滋賀県フィッシングボート協同組合 主催
第2回シンポジュウム
 「琵琶湖の現状」として開催された第2回シンポジウムだが、日本を代表するビッグレイクである霞ヶ浦・北浦の例を聞くことも、大きな意味を踏まえている。その「霞ヶ浦・北浦の現状」を伝えたのは、釣り人としてではなく、同湖水面利用調整委員副会長として参加された村田基さんだった。
 村田さんが話をとおして訴えたのは、釣り場のルール・マナー問題だった。「湖面の有効利用をするためのルールというのは、釣り人だけでなく漁師にもある。ゴミを落として帰る釣り人。ゴミと考えるなら、漁師の捨て網もゴミです」と語る。
 また、「平成2年のころがバスの最高漁獲高だったが、今は少ない。陸ッパリの人なら、1日中やって1尾釣れればイイくらいです。今はむしろ、コイが増えて、コイ師と漁師との間のトラブルがもっとも多いんです」と語った。
 バスの生存数が減った理由に、漁師が捕獲したことも原因であるが、「バスは自然にその個体数を減らしていきます。でもブルーギルは増え続けます。このことは、カスミの漁師さんはよく知ってらっしゃいます」と語った。「ピークのときは、年間で50万人の釣り人がカスミ・北浦に来ていた。でも、今ではその1/10です。釣り具、食事、ガソリンなどの諸経費を考えると、年間で50億円を消費していました。でも、それも1/10に減りました」とバス釣りの経済効果も語っていた。この件に関しては、野尻湖を例にとり、スモールマウスバスによる経済効果も唱えた。

 樋上佳秀さんは、自ら収集したデータと行政側から提出されているデータを基に話を進めた。捕獲された外来魚の漁獲高を見て「バスとブルーギルでは1:9の割合で捕獲されている」と、圧倒的にブルーギルの数が多いことを挙げた。しかし、ブルーギルが行政サイドから発表される統計で出てくることは稀

マナー問題を訴えた村田基さんの話は非常に説得力があり、霞ヶ浦水系のフィールドの例を挙げるなど、興味深いものが多かった

 

主催・進行役の樋上佳秀さんも熱弁された。同組合では、ダイバーによる山ノ下湾の湖底清掃なども行なっている

 

この写真は、シンポジュウム終了後、「琵琶湖環境整備100円募金」が行われたときのもの。これは同会議主催が以前から行ってることで、収益金は湖底のルアー、ラインの回収、釣り場のゴミ回収などに使用されている。詳細は同組合サイトで

 だという。この件に関して質問を受けた行政側の藤原さんは、「ブルーギルは水産物ではないため」と答えている。これは、「バスは水産物であって、ビワバスとして食されている。ブルーギルは水産物扱いではないため、そのデータにはでてきません」と加えている。
 このほか、樋上さんは行政が買い取りをしている外来魚の中に在来魚が混じっている可能性があったこと、そしてバスアングラーに対して漁港内のスペースを駐艇場として有償提供している職漁者の存在を指摘していた。
 アメリカからこのシンポジュウムに参加しているデイビッド・グリーン博士は、今回のシンポジウムにおいては意見を述べないオブザーバーとして参加していた。これまで、外来魚の捕獲調査には不透明な点も少なくなかったことから、琵琶湖フィッシングボート協同組合の依頼により公正な立場で外来魚の調査をはじめるという。行政サイドを代表していた藤原さんから「世界的にも極めて長い歴史をもつ琵琶湖に外来魚がいることをどう考えますか」という質問を受けたが、「バスが何を食べているのか、琵琶湖にはバスがいない方がいいのかなどということはわかりません。私が行なうのは調査であって、個人的な意見は尊重されない」と語り、「起こったしまったことより、これからどうするかに重点を置いた方がいい」と加えた。長年バスを研究してきた結果から、バスの成長率を考えると、少なくともバスの生息環境に関する調査には3年はかかるという。
 今回のシンポジウムの冒頭で、樋上さんが言った言葉がある。「Bringing everyone together at one table(双方の言い分を1ヶ所に集めよう)」だ。外来魚に対し肯定派・否定派の人たちが話し合う場所として、これからもこのようなミーティングは持たれるべきだろう。「琵琶湖の現状」というタイトルからすると、琵琶湖の外来魚だけに意見が集中したシンポジウムではあったが、非常に意味深いものだったのではないだろうか。