2002/7/16
1997年度Bassmasters Classicにみる
サイドストーリーの楽しみ方


 
Bassmasters Classicでは毎年何かが起こる。「誰が優勝するのか!?」という部分でも充分に楽しめるトーナメントなのだが、ドラマチックな展開、その大会の流れを見るからさらに面白くなる。勝敗に加え全体的な面白さを考慮するなら、1997年の大会は素晴らしく内容の濃いものだった。
 
 1997年をもち、Bassmasters Classicは第30回を迎えた。ある意味、メモリアル大会だった。出場した選手も蒼々たるものだったが、その中に日本人初のClassicクオリファイアーが誕生した。
 並木敏成さんである。
 並木さんは、1996年からB.A.S.S.に参戦し、よく年Classicに出場するという超エリート級の実力を世界に魅せ占めた。言語の壁、慣れない土地での生活、トーナメント会場から次の会場へと渡る日々、プロアングラーとして生計を立てることを誓った並木さん本人も素晴らしいのだが、並木さんに帯同してアメリカを転々とした奥さんも素晴らしい。以前並木さんに奥さんのことを聞いたことがある。
 「彼女は英語が話せるから、その分世話になったし、いろんな面でも迷惑もたくさんかけた。由紀(奥さん)のためにもClassicのステージに立てたことはよかったよ。プラのとき一緒にボートに乗ってくれるんだけど、全然パターンが掴めなくて、でも彼女が1尾釣ってくれたことで、その大会が上手くいったこともあるしね。今のオレがあるのは、『彼女のおかげって』言っておかないと、あとで怒られるかな(笑)」と語っていた。
 また、由紀さんは同Classicで着物を着用し、注目の的だったこともつけ加えておこう。
 ちなみに、並木さんは同Classicを34位で終えている。
 
 さて、第30回クラシックは、今年のClassicの会場と同じ水系クーサ・リバーを堰き止めたリザーバー、ローガン・マーチン・レイクでの開催だった。同湖では3回めのClassicであったが、1992年大会はロバート・ハミルトンJr.が、1993年大会ではデイビッド・フリッツが優勝している。彼らはともにディープのクランキングをメインしていた。同大会の下馬評では、1993年大会覇者・フリッツが有利だということだった。

 しかし、注目すべきポイントは、初日に起こった。フェデレーションを代表してというか、ジンバブエから勝ち上がったジェリー・ユスタ(同大会で3度めのClassic)が初日トップに立ったのだ。ユスタはシャローのドックのパターンを攻略してきた。
 彼のテクニックが面白い。地元ジンバブエのフィールドではドックのシェードパターンというのが皆無らしいのだが、「知人からドック周りは1つのパターンだ」と聞かされ、彼は事務所である練習をしたという。それは、椅子の上に立ちロッドを振って、机の下にピッチングでルアーを入れる練習をしていたらしい。
 
 注目ポイントはさらにあった。ディオン・ヒブドンの初優勝がかかっていたが、デイビッド・フリッツの猛威は揺るがなかった。ディープを攻めたフリッツはグッドウエイトを持ち込むが、先にウエイインしたヒブドンにはかなわず、1oz差でヒブドンの逃げ切り優勝となった。
 あれほど、ディープのパターンと騒がれた大会であったが、ヒブドンのパターンは、オヤジさん(ギド・ヒブドン)のフェイバリット・メソッドである軽量ウエイト・ジグ、しかもシャローパターンで同大会を制したのだった。
 
 Bassmasters Classicではいつもサイドストーリーが生まれる。これも、Classicを楽しむ方法の1つではないだろうか。