バスフィッシングと出会って20年あまり。
すっかりオッサンになったかつての釣り好き少年が、
これまでに出会ったさまざまなことを
つれづれ〜っと書いていきます。
ご意見、ご感想、叱咤激励はこちらまでよろしくね。


TEXT by Jun Sugawara

BEAT 8  投稿ボードのご意見について(2003/5/2)

さて、今回は投稿ボードに寄せられたご意見に対する私なりの意見を書こうと思います。
いっぺんに全部は長くなってしまうので、まずは、秀さんからのご意見。
これも全文を掲載すると長くなってしまうので、一部を抜粋します。

「最近害来魚駆逐のような方向へ行っているような感じに思います
そういう感覚・思想って、日本国内の外国人排除!って聞こえるのですけど
詳しいことは知りませんが すでに琵琶湖で20数年生きているのだから
共存とか品種改良とかバスの食べ方とかに何故力を入れないのでしょうね」


たしかに、外国産だからダメという判断基準は危険だと思いますし、
外国産ということだけを基準にするなら、おかしなことはたくさんあります。
たとえば、日本にはさまざまな外国産の動物が輸入されています。
水産物に限っても、シジミの稚貝やワカサギの卵、
真珠養殖に使われるイケチョウガイなどが、中国や台湾から移殖されています。
琵琶湖ではフランス産のアシも試験的に移植されていました。
実は、琵琶湖のバスも食用として活用されたことがあります。
かつては学校給食の食材に使われたり、高級フランス料理店でも扱っていたほどです。
ただし、バスを水産物として流通させるのは非常に難しいと思います。
まず第一に、水産物として流通させるためには、
サケのように、加工に適したサイズを大量に水揚げする必要があります。
15年前ならまだしも、現在の琵琶湖で流通に必要な大量の水揚げは無理でしょう。
少なくとも自然の水系での水揚げという意味では、バスという魚は流通に向いていないといえます。
流通において、もっとも理想的なのは養殖個体です。
同じようなサイズを定期的に、しかも大量に流通させることができるわけですから。
ただし、バスという魚は食用としての養殖効率があまりよくないようです。
バスの故郷アメリカでさえ、養殖されている淡水魚としてポピュラーなのは、
サケ・マス類とナマズです。
これは魚自体の味だけでなく、養殖コストというものが鍵になっています。
裏を返せば、バスの場合はダイレクトに食用として養殖・流通させるより、
ゲームフィッシュとして利用したほうが経済効果が大きいという事情もあるわけです。
もちろん、アメリカ人は日本人ほど魚を食べないという文化的な背景も存在します。
なので、アメリカにならえ、というつもりはありませんので念のため。
第二に、水質の問題です。
私は基本的に魚を食べるのが好きです。
アメリカではラージマウスバス、スモールマウスバス、ブルーギル、アメリカナマズ、
クラッピー、ウォールアイ……ほかにはトラウト類なども食べたことがあります。
勢いでザリガニとアリゲーターも食べておきました。
日本の魚たちも、たいがいは食べてきたつもりです。
ですが、バスに限らず近年の琵琶湖(特に南湖)の魚を食べたいとは思いません。
特に夏場の南湖は、誰の目から見ても水質がいいとは思えませんから。

「何故?入漁料制って話しがあまり聞こえないのですかね」


これに関しては、法律上の問題が絡んできます。
現状の法律において、バスアングラーから入漁料(遊漁料)を徴収できるのは、
芦ノ湖や河口湖など、バスを漁業権魚種認定している場所に限られます。
また、河口湖では漁協に支払う遊漁料だけでなく、自治体が「法定外目的税」を導入しています。
この河口湖の例を紹介したテレビ番組で、
あるタレントさんが「釣りぐらいタダでさせてくれよ」と言っていました。
しかし、私は釣りがタダで楽しめる時代は終わったと思っています。
釣りという行為は、間違いなくフィールドに負担をかけます。
その負担を少しでも軽減するために利用してくれるのであれば、「法定外目的税」にも賛成です。
ただし、日本における遊漁料制度というのは、少々時代遅れに感じています。
たとえば、1988年における河口湖漁協の遊漁料収入は2万6000円だったそうです。
ところが、河口湖で1989年にバスが漁業権魚種認定になって以降、
いわゆるブームの絶頂期だった1995年度には遊漁料収入が2億円を越えたそうです。
ただし……ここからが重要なのですが、
水産法によると、このお金は漁協の組合員に分配したりできないことになっています。
つまり、現状の法律では、たとえバスで遊漁料収入が上がっても、
組合員さんの収入は上がらないんです。
このあたりの事柄を含んだ「第5種共同漁業権」に関する法律というのは、
昭和23年、つまり55年も前の漁業制度改正の際に生まれたものです。
ちなみにこの年は、GHQから国民の祝日に国旗掲揚を許すという通告が出された年です。
日本で初めてボールペンが発売され、NHKがテレビ公開実験をはじめたのもこの年のこと。
時代遅れに感じるのも仕方がないといえるかもしれません。
ちなみに、アメリカの場合は「遊漁料」にあたるものは各州の自治体が徴収しています。
「遊漁料」は「ライセンス」と呼ばれていますが、日本語の「免許」とは違い、
お金さえ出せば誰もが入手できます。
日本の「遊漁料」と決定的に異なるのは、それが100%税金だということ、
そして買わずに釣りをした場合の罰則の厳しさです。
日本の場合、監視員に見つかった際には、いわゆる「現場売り」の割高な券を買えばいいのですが、
アメリカの場合はきっちりと高額な罰金が請求されます。
監視の目も厳しく、腰に拳銃をブラさげた州の監視員が頻繁に湖上を回っています。
その代わり、ライセンス収入は環境保護などのために使われていますし、
なにしろ税金ですから、無駄に使われることのないよう国民が監視しています。
日本の場合「遊漁料」は各地区の漁協が徴収していて、
その収入は「第5種共同漁業権」で認定された魚種の増殖に充当されます。
各都道府県の内水面漁場管理委員がその増殖目標を作り、これに各知事がハンコをつけば決定です。
つまり、魚の放流がせいぜいで、アメリカのように環境保護のために使用されることはないわけです。
なお、琵琶湖や霞ヶ浦などは海区扱いとなるため、
現在の法律では釣り人から「遊漁料」を徴収することはできません。
データによると、琵琶湖には年間でのべ70万人のバスアングラーが訪れるそうです。
単純計算ですが、1人から1日1000円ずつ徴収すると7億円。
2日間のトーナメントで500人が参加したとすると、これだけで100万円。
たとえば、滋賀県は琵琶湖の内湖のひとつである野田沼で、
漁場環境の修復に向けた試験事業を来年度からスタートするそうです。
徴収されたお金がこういった事業や在来種の増殖、環境保護に使われるのであれば、
釣り人も文句はいえないですし、まさに理想的なのではないでしょうか。
少なくとも、現在行なわれている駆除事業よりは、はるかに建設的だと思います。
琵琶湖のような規模をもつ水系で特定の魚種だけを完全に駆除するなど、
物理的に不可能だと思っていますので。
在来種に負担をかけずに外来魚だけを駆除する方法があるなら、ぜひ聞いてみたいものです。

……やっぱり長くなってしまいましたね(汗)。
というワケで、続きはまた後日。