2002/11/11
Everstartチャンピオンシップ
初日〜最終日


 アラバマ州レイク・マーチンで開催されたエバースタート・チャンピオンシップ。オフィシャル・プラクティス・デーから予想されていたように、同湖のコンディションはお世辞にもよいとはいえないものだった。突風、季節はずれの低気温・低水温、マッディー・ウォーターは、大会としての理想から大きく外れた状態にあった。その状況は出場選手のウエイトにも大きくのしかかり、初日、8ポンド以上を持ち込んだのは、たったの8名。
 初日トップに立ったのはジェイソン・クインで、11.11lbをウエイインした。2日め以降はトップ20以下がカットされるルールのため、クインは初日からビッグ・リードを取るストラテジーを選んだ。
 2位のリッキー・シャンパートは11.9lbをウエイインするが、これら2名は、共通するコメントを残している。「今日のリードがあるから、明日はのトップ20に残れるだけのウエイトを釣り上げる」ということと、その逆算に相当するだけのウエイトが獲れれば、「残りの時間は3日め以降のプラに充てる」とのことだった。
 
 2日めの朝、マリーナは厚い霧に包まれていた。朝日と重なり幻想的な雰囲気が漂うが、一方でトーナメント・オフィシャルは霧の状態から午前6:30分のスタートを遅らせることを発表した。しかし、10分後、状況は一転し、アングラーには霧の向こうへとボートを進める。
 初日1位で折り返したジェイソン・クインは、2日めも独走した。「如何なるコンディションでもそれに対応できるだけのテクニックを持っている」とコメントしている。
 また、2日めの1位〜3位は初日と同じメンバーで、彼らがいるスポットではタフ・コンディションにも係わらず、他のエリアに比べバスの活性は高いという。
 フィッシング・メソッドとしてはやはりライトリグが中心のようだった。ディープ・ストラクチャーを攻略するために、多数の選手がジグとドロップショットリグを多用。クインはドロップショットでリミットを揃えたとも語っている。
 
 3日めの朝は、最初の2日間に比べ、穏やかなスタートとなった。目に余るほどの気温上昇となによりも風が収まったことが、釣果を左右するファクターとなった。しかも、同日からはトップ20のみで釣技される。前日までの150名とは異なり、エリア的バッティングも低減する。あらゆる意味でプレッシャーが下がった3日めとなった。
 この日、ウエイインされたバスのウエイトは6〜7ポンドに集中した。そのバリアを1人突飛して同日首位に躍り出たのは、クレッグ・ウォークマンである。11.3lbは、2位のジェイソン・クインに約3ポンドの差をつけての首位獲得となった。
 ただし、3日め以降は変則ルールが採用されている。最初の2日間は2日間のトータルウエイトでトップ20カットが行われるが、3日め以降はウエイトがゼロに戻されてスタートする。4日めもゼロからのスタートだ。そのため、この日、いくらウォークマンが2位に3ポンドの差をつけたとはいえ、翌日の最終ラウンドにはウエイト的アドバンスがない。あるとすれば、2位以下の選手に対してのプレッシャーをかけたことだろう。
 最終日はトップ10のみで釣技される。ゆえに、生き残るためには自分が釣り上げられるだけの最大ウエイトを持ち込みたいと考えた選手もいるだろう。
 また、ウォークマンがトップに立てた理由としては、5パウンダーのラージマウスを1尾リミットに含んでいたことだった。バスの低活性が続くレイク・マーチンでラージをねらうことはギャンブルに等しく、彼の3日め首位は運も身方に付けたものだった。
 
 狭き門をくぐり抜けたトップ10名が曇り空のレイク・マーチンで最終日の釣技に挑んだ。初日から好調のジェイソン・クインがまたトップウエイトを持ち込むのか、それともクレッグ・ウォークマンが逃げ切るのか、それとも今まで首位争いに頭角を見せなかった者が同大会を制するのか。すべては、この日に釣り上げられるバスのウエイトにかかっていた。
 コビー・クレイガー。FLWツアーを主戦場とするアングラーで、最近ではB.A.S.S.のノーザン戦で総合1位を獲得し、バスマスターズ・クラシックへの出場権を得ている。そのクレイガーは、最終日、ウエイインの時間が迫る帰着中、とあるスポットでボートを止めた。そのスポットは2年前、彼がFLWの大会で試したスポットだったという。以前は1度もバイトを得たことのないこのスポットに、彼はなんとなくストップしてなんとなくルアーをキャストすることにした。すると、倒木の下にプレゼンテーションしたラインが微かに動いた。彼は見事な2パウンダーをキャッチすると、「ここまま行けば3位入賞くらいは行くだろう」と感じていたという……。
 ウエイインではライバルと思っていたジェイソン・クインやその他の選手のウエイトが伸びず、気がつけば、自分が大会を制覇するかたちで終了した。
 「大会がスタートする前は、優勝したいという気持ちがすごく強かったが、初日が悪かったせいか、その気持ちも一時は薄れた」とコビー・クレイガーは語る。彼は初日42位でスタートした。2日め17位に入ると、ある意味ギリギリのラインでトップ20内に入った。3日めには4位に入り、さらにトップ10にまで滑り込む強さを見せ、最終日はラッキーともいえる最後の1尾が優勝へと導いた。
 
 タフな大会になるだろうと予想されたエバースタート・チャンピオンシップであったが、気温が低下したこととシーズナル・パターンのターニング・ポイントだったことから、やはりスポッツのパターンが全体の9割りを占めていたという。
 要するに、このコビー・クレイガーなるアングラーは、ここ最近いい成績を残している。このテンションが1月からスタートするFLWツアーにどれだけつぎ込めるかも今後の課題となるだろう。