第三者というのは非常に楽なもので、物事に直接接していないため、基本的には人ごとである。ときに、当事者たちにとってみれば第三者の存在は大きな迷惑であったりもする。そんな第三者の無礼やワガママを承知の上で、今回は第11回W.B.S.クラシックの行方を予想してみた。
 
 人はつねにヒーローの出現や登場を待ち望んでいる。ヒーローの存在はなにもTVの中だけではないのだ。プロサッカー選手を目指す少年にとっては、イタリアで活躍する中田英寿選手がヒーローに見えるかもしれない。自分の中にある何か、たとえば価値観が崩れたとき、答えがわからず迷い込んでいるとき、そんなときにこそヒーローが舞い降りてきてほしい。
 ヒーローの仕事は非常に大変なものが多い。サッカーの話にもとるが、試合中「もうダメだ……」と思った瞬間、ゴールを決めてくれるような……。要するに、“ヒーローはすべてを託される。答えを求められる。納得する結末を要求される”存在なのである。
 琵琶湖をホームとするプロアングラー下野正希さんは、「試合(トーナメント)に出る一番の楽しみは、自分のパターンがアカンかって釣れへんでも、誰かが釣ってくる、そして勝つ。勝つっちゅうことは、その試合の答えを持ってたってことや」と言った。
 バスフィッシング・トーナメントにおいては、勝者がヒーローなのである。
 
 「釣れない……」と言われ続けた今年のカスミ。しかし、今シーズンW.B.S.の大会を振り返ってみると、ノーフィッシュでフィニッシュした選手を多く存在するが、反面、7000gを越すウエイトを持ち込み優勝を飾っている選手もいる。バスを見つけだすことができなかった選手にとっても、第三者が感ずるように、勝者はヒーローになりうる。

 ヒーローというものは楽な仕事ではない。「釣れなくなった」と言われるカスミで、W.B.S.クラシックという大舞台で、本人が好もうと好むまいと、ビッグウエイトを期待されている。
 同大会において、もっとも期待がかかるのは、アングラー・オブ・ザ・イヤーの粟島英之さんであろう。彼の場合、年間優勝を獲得しているということで、1年間を平均してよい成績を残してきた。彼のクラシックにおける過去の最高成績は1999年の3位だ。

 年間成績でいえば、年間を2位でフィニッシュした大藪厳太郎さんも“今年のカスミ”を理解していたアングラーの1人である。彼は第4戦までブッチギった状態で独走していたが、最終戦に痛恨の1830gしかウエイインすることができなかった。逆転優勝で粟島さんが年間優勝を勝ち取るかたちとなったが、その栄冠を逃した痛さからも、大藪さんが台風の目となることは間違いないだろう。
 だが、彼らはともにランガン属性の選手である。エリアを多く持っていたとしても、本戦2日間のうちでバッティングするエリアがあるかもしれない。潰し合いにある可能性もできてたわけだ。
 
 アングラー・オブ・ザ・イヤーと同じくらい期待度・ヒーロー性が高いのは、昨年度優勝者の本山博之さんだ。彼は今年、総合22位と不本意な成績に終わっているが、昨年度はW.B.S.クラシックとBasser All Star Classicでも優勝している。現在までにアングラー・オブ・ザ・イヤーを4度獲得し、W.B.S.クラシックでは3度の優勝経験を持つ。もっとも勝負強いアングラーと考慮できるだろう。加味するなら、彼はW.B.S.で唯一クラシックに連続出場する選手でもある。
 
 歴代優勝者の中で今年クオリファイされた選手は、林俊男さん、山田貴之さん、荻野貴生さん、西村嘉高さんがいる。
 
 ではここで、クラシック出場者が予測したウイニング・ウエイトを見てみよう(2日間の合計)。
本山博之 12000g
粟島英之 12000g
大藪厳太郎 13800g
早乙女剛 15000g
荻野貴生 13000g
蛯原英夫 13000g
新谷一大 12000g
市川好一 ------
赤羽修弥 13000g
川口信明 12000g
武恵一  13000g
山田貴之 14000g
林俊雄  13500g
布川昭男 12000g
西村嘉高 16500g
中村雅晴 13000g
稲葉隆憲 12000g
後藤健治 12500g

 お答えいただいた17名の予想を平均してみると13076。ほとんどの選手が13000gと予想していることから、多くの選手が2日間で13000gを目標を釣技するのだろう。

 また、初日と2日めのウエイトをわけて答えた選手も多くいた。それらすべての選手は初日の方がウエイトが大きくなると言っている。理由はフィッシング・プレッシャーからだそうだ。
 
 では、数名の選手をピックアップして、これらの予想の真意を書き出してみよう。
 赤羽修弥さんがプラクティスを行った感じからすると、「13kg釣るパターンは確かにあると思います。勝つのであれば、それくらいは必要ですね。僕自身バスは見えてますけど、大きいのが釣れなくて……。釣れるのはタイミングのような気がしますので、大きいのがいるエリアをいくつも探しておくしかないです」と語った。
 予想を聞いた中でもっともビッグウエイトを答えた西村嘉高さんは、「プラで何回はカスミに入ったら、8300gくらい釣れて、その後、そのパターンを確認したけどそのときもよかった。ただ、台風とか雨が降ったので、それがどう影響してくるかがわかりませんが、あのときとパターンが同じなら、16kgは獲れると思います」と言う。
 風の影響を語ったのは西村さんだけでなく、山田貴之さんも興味津々なことを仄めかした。
  「南風が吹けば、14kgを釣る自信がある。でも、北風が吹けば、優勝は誰かに譲らなきゃならんかもしれん」。果たして、山田さんのパターンは生きてくるのだろうか?
 
 他に注目したい選手は、クラシック初出場となる中村雅晴さんと後藤健治さん。ともにノンボーター枠からの出場だが、侮れない。中村さんは年間23940gをウエイインしているが、これはボーター部門と照合すれば3位の成績である。確かに「ノンボーターは……」と言われることはわかっての記述だ。彼にとっては、「1年間でどれだけボーターから学んだか」が問われる大会になるだろう。
 後藤さんはJBトップマスターズにも参戦する選手である。W.B.S. 以外の団体で得たものは大きいはずだ。それをこの大会でいかに生かせられるかも彼の実力の見せ所となる。

 果たして、「釣れなくなった」といわれる霞ヶ浦を舞台に開催されるW.B.S.クラシックにおいて、「ほら、カスミはこんなに釣れるんだよ」と証明してくれるヒーローは登場するのだろうか!?