2002/11/1
B.A.S.S.バスマスター・セントラル・オープン
最終戦:プレビュー


 今シリーズからルールやフォーマットが変更となってスタートしたバスマスター・オープン戦。3地区に分けられ、それぞれの地区で全3試合が開催される。すでにノーザン戦はシーズン全日程を終了し、早くもバスマスターズ・クラシックへの切符を手中にした選手がいる。先週はサザン・オープン第2戦が開催され、10月31〜11月2日にかけては、セントラル・オープン第3戦(最終戦)が開催される。この大会が示唆することは、ただの最終戦というわけでなく、basswaveにとっても大きな意味を持つ。
 理由は、セントラルには4名の日本人選手が参戦しており、basswaveではつねに海外で活躍する選手を追い続けてきたからだ。
 
  B.A.S.S.がウェスタン戦を廃止したことで、西海岸を拠点としていた選手は(B.A.S.S.を中心に参戦するのであれば)他の地区のオープン戦にエントリーしなければならなくなった。これは、日本人選手に限ったことではない。西海岸方面に住むプロアングラーにとっても同様の決心が必要だった。
 カリフォルニア州在住のアーロン・マーテンスとネバダ州在住のバイロン・ヴェルヴィックは、サザン戦をターゲットとした。理由は定かではないが、カリフォルニアから数日間かけて東海岸へのロードに出ることは、強い精神と勝てる自信も必要であるが、経済的にも負担が大きい。
 しかし、西海岸をベースに活躍してきた多数の選手は、セントラル戦を自分の主戦場に選んだ。それは、サザンやノーザンと比較すれば、セントラルは“もっとも近場”だったからである。たとえば、ヴェルヴィックと同じネバダ州在住のジャック・ギャドレッジはセントラル戦に参戦している。
 
 今シーズン、セントラル戦に参戦する日本人選手は、先述したように4名。昨年のウェスタン戦時には、7、8名の日本人選手が参戦していたが、今シーズンは4名と少ない。
 それは経済的な問題もあるだろうが、理由の1つとしてはセントラル戦の人気の高さにあった。
 アメリカのバス釣り人気は、やはり南東部に集中して全国区にブランチアウトしているが、テキサス州やミズーリ州を含むセントラル地区のバス釣り人気は、南東部に負けないものがある。
 日本人選手にとって、新オープン地区分けが発表されたとき、「さて、どれに参戦しようか」という壁にブチ当たった。マッディー・ウォーターのサザン戦、スモールマウスがメインパターンとなりかねないノーザン戦に比べ、セントラル戦は来年1月からスタートするツアー戦にクオリファイされるためには、“もっとも釣りやすく且つ日本人でも対応できそうな地区”に見えたはずだった……(実際、トップレベルに入るには数年かかるだろうが……)。
 だが、セントラル第1戦のコンペディター・リストが発表されて愕然とした。ダグ・ギャレット、ロン・シャフィールド、マイク・ワーム、チャック・エコノモー、ブレント・チャップマン、マイク・オートン、グレッグ・ハックニー、リック・クラン、ステイシー・キング、ポール・アライアス、ケン・クック、トミー・マーチン、ゼル・ローランド、クラーク・ウェンドラントなど、軽く名前を挙げただけでも強者揃いがセントラルに参戦している。彼らは皆、ツアー戦に参戦している選手であるが、それより彼らはアメリカのバス釣り界を代表する選手である。
 ここで注目したいのが、第2戦終了時までの暫定順位である。1位:グレッグ・ハックニー、2位:ブレント・チャップマン、3位:エドウィン・エバース、4位:ロン・シャフィールド、5位:ジェイムス・ストリックリン、6位:スコット・ルーク、7位:トッド・フェアクロスと続く(キリがないので、このあたりで止めておく)。
 ざっと7位まで挙げてみたが、この7名の中でオープン戦レベルの選手は、1人(ジェイムス・ストリックリン)だけ。あとは、昨シーズン、ツアー戦に参戦したツアーレベルの選手だ。特に、当サイト「文字ニュース」10月7日号でも記載したが、グレッグ・ハックニーは、FLWを主戦場とする選手で、彼はB.A.S.S.のツアーに参戦していない。だが、このまま独走すれば、2003年度のクラシックの切符を手にするだろう。
 要するに、ツアーレベルの選手にとっては、オープン戦はツアー戦を勝ち抜いてクラシック・クオリファイを奪取するより、オープン戦の上位に食い込むことの方が、イージーにクラシック・クオリファイを獲られるとプランしたのではないか、ということだ。
 では、なぜセントラル戦なのかということだ。basswaveのソースによると、ノーザンはやはりスモールとラージが混棲することからパターンが割れやすい。ギャンブル的な要素も増える。ノーザン地区周辺の選手に幾分強みがあることも事実だ。サザンは、マッディー・ウォーターもさることながら、バスのサイズが比較的小さく、差がつきにくい。今シーズンのサザン戦の開催湖では特にそれが当てはまる。一方でセントラルは、それなりにタフではあるが、バスのコンディションがよく、ビッグウエイト・パターンが成立しやすい。
 特に、開催湖の選定もツアー選手に有利に働いた。第1戦(レッド・リバー)は昨年ツアー戦で使用されているため、多少のエリア的な勘が作用する。第2戦、ワチータは同団体では長らく開催湖として使用されておらず、全選手がイコールの状態でプラに突入した。ただし昨年、FLWは同湖で大会を開催しているため、ハックニーやチャップマンのようにFLWに参戦する選手にとっては、1歩先に出ていた。そして、最終戦はサム・レイバンである。現在までに同団体は、25回にも渡りこのレイクで大会を開催してきた。ベテラン選手になればなるほど同湖のバスを熟知している。また、ビッグウエイトの期待も高い。このようなことから、多数のツアーレベルの強豪選手がセントラルに参戦し、現在上位を占めているわけなのだ。
 
