「日本のバスフィッシングシーンでもっと精力的!」と豪語するHIYOKO BRAND、津波ルアーズ、GAUDIを中心に、昨年、大阪はミナミでその産声を上げたBASHING BASSHING SHOW。チマタでは“ウワサの裏フィッシングショー”といわれ、ナゾのベールに隠された部分が多かった。が、しかし、彼らはまたしてもやってくれた。ナント、今年は東京にやって来たのだッ!そのウワサのBASHING BASSING SHOW 2002を調査するために、basswave スタッフは東京都渋谷区恵比寿にあるCLUB MILKに潜入したのだった……。
 

あの日から早1年……
 
  昨年、大阪のフィッシングショー(以下:Fショー)に出向いた際、知人から1枚のチラシを渡された。それは、大阪ミナミにある心斎橋のライブハウスでBASHING BASSING SHOW (以下:バッシングショー)なるものが開催される、というものだった。デスメタル野郎として密かに有名(?)な私に渡されたチラシだったの で、俗にいう“ヘビメタ系イベント”か何かかと思っていた……。「まぁ、といあえずポケットにしまって……」とFショーの取材を進行させていった。翌日に別の仕事が入っていたこともあり、そそくさと新幹線に乗って東京に帰ることにしたのだが、そのときふとチラシのことを思い出して新幹線の中で読み返してみると、ナント、ハンドメイド・ルアービルダーによるオリジナル・Fショーのフライヤーだったのだ!しかし、それはただの“ルアー見本市”ではなく、「バンドのライブも一緒にやっちゃえ!」という、画期的イベントだったのである。
 「仕事をサボってでも心斎橋に行くべきだった……」と後悔し続けて早1年。今年もFショーの季節がやってきた。2月9日。私は、幕張メッセで開催される国際つり博2002の取材が入っていた。開催数日前、インターネットを見ていると、BASHING BASSING SHOW 2002が東京で開催されるという情報を発見!しかも、開催日は2月9日……。どちらに行くべきか!? 迷わず、バッシングショーに行くことにした。


