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水口「ただ、実際問題としてですね。この問題というのは諏訪湖の漁業組合から諏訪市に要請があったことから始まっているんです。実際には、諏訪湖ではルアーフィッシングが禁止されているわけです。そこで、なぜそういうことをやるのかというのがわからないんです。もともとリリースできないんですよ、諏訪湖は。ルアーフィッシングそのものが……これは子供もみんな知ってましたよ。そういう所でなぜ禁止にするのかわからないし、リリース禁止ということのもつ社会的意義とか、ほかの各県、滋賀県などの状況を見たうえで考えていかないと。単純にリリース禁止にすればそれでいいという話でもないんですね。おっしゃるように、駆除……むしろ私は、駆除ということが
必要な所なら進めたほうがいいと思います。諏訪湖が駆除したいということだったら、その駆除のために補助金を出すぶんには、私はなんの問題もないと考えていますけどね。ただそのときに、諏訪湖はもともとルアーフィッシング禁止で、それをみんなが認めてるわけですから。釣り人の意見は聞く必要ないわけです、諏訪湖の場合は。ルアーフィッシングできないわけですから。本当はルアーフィッシングを禁止するときに釣り人が何か言えばね、また話は違ったんでしょうけど。今はもう、事実としてそうなっていて、みんな認めているわけですから。ですから、諏訪湖では駆除するということにおいて、リリース禁止はありえないですよね」。

田中「その、ルアーフィッシング禁止ということを定めたのは誰なんですか」。

水口「諏訪湖の漁業調整規則ですから、諏訪湖の漁業協同組合ですね」。

田中「組合が決めてるんですか。それは法的に権限があるんですか」。

水口「第五種漁業権というのは、魚の放流をする権利です。そうすると遊漁規則というものを決定できるんです。その遊魚規則の中にルアーフィッシングというものがはじめから入ってなければ、それはできないわけです。するなということではなくて、お金を払ってできる遊漁の中にルアーフィッシングが入ってないということですね」。

田中「そうすると、逆に……その漁協という単位で決められるかどうかということが、今後再検討されなくてはいけませんね」。

水口「そういうことですね」。

田中「湖も川も共有のものであるはずなのに、なぜ漁協が……農業者もそうですが、水利権をもっていたり漁業権をもっていたりということもあるわけですね」。
天野「田中さんが言っていることと水口さんが言っていることで共通していることがあるとすれば……。その、違うように思えることもあるわけですけど、ようするにですね、古い体質をもった漁業組合や、川は自分が管理すると決めた河川局が作ってきた規則というものがあって、それに縛られてきていたのが日本という国だったんですけども。そうじゃなくて、もうちょっと議論したほうがいいよというふうに……これからは違う物差しで議論しましょうということだと思うんですけど」。

田中「その意味でいうと農業の場合もそうなんですが農業委員会というのは立候補制ですけど、たぶん小さなコミューンで。だから地元での場合、考えなくてはいけないのはあ
る意味でいうと、長野県でというより、小さな地域の中でみんなが自由に発言できるものを。長野県という単位ではなくてですね。では、県議会議員の選挙区単位、あるいは市町村議会の市町村の選挙区単位ではみんなが同じように発言ができているかというと、まだわからない部分があるかもしれない。農業委員会というものでは、ふるさと農道とかを作ったりいろいろとしているんですね、膨大なお金を使って。この農業委員会の委員は立候補制というけども、誰もたぶん立候補できない空気があるんですよね。ここが農地転用のことなどをやっていて、立派な圃場整備をしたのに24時間使ってないとか。市町村や都道府県が都市計画法によってできないことが、農業委員会では農地転用などができてしまうという。で、おそらくこの農業委員会のようなものが日本の保守政治の、いわゆる集票基盤だったと思うんですよね。ただ、その集票基盤というものが崩れてきたことで、長野県において私が県知事になったわけで……。そうやって考えると、今のその漁協というものが、そういうことを漁協のみによって決めていくのではなく、もっと違うコミュニティーを作っていくことも必要かもしれません」。

天野「水口先生はブラックバス問題に限らず、一人一人、そこで生きている人たちに発言をもっとさせたら、こういうことは間違えないんだということをおっしゃってきたと思うんですね。全国の川の組合がありますよね。今、川の組合ではですね、組合長くらいは選挙で選ぶんですけど、総代も申し合せで選ぶ、理事も申し合わせで選ぶという所が多いんですよね。昔、青年団というものがありまして、青年団はその地域の老人を大切にするということをモットーとしていた。それで、青年会委員みたいなものがあって、その組織に漁業組合が作られていて、いまだに選挙もなにもやらないでいるんですね。だから、はっきり言ったら釣りもなにもしないけど、補償金をとるのに長けてる組合長がずっとやってるとか。非常に旧態依然とした組織であることは否めないと思うんです」。