 ここで、日本人選手の話に戻すが、彼らにとってセントラルは他の地区より釣りやすいはずだったのだが、実はフタを空けてみると、「もっとも難攻不落の淵だった」といえないだろうか。
 今シーズン、日本人選手が“4名しかエントリーしていないのではなく”、ツアー選手が多数エントリーしたことや人気の高さから、エントリーのアプリケーションは掲出したものの、“参戦リストから漏れた”、いわゆるウエイティング・リスト入りになったわけである。
 今シーズン、セントラル戦に参戦する日本人選手たちは、現在暫定で大森貴洋さんが29位、清水盛三さんが39位、臼井智浩さんが65位、宮崎友輔さんが173位につけている。
 
  さて、サム・レイバンについて少々説明しておこう。先述したように、B.A.S.S.は同大会までに同湖で25回も大会を開催している。同団体にとってサム・レイバンはフェイバリット・レイクの1つなのだろう。
  サム・レイバンはテキサス州東部に位置するリザーバーで、何万という立ち木が密集し且つベジテーションが豊富なビッグバス・ファクトリーである。下野正希さんがB.A.S.S.に参戦していた当時、確かサム・レイバンの大会に出場していたはず。
  114000エイカーを誇る超巨大リザーバーは、参戦選手からも好まれた開催湖であることも事実。降雪中の大会もコンペティションとしての醍醐味はあるが、参戦している本人にとっても観衆にとってもビッグウエイトが出ることは、やはり望ましいかたちのエンディングを迎えられる。
  その過去25回の大会のほとんどは、春に開催されたもである。いわゆるスポーニングに絡んだパターンだ。 しかし、今回は秋、といってもテキサスは暑い。レイト・サマー・パターンも充分にありうる展開となるだろう。
 
  春の“ビッグ・サム”は増水傾向にあるのが通説で、通常水位より5〜7ftほど多い。だが、現在の水位は通常の7ft以下のドローダウン状態。レイクの75%を占めるベジテーションはもちろんショアライン沿いにあるわけだが、ボートで近づける範囲の水深は6ftもあるらしい。
  近日中に開催されたローカル大会でのウイニング・ウエイトは、20〜25lbと大会に相応しいビッグウエイトといえる。
  数年前に発生したラージマウスバス・ウィルスの影響で大量のバスがフィッシュ・キルに遭遇し、大量のビッグサイズが死に絶えた。だが、サム・レイバンは復活の狼煙を上げている。同大会はで10パウンダーが飛び出す可能性も充分にありうる。
  レイト・サマーでありアーリー・フォールのパターンでは、スピナーベイトのような広範囲にサーチできるベイトが強い。ただし、フリッピングは同湖のパターンから切っても切れない関係にある。
 
  ちなみに、日本人アングラーの大森貴洋さんと宮崎友輔さんは現在テキサス州在住となっている。彼らは地元優勢の力を見せつけることができるのだろうか!? また、長い間、ビッグ・サムを釣り続けたリック・クランをはじめとしてベテラン勢は、上位に食い込むことができるのだろうか!?