2002/11/26
W.B.F.A.チャンピオンシップ2002
ジュディー・ウォング、2年連続優勝を達成


 牽引されたバスボートが、大会のウエイイン会場へと入ってくる。バスボートのシートには、大会に出場した選手が座り、ファンに向かって微笑み、手を振って歓声に答える。
 そしてウエイインがはじまる。中にはノーフィッシュでウエイインする選手もいる。肩を落としインタビューされるが、「これもフィッシングなんだよ」と答える。ノーフィッシュは避けられたものの、スモールサイズのバスしかウエイインできないものもいる。しかし、勝者いつも存在する。
 ここまで聞けば、何ら普通のバスフィッシング・トーナメントと変わりないが、これはW.B.F.A. のウエイイン・ステージでの話である。
 
 W.B.F.A.(Women's Bass Fishing Association)とは以前「文字ニュース」でも紹介した、女性だけで釣技するバスフィッシング・トーナメント団体である。そのトレイルが開幕になって、まだ6年しか経過していない。しかし、同団体に所属するメンバーは軽く600名を超えているという。メンバーのほとんどが、バスフィッシングがもっとも盛んなアメリカ・南東部エリアの女性らしい。
 しかし、“女性のみのバスフィッシング団体”と聞いて、それを真剣に捉えられない男性アングラーも多い。なぜなら、バス釣りは、“男の週末の楽しみ”であり、“夢の職業”であり、技術だけでなく、精神論も問われる世界だからだ。
 ただし、それは彼女たちが直面しているプロトレイルの実体を見てからの判断が必要だろう。年間5戦を行い、1年の内7ヶ月をトーナメント・フィッシングのために費やしている。1996年、当時女性限定団体として有名だったBass'n Galが姿を消し、その後、彼女たちは男性選手に混じってバスマスターやFLW、エバースタートなどに参戦しているが、W.B.F.A.をメインに参戦する者が多い。
 男性に混じって大会に参戦したとしても、彼女たちは『女性だから』という性別差別をほとんど受けていないという。逆にリスペクトされることが多い。それは、彼女たちがこのスポーツに取り組む姿勢が男性に負けないほど真剣なものだからである。
 
 今年のW.B.F.A.チャンピオンシップは、11月14〜16日の日程でアラバマ州ウォルター・ジョージ・リザーバー(通称:レイク・ユーファウラ)で開催された。同大会に出場したのは、年間ランキングからトップ34名の選手たちだ。
 
 W.B.F.A.チャンピオンシップ2002を制覇したのは、ディフェンディング・チャンピオンのジュディー・ウォング。彼女は大会初日、16.41lbをウエイインすると2位の選手に9lbのリードをつけた。その後彼女は2日めの首位も守り抜くと、3日め、トータル・ウエイトを30.51lbとし、見事優勝を果たしたのだった。
 彼女は、「大会前に寒冷前線が通過し、水位も上がったけど、大会当日は青空が広がっていた。だから、バスはシャローにいると思った」とパターンを語っている。また、「初日はゲーリー・ヤマモト社の6inカットテールを2〜4ftの水深でグラスの間をスイミングさせた。2日めと最終日は、ゲーリー・ヤマモト社のソルティー・クローにチェンジしてバスを釣り上げた」と加えた。
 
 ウォングがトーナメント・フィッシングに参戦しはじめたのは1977年。しかし、家庭を守るという主婦業もあり、1989年から本格的なプロアングラーの道が開けた。
 しかし、彼女には特に目立った成績もなく時が過ぎた。そして2001年、彼女に転機が訪れた。ルイジアナ州レッド・リバーで開催されたW.B.F.Aチャンピオンシップで優勝し、一躍注目を集める存在となったのだ。
 バス釣りトーナメントとは、そんなものである。有名であろうが、無名であろう、大会を制覇した者の一人勝ちの場所である。確かに、優勝することで一攫千金を夢見る者もいるだろうが、それ以前にアングラーとしてのリスペクトを他のアングラーが与えてくれる。至福のときである。
 また、ジュディー・ウォングは大会中、「他の選手が私が釣りをしやすいように、私にスペースを与えたくれた」と言う。最終日、優勝戦線から脱落した選手たちは、ウォングと2位の選手のエリアには立ち入らないというスポーツマンシップでリスペクトして見せた。
 
 ジュディー・ウォングは、「私は、私が本当に愛するスポーツに参加できる状況にあることを非常にラッキーだと感じている」と述べた。これは、彼女が家族に向けて述べたメッセージである。
 W.B.F.A.の統計によると、同団体に参戦する選手は、平均年齢が30歳。既婚者であり、少なくとも子供1人を出産している。家族の収入源は、主人と自分との2つである場合が大半だという。ウォングのように、子育てや家族と時間を過ごすために、1度は大会に参戦することを諦めた選手も多いはず。だが、彼女たちがただ単に大会に参戦するだけでなく、全国のトレイルを通して釣り歩くということを家族の理解がなければ成功しえない。