「『バスフィッシング + ファッション + ミュージック』が、オレらのねらいやねん」津波ルアーズ 元木正実
 
 バッシングショーについての開催告知は、HIYOKO BRANDのウェブサイトに詳しく掲載されていた。出展ルアービルダーやファションデザイナー、出演バンドやその他イベントに参加する人たちのリストが掲載されていたのだ。見た感じ、今年のバッシングショーは昨年のイベントよりパワーアップしている。これは「来場するしかない!」と思わせるコンテンツだったのだ。
 場所は、地下鉄恵比寿駅の出口を出てわずか3分のところにあるCLUB MILK。地下1階と2階がライブハウスになっている。ライブハウスにはメタル系のライブを見るために頻繁に通っているが、MILKに来るのは今回がはじめて。地下2階建てのライブハウスって……と考えながら入ってみると、なるほど、地下1階スペースがライブスペースで、地下2階部分がルアーの展示スペースとして使用されていた。ライブハウスとしてはアベレージのフロアーサイズで、ライブスペースには100人も入れば苦しいほどの広さ。もしメタル野郎たちがスラムダンス(昔でいうモッシュ)でもやったら、30人が限度の広さだ。らせん状の階段を下りると、そこには壁沿いに自分のルアーを展示するルアービルダーたちがいた。GAUDIの森田さんを中心に、全国のビルダーたちが集結していたのだった。
 このイベントがFショーと異なっているのは、出展者たちがこの場でルアーを販売していることだろう。確かに、東京にはハンドメイドのルアーを販売しているショップもあるが、その数はあまり多いとはいえない。また「名前は知っているが、実物を見たことがない」などといった来場者も多くいた。そんな彼らが憧れのルアーを目にすることができ、そのルアーデザイナーと話すことができ、さらにルアーはで購入できるとなると、このバッシングショーの重要性は非常に高いといっていいだろう。
 面白いことに、ルアービルダーはプラグメーカーだけではなかった。バスフィッシング専門誌BASS WORLDで「Academic Lake 」を連載中の小川健太郎さんは、自らがプロデュースするSIN-ZO BAIT (ソフトプラスチック・ベイト)のブースを構えていた。その他、バスフィッシングをモチーフに「バスとファッション」を融合させたmadanglerやSUSPEND、Pribait、ライギョ用ラットをリリースしているRATTYTWISTERもバッシングショーに参加していた。私は当初、このイベントはトップウォーター系ルアービルダーたちのイベントだと思っていたが、そうではなさそうなのだ。
 「『バス釣り界が沈んできてるから、どうしよう』ってみんな言うやんか。で、そうやって言うヤツが何をやったかっていうと、何もせんやん。それなら、オレらで何かしようってことで、オレ(HIYOKO BRAND山科さん)と元木さん(津波ルアーズ)と森田さん(GAUDI)で意見が合った。それで去年、試しにやってみた」と山科さんは語りはじめた。
 「元々、オレがバンドやってて、それを見に来た山科が影響受けたって部分もある」と元木さんが加える。「オレの中には、バス釣り……というか、アングラーは、スケーターとかサーファーと一緒の方向性であってもエエと思うんよ。スケーターって、スケボーっていうアイテムがあって、ストリート系のファションがあって、スケーターミュージックって呼ばれるジャンルの音楽もあって、それで1つのスケーター・シーンになってるワケやんか。オレらはそれをバス釣りでもできると思う。アイテムとしてルアーがあるし、ファッション的に言うなら、街で着てもおかしくないTシャツとか作ってる。今回は、madanglerとかSUSPEND、Pribaitみたいなバスとファッションを合わせたデザインを出している人たちもバッシングショーに参加してくれてる。音楽としては、オレら(津波)もライブするし、いろんなジャンルの人たちが出てくれる」。
 森田さんは、「こういうバス釣りの楽しみ方もあってエエとちゃうの、って思うよね。大会とか出たい人は出てもエエし。ただ、それが全部じゃないから、バス釣りの幅が広がるんやな。巷では『バスは害漁です』みたいに決めつけられてるけど、こんなイベントが大きくなっていってバスが世間的に認められるようになったら、それはそれでエエやろし」と言う。
 「大きな工場あって、“大量生産できるメーカーにはないパワー”がオレらインディーにはあると思いますね」と山科は言った。「別にトップだけ作ってるブランドじゃなくてもイイんよ。小川クンみたいなソフトベイトでもエエし、服のデザイナーでもエエ。ヘラブナのエサを作ってる小さなブランドがあれば、オレらと一緒にイベントやったらエエんよ。小さいながらもガンバッてアピールすることろに、このイベントの意味があると思う。実際、来年は参加ブランドがメチャメチャ増えたら、ビッグサイトでやってるかもしれん」。というと、すぐさま森田さんが「ムチャ言うたらアカンやろ……」とツッコミを入れていた。サスガ関西人である(笑)。
 確かに、このイベントは楽しかった。異種ブランドが一斉に集結したという意味でも見るものが多いのだが、イベントとしてはルアービルダーによる公開ペインティング、森田さんによるGAUDI生削り、小川さんによるデカバス理論セミナー、大念寺さん(ヘアデザイナー)による公開ヘアカットショー、そして3バンドによるライブも行われ、来場者を飽きさせないのだ。イベントは午後3時オープンだったが、クローズの午後9時まで充分に楽しめる内容だった。
 「ぶらっと立ち寄っただけ」という吉田幸二さんに話を聞いてみると、「別にFショーを批判するわけじゃないけど、どっちが面白いイベントか?どっちからバス釣りに対するパワーをもらえるか?って聞かれたら、バッシングショーだよなぁ。やっぱり、『何か新しいことを自分たちでやろう!』としているヤツらのエネルギーってスゴイよ。それが充分に伝わるから、オレも『立ち寄っただけ』って言ったけど、エネルギーをもらいにきたって言ってもおかしくない。またさぁ、Fショーと同じ日に開催するってのがいいじゃん。オレは、そうやって頑張ってるヤツらを応援したいしね」と言い、ビールの入ったグラスに口をつけた。
 今年、このBASHING BASSING SHOW を知らなかった人、行けなかった人、興味が少しは出た人は、来年は足を運んだ方がいいかもしれない。新しいバスフィッシングの概念に行き着くだろう。

 
主催者の1つでもあるHIYOKO BRAND。ショーがはじまって数時間で一部のルアーが売り切れになったとか……
唯一東京からのルアービルダーとして参加したSWAB(正面)。「Tシャツがカワイイ」と評判だった
無知な私は昔、AKASHI BRAND(手前)は、兵庫県明石市のブランドかと思っていたら、ルアーデザイナーの方のお名前が明石さんだった
福井県からは、WILL LUREが出展。「たくさんの方から意見を聞いて、ルアー作りに反映したいですね」と語った GAUDIの森田さんは、今回イベントとして「ガウディ生製作」を披露していた。ファン必見のカービング・テクニックは、森田さんならではの職人芸である
大阪のTEATブース(右)と福岡のPRAGMATIC。TEATをTシャツは、私も着てます。ちょっとエッチぃところがキモ。また、PRAGMATICの山口さんは、「東京のファンは熱心」と、逆に来場者を観察してしまったそうだ
福岡のBASS BOMBは、ルアーの展示数が今回一番多かった。シャレの効いたネーミングやルアーが多いので、見ているだけでも楽しい
こちらも当日大人気だった津波ルアーズ。今回ルアービルダーの元木さんは、イベントとしてルアーペインティングにも参加して、ライブもやってと大忙し
Tシャツを持っているのは、madanglerの島野さん。ストリート系デザイン+バスフィッシングがmadanglerのコンセプトだとか。その後ろで肘を付いているのが、RATTYTWISTERの高井さん(ちょっと見にくいが……)。この日は、自分のルアーを1つしか持参しなかったそうだ。なぜだ!?
SIN-ZO BAITの小川さん。今回唯一、ソフトベイト・デザイナーとして出展していた。また、小川さんは「デカバス理論」のセミナーを担当。すごく興味をソソる内容に、来場者も「あの人は、学者レベルでバスのことを考えてますね」と言っていた。が、小川さんは大学で魚類学を専攻したらしい
バンドのライブは、「33」、「STROBO」、「津波」の順で行われた。個人的にはSTROBOがよかったが、他のバンドも実に個性的。ぜひまた楽しみたい
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