バスフィッシングと出会って20年あまり。
すっかりオッサンになったかつての釣り好き少年が、
これまでに出会ったさまざまなことを
つれづれ〜っと書いていきます。
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TEXT by Jun Sugawara

BEAT 6  おサカナ観察(2003/4/24)

私はガキのころから釣りが大好きだが、魚という生き物自体が好きだったりする。
いや、魚に限らずさまざまな生き物が好き、というのが正直なところだ。
その興味の対象はヘビやムシにまで及んでおり、
さまざまな生き物を捕まえて帰っては母親に叱られたものである。
最近はペット系のほのぼの動物番組が多いのだが、
私がガキのころは、「恐怖!世界の毒蛇」といったアオリ系番組も多く、
ビデオなどなかった時代なので食い入るように観ていたものだ。
なので、釣りザオを持っていなくても水辺で魚を見れば心が踊るし、
水族館でノタ〜ッと泳いでいる魚を