水口「それで僕はね、十年来、漁業組合に入ろうと言ってるんです。自分が釣りをやってる所の漁業組合に入れば、同じようにその中に入っていけると」。

天野「それで、いろんな所でですね、私は言ってるんですけど……今、水口さんが言われたことだし、おそらく田中さんもニコルさんも発言されたと思うんですけど。そこで釣りをする人がもっと賢くなって、もっと考えて。もっと話す人である必要があると思うんです。自分達が10匹、100匹釣るということより、その川はどうなっているんだろうか、ということをきちんと考えて。発言して。で、自分が漁業組合の一員となって責任をちゃんともつということ。これは私が長いこと日本の内水面でやられなかったことじゃないかなというふうに思っているんですね。ブラックバスの問題は少し中途半端になりましたけど、今日はですね、水口さんの論敵である……論敵であり、一種の親友かもしれないですけど(笑)川那部さんがですね、おいでになりませんでしたので、このくらいのところにしておきまして。最後に今日は日本釣振興会の中央の方がいらっしゃっているので、お願いしたいのはですね。私たち少なくとも今日はこれだけの人間は日本の川を心配して集まりました。先ほど提案したことなんですけれども、日本釣振興会と全国内水面漁業協同組合連合会は、日本の川をどうするのか。ダムを少しでもなくして川をクリーンにできないのか、ということをよく議論していただきたいと思います。その中で、ブラックバス問題についても開かれた議論をきちんとしていただいて。じゃ、実際困っている所はどこで、どこではこういうふうにしようという決まりをですね、水口さんや川那部さんのような専門家がきちんと出ていって議論ができる場を日本釣振興会にぜひ作っていただきたいと思うんですが、どうでしょうか(会場拍手)」。
 
(注1)全内連=全国内水面漁業協同組合連合会の略称。「全内漁連」と呼ぶことが多い。

(注2)アメ、アメノウオ=紀伊半島、滋賀県、四国などのアマゴの地方名。滋賀県ではビワマスをアメノウオと呼ぶこともある。

(注3)和井内貞行=1858〜1922年。秋田県鹿角市十和田生まれ。1897年(明治30年)に鉱山を退職し、鉱山労働者の食生活向上のため、本格的に養魚事業に取り組む。自費で十和田湖にマスの孵化場を設立し、カワマスやヒメマスなどの十和田湖移入を行なった。1903年にヒメマスの稚魚5万尾を移入。以降、十和田湖のヒメマスは名産品となり、「われ幻の魚を見たり」というタイトルで映画化されるなど、その功績が讃えられている。

(注4)佐藤謙一郎=神奈川県第一区選出の衆議院議員(民主党)。平成13年3月13日に「ブラックバス等外来魚に関する質問主意書」を提出。質問主意書および答弁本文に関してはこちら(http://www.shugiin.go.jp/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/a151043.htm)を参照のこと。

(注5)ジストマ=温暖地方の低湿地に見られる吸虫類の一種。ほ乳類の肝臓や胆管に寄生するものを肝ジストマ(肝臓ジストマ、肝吸虫とも呼ばれる)、肺や肋膜に寄生するものを肺ジストマ(肺臓ジストマ、肺吸虫とも呼ばれる)と呼ぶ。肝ジストマはマメタニシ(巻貝)を第一中間宿主としてウグイ、コイ、フナ、マス類などの淡水魚が第二中間宿主となり、これらの魚を食べることによって人間に寄生する。肺ジストマの第一中間宿主はカワニナ(巻貝)で、サワガニやモズクガニを第二中間宿主として人間に寄生する。加熱処理で死滅するため、生食を避けることで予防できる。

(注6)日本住血吸虫=ほ乳類の血管内に寄生する吸虫類の一種。日本をはじめ中国、東南アジアにも分布し、風土病として知られる。ミヤイリガイを中間宿主とし、成長してセルカリアと呼ばれる状態になると水中を遊泳、ほ乳類の皮膚にとりついて経皮感染する。現在、日本では農作業の機械化、農薬や化学肥料の多用によってミヤイリガイが激減したこともあり、1972年からは発症が確認されていない。

(注7)アニサキス=本来、クジラやイルカなど海棲ほ乳類を終宿主とする寄生虫。サバ、アジ、スケトウダラ、イカなど多種類の海産魚介類を中間宿主とし、生食などによって幼虫が人の胃に入ると激しい腹痛や吐き気といったアニサキス症を起こす。日本では年間約2000例の症例が報告されているが、アニサキス自体は熱に弱く、50〜60℃なら数秒で死滅するため生食を避けることで予防が可能。

(注8)長野県内水面漁場管理委員会では、4月22日にブラックバスやブルーギルの再放流を禁止する委員会指示を多数決で決定。6月1日から施行される予定となっていた。委員会の組織に関しては長野県のホームページ内のこちら(http://www.pref.nagano.jp/nousei/engei/sosiki.htm)に掲載されている。なお、長野県においては独立した内水面漁場管理委員会事務局は置かず、農政部園芸特産課において内水面漁場管理委員会の事務の整理を行なっている。

(注9)マツクイムシ=一般的に「マツクイムシ病」あるいは「マツ材線虫病」と呼ばれる。マツクイムシという生物は存在せず、マツノザイセンチュウという線虫の一種がマツの中で増えてマツなど枯らしてしまう現象を指す。この線虫は北米原産で単体では他のマツへと移動できないが、マツを食べるカミキリムシの仲間、マツノマダラカミキリが媒体となっている。

●関連ホームページ一覧
 日本釣振興会 http://www.jsafishing.or.jp/
 全国内水面漁業協同組合連合会 http://www.naisuimen.or.jp/
 長野県庁 http://www.pref.nagano.jp/
 田中康夫オフィシャルサイト「ヤスキチ」 http://www.yasu-kichi.com/
 天野礼子オフィシャルサイト「あまご便り」 http://www.uranus.dti.ne.jp/~amago/
 財団法人C.W.ニコル・アファンの森財団 http://www.afannomori.com/
 東京水産大学 http://www.tokyo-u-fish.ac.jp/
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