2002/5/21
デニー・ブラウアーの優勝と腰痛手術

 5月8〜11日にかけて開催されたB.A.S.S. Bassmaster Tour 2001-2002トレイル第6戦。今期の最終戦でもあった同大会は、アラバマ州レイク・ユーファウラで開催された。B.A.S.S.は、この湖で幾度となく大会を開催しており、参戦選手にとっては、バスの居場所を比較的見つけやすいフィールドだった。しかし、トーナメントでは何が起こるのか、誰にも予想がつかない。
 2001-2002トレイル最終戦の見どころとして、basswaveは「誰が優勝するか!?」より「誰がClassicにクオリファイされるか!?」に注目した。実際、大御所ラリー・ニクソンやローランド・マーチンに加え、若手のエドウィン・エバースやカリフォルニア・デルタでもっとも優勝率の高いアングラー、ロバート・リー、そして今年は唯一の日本人アングラーとして参戦する、桐山孝太郎さんなど、クオリファイメンバーは、そうそうたるものだった。
 が、しかし、劇的なエンディングはやはり最終戦の最終日にやってきた。悪性の腰痛によりトップ戦線から外れていたデニー・ブラウアーが、復活の勝利を遂げたからである。
 
 デニー・ブラウアーは、ミズーリ州在住・現在53歳、20年もの間プロアングラーとして活躍してきた、プロの中でももっともリスペクトされるアングラーの一人である。B.A.S.S.における生涯賞金獲得額でも文句なしのトップを走り続けている。そんなブラウアーだが、実は2年ほど前からバック・インジュリー(背中、特に腰辺りの故障)に悩まされており、プロアングラー生命に危機が訪れた。その痛みが我慢できないほどになったのは、1999年のBassmaster Classicに出場した後だという。以来彼はトーナメント参戦中、その痛みと右足のしびれ、100%成功しなかったといわれる手術、そしてそのリハビリと、長い間格闘していた。
 それゆえ、この最終戦で彼が優勝したとき、多くのファンが強く心を打たれた。特にツアー仲間であり息子でもあるチャドと愛妻のシルリーは、夜も眠れないほどの激痛に苦しんでいたデニーを思い出し、表彰台でプレートを掲げる彼を見て涙を止めることができなかった。家族には、デニーの痛みがわかる。なぜなら、彼らはデニーの2度にわたる腰と脊髄の手術、そしてリハビリを目の当たりにしている。また、夏にもう一度手術しなければならない可能性があることも知っているのだ。
 
 「よくなってきていると思っていた」とデニー・ブラウアーは語る。「1日に6マイルくらいは歩いていたし、だいぶ痛みも引いてきた気がした……。でも、昨年の12月くらいからまた痛みはじめた。座骨あたりが痛みだして、足もしびれはじめたんだ。今は太股のあたりまで、そのしびれがくるようになっている。これからどうなるかわからないが、もし何かできる可能性があるならば、もう一度手術を受けるつもりだ」と経過を述べた。
 また、最後にブラウアーはこう加えている。「私たちがやっているスポーツは、多くの人が考えているよりもっとフィジカルなものなんだ。100マイルという距離をボートで走り向け、波の中で腰や尻を打ちつけられる。しかも、片足はエレキのコントローラーに乗せているから、基本的にはもう片方の足で1日中立っていることになる。これを20年間も続けてきたのだから、どこかが悪くなってもおかしくない。他のスポーツ選手がバスフィッシングの世界に入ってきて、同じことをやったら1週間でバテるだろう。違った意味でのフィジカルだが、これもハードなスポーツなんだよ」と締めくくった。