2003/1/9
B.A.S.S. とFLWのコンフリクト
トッププロがFLWのみの参戦を表明


 
B.A.S.S.とFLW Outdoorsが衝突していることは、過去に当サイト「文字ニュース」で幾度か触れている。両団体の2003年度ツアー・スケジュールが重なったことが最初の原因だった。どこからともなく“団体潰し”のようなウワサも聞こえてきた。スケジュール問題に関しては、B.A.S.S.が重なる日程のうち1つをリ・スケジュールイングすることで回避されたが、まだもう1つはそのままとなっている。
 昨年12月には、別の大きな問題が持ち上がった。B.A.S.S. バスマスター・ツアーのアングラー・オブ・ザ・イヤーの件だ。ブッシュ・パッチ・リクワイアメントと呼ばれるもので、世間的には「ノー・パッチ、ノー・ポイント」ルールと言われいる。
 1月9日からスタートするバスマスター・ツアーに参戦する選手は、年間チャンピオンになるためのポイントを1戦1戦戦い抜き稼出す。ただしこのポイントを稼ぐことができるは、アルコール・メーカー(厳密にはビール・メーカー)の“ブッシュのロゴ入りパッチ”を大会で着用した者だけなのだ。これを怠れば、ポイントはおろか、アングラー・オブ・ザ・イヤーと上位10位まで授与される賞金まで得られない。これは、2003年度シーズンからの新ルールがある。
 12月にこのブッシュ・パッチ・リクワイアメントが発表されて以来現在までに、いくつかの問題が発生したのだった。
 
 ことの発端は、第32回B.A.S.S.バスマスターズ・クラシックの開催中、2003年度からアンハウザー・ブッシュ社がスポンサーとして協賛が決定したこと繋がる。同社は今年のバスマスター・ツアーのアングラー・オブ・ザ・イヤー・レースに貢献する意味で、1〜10位までの選手に賞金を授与すると発表した。
 しかし、この賞金が授与されるためには規定がある。
 まず第一に、(B.A.S.S.から送付された)ブッシュのロゴ入り「ブッシュ・アングラー・オブ・ザ・イヤー・パッチ」をトーナメント・シャツの左腕に着用する。
 次ぎに、同じデザインでできたデカールをボートに張る。張る場所についても、ボートが水面に浮かんだときに確実に見えるところ(底面などは違反となる)。
 これら2つのルールを厳守していれば、1戦1戦のポイントを稼ぐことができる。だが、パッチを着用していなかったなどの場合には、それがもらえない。また、年間チャンピオンに輝いたとしても、その称号は剥奪され賞金さえも授与されない、というものだ。
 
 12月初旬、パッチがB.A.S.S.から同ツアーに出場する選手に届けられると、当然不満の声をあがった。スポンサーとの契約でそのパッチを着用できない選手。宗教的な問題でアルコール・メーカーのパッチを受け入れられない選手。
 その後、パッチのデザインは改善されたが、ルール自体は当初のままに終わる。
 
 一部の選手以外はプロアングラーとして生計を立てているがために「ルールはルール」と割り切ってパッチを認めているが、この問題はキャリアが上がれば上がるほど、負担が大きくなる。特にバスマスター・ツアーとFLWに同時参戦する者は難しい立場にいた。
 
 ではそれらのアングラーが、両団体のツアーに出場することが厳しくなった理由を見ていこう。
 今回のケースとして一番多いのは、スポンサー絡みの問題からFLWのみに参戦する選手が存在することだ。彼らも、「できるなら、両団体のツアーに参戦したい」と考えているに違いない。
 FLWに協賛しているメーカーの契約書には、「我社のシャツを着用すること」のほか「タバコ/アルコール・メーカーのパッチを着用することは認めない」という内容が含まれているものがあるという。これはスポンサーだけでなく、団体自体の考え方だという。ゆえに、自らのメインスポンサーがFLW側にあり、B.A.S.S.にない場合、ブッシュのロゴ入りパッチを着用して大会に参戦することは、契約上無理なのだ。
 たとえば、クラーク・ウェンドラントは、両ツアーに参戦する選手であったが、今期はFLWのみに出陣する。この決定にいたった理由の1つは、彼のメインスポンサーであるケロッグにあった。
 同社は、どちらかと言えば子供をマーケットとした商品(食品)を製造および販売する。ウェンドラントは、ケロッグ・シャツを着用して大会に参戦しているのだが、そのシャツにビール・メーカーのロゴを載せるのは矛盾している、と考えたのだった。
 同様に、フジフィルムをメインスポンサーとするランディー・ブローキャットも選択しなければならなかった。しかし彼は、「FLWにフル参戦しバスマスター・ツアーにも出るものの、パッチは着けない」とした。単発の試合で勝ち獲った賞金は剥奪されない。そのため、ブローキャットは最初のカットが行われる6戦めまでバスマスター・ツアーに参戦するという。
 ただし、先にも触れたように、彼が同トレイルでポイントを得ず、アングラー・オブ・ザ・イヤーに輝くこともない。また、ポイントがないので、バスマスターズ・クラシックへクオリファイの道も閉ざされた。
 ブローキャットと同じくしてノー・パッチで同ツアーへ参戦し、FLWへはフル参戦するデイビッド・ウォーカーは、スポンサーとの契約でタバコ/アルコール・メーカーのそれを着用できない。
 彼はウェンドラントと並び、FLWが誇るトッププロの1人である。
 
 2人の例を見てみると、スポンサーが選手の大会選択と出場の自由を奪っているように思われがちだが、プロアングラーの生計は、大会の賞金以外の部分でも成り立っている。生計を安定させるには、スポンサーとの契約が必要である。
 ブローキャットやウォーカーがどれほどの契約金を受け取っているのかは知る余地もないが、それらと縁を切ってまでB.A.S.S.の賞金やクラシック出場を目論まないところが現代的と感じた。それだけ現在アメリカのプロアングラー界は、“職業:バスプロ”として成立するのだろう(後編へ続く)。