滋賀県フィッシングボート協同組合 主催
第2回シンポジュウム
 行政を代表している藤原光一さんからは「行政からの視点」ということで、OHPによって行政が行なった外来魚の調査データを基に話が進められた。さし網などで外来魚を捕らえたことを前提に、「バスの腹を割くとスジエビなどの琵琶湖の在来生物が出てきた」という。捕れるのはバスというよりむしろブルーギルの方がよく取れるらしい。加えて、スジエビとテナガエビの漁獲高の表を用いたデータの発表も行った。それによると、1975年以降は琵琶湖でははじめてオオクチバスの生息が確認され、そのころからスジエビとテナガエビの漁獲高が急激に減ってきたという。「平成5年あたりからはバスに代わって大量にブルーギルが増えはじめ、漁獲高に多大なる影響を与えたと考えられている」と述べた。
 さらに、琵琶湖固有種のワタカのデータも発表された。ワタカは基本的に草食である。1973年以前は、琵琶湖ではあまり目立っていなかった藻の増殖が、琵琶湖でバスが確認されたころから、ワタカが減り、藻が増えはじめたともいう。
 琵琶湖の固有種であり、水産上の重要種としてたびたび例にあげられるニゴロブナ(鮒寿司の原料となるフナ)の調査発表もされた。ニゴロブナの繁殖と生存について、3ヶ所でリサーチしたという。沖合い、砂底、アシ周辺の3ヶ所でリリースしたニゴロブナを採取して調査したところ、沖合いと砂底のエリアでは生存の確認がされたが、アシ周辺の生存は少なかったという。ニゴロブナはシャローのヨシ原で産卵をする。ニュアンス的には“シャローにいるバスがニゴロブナを食べている”といった感じだったが、琵琶湖沿岸のヨシ原の減少によるニゴロブナの減少もあると加えた。現在ではヨシ保護条例を作り、ヨシ原の再現にも取り組んでいるという。
 行政側が行なう今後の外来魚駆除事業予定として、ふ化したての外来魚を網ですくう、外来魚が産卵した卵を食べる魚を放流する、そして現在生息していると推測される3000 トンのバスを1250トンになるまで捕獲駆除するということだった。この1250トンというのは、先に触れた1974年ころ、琵琶湖でバスが確認されたころに予想されたバスの生息数だという。これは3カ年計画として行われ、3年間でバスを1250トン捕獲するという計画を発表した。

 
滋賀県漁連青年部会長の戸田直弘さんは、20年間続けてきた琵琶湖の職漁師の視点で琵琶湖の現状を語った。マリンスポーツや外

会場はホテル琵琶湖プラザが使用され、来場者は150名ほど。バスアングラーや報道関係者をはじめ、多くの人々が集まった

滋賀県農政水産部水産課の藤原光一さんは、専門的な内容をデータに基づいて語った

滋賀県漁連の戸田直弘さんは、他のシンポジュウムにも積極的に出席し、職漁者としての意見を述べている

これから行なわれる琵琶湖のバスの調査は、少なくとも3年は必要だと語るグリーン博士。それは、バスの成長度と関係しているという

来魚問題は、賛成派・否定派「双方の問題」だと訴えた。またルールを守ることが原則であり、職漁師にも網や機材、保護水面などのルールがあり、それを守ったうえで職漁をしてると主張している。「確かに、バス釣り人口が増えて何かが減っています。でも、今さら昔のことを言ってもしかたがない。ただ、琵琶湖に遊びに来たときは、(琵琶湖の)ルールを守る。間違ったことをしていたら、それを今からでも正していくことをやらなアカンと思います」と述べた。

 琵琶湖山ノ下湾でレンタルボート店を営んでいる寺田京二さんは、バス釣りで訪れるアングラーと接する機会が多い。現在、外来魚対策として検討されているリリース禁止に対して危機感をもっていると語った。寺田さんが1000人を対象に行なったアンケートによると、リリースが禁止になったら700人が『もう釣りに来ない』」と答えたそうだ。レンタルボートを営む寺田さんにとって、これは死活問題であり、安易なリリースの禁止はやめてほしいと訴えた。また、昨今はバスさえも減少傾向にある琵琶湖の環境を懸念していると語り、「昨日も漁師さんがアミに魚が掛かっとるから、見においでと言われた。行ってみると、ブルーギルが50kgくらい入ってました。その中にバスは1匹。これを見たときに、琵琶湖はなんと寂しい湖になってしまったんやと思いました」。バスの生息が確認される以前から琵琶湖を見てきた寺田さんは、もはや外来魚だけの問題ではなく、琵琶湖は「昔のような活気がなくなった」と述べた。 
 また、寺田さんは、3月まで1キロ150円で買い取られていた外来魚が、4月から350円に値上がりしていることを指摘した。この230%の値上がりは、普段の生活ではあまり聞かない。寺田さんによると、買い取りは京都府が行なっているらしく、滋賀県が350円を京都府に支払って買い取り駆除が行われているそうだ。今までの捕獲データからすると、3年を要しても行政が思っているほど捕獲できないことを指摘し、もし目標漁獲高に達しなかった場合、さらに年数を増やし、捕り続けるのかとの疑問を述べた。仮に3年間で1000トンを捕獲したとすると、3億5000万円の税金を使用したことになる。
 また、職漁者が捕獲した外来魚に対しては買い取り制度があることに対し、一般の釣り人にはそれがないことをつけ加え、一般の釣り人からの釣り上げた外来魚の買い取りがないことを指摘した。