強さを見せつけた。この日、トップウエイトとなる19Lb8ozを持ち込み、2日めを8位で通過。地元のヒーロー、ショウ・グリズビーは11位、ルーク・クラウセンは12位で3日めに駒を進めた。
 クラインは「今日は私が思い描いたとおりの釣りができた。バスは密集しているようだが水温が前日より低くなったために、スローになった。速い展開で釣りをすると、バスがいるスポットを通り過ぎてしまう」と語った。
 また、清水盛三は13位で2日めを終え、惜しくも3日めに進出することができなかった。その他、宮崎友輔は65位タイ、大森貴洋は89位で大会を終えた。
 余談だがこの日、3名のアングラーが初日のウエイトをディスクオリファイ(抹消)された。理由は彼らがライブ・リリース・エリアで釣りをしていたからだという。このエリアは大会中オフリミットとなっており、大会前にも口頭と文書にて説明があったそうだ。それらのアングラーは、バーニー・シュルツ、ゲイブ・ボリバー、カイル・マブレーだった。
 
 
 3日め、セミ・ファイナル。ゲーリー・クラインのウエイトは、日に日に上がってきている。クラインは12名で競われたこの日、自らの最大ウエイトとなる19Lb5ozというグッドウエイトを持ち込んだ。しかも4フィッシュである。
 これを追っていたのが、桐山孝太郎。約9Lbという差は小さいものではなかったが、ついに3日めに2位に浮上。最終日への進出が決定するとともに、B.A.S.Sトーナメント初優勝への期待が一層高まる。
 クラインは2尾をバラしたというが、4尾で19Lbオーバーというウエイトは賞賛に値する。「今日は太陽がやっと覗いた。これをこの1週間ずっと待っていたんだ。11時くらいに日射しが見えはじめたが、その後すぐにバイトラッシュがはじまった」と述べた。
 3位につけた日系3世のケーシー・イワイは、アリゾナ州出身のアングラーで、今シーズンからバスマスターツアーに参戦しているルーキーだ。「明日の釣りに関しても自信がある。(自分が釣っているエリアには)ビッグフィッシュが潜んでいるのもわかっているし、ただやるだけだ」と強気のコメントを残した。彼はまだ20歳のヤングアングラーで、今期のツアーメンバーでは最年少でもある。
 桐山はこの日、ドロップショットをメインにウエイトを稼いだようだ。
 
 そしてファイナル・ラウンド。3日めの上位6名が最終日へと進んだ。
 最終日にトップウエイトを稼いだのは、なんと桐山孝太郎。4日めに17Lb8ozを持ち込んだ桐山にとって、今回は充実したトーナメントとなったのではないだろうか。2日めから首位のリードを保ったゲーリー・クラインは、14Lb5ozをウエイイン。これで試合の行方が……と言いたいこころだが、3日めの時点で桐山とクラインの差は約9Lb……残念ながら順位の変動とまではいかなかったが、会場は大いに盛り上がった。
 バスマスターツアー第3戦を制覇したのは、ゲーリー・クライン。彼は今までに7度の優勝を経験しているが、ツアーレベルでの優勝は初となる。ジム・ビッターは6位で終え、年間総合暫定1位の地位をキープした。桐山は優勝こそ逃したものの、ツアー自己最高位の2位で大会を終えた。後日、改めて桐山のインタビューを掲載する予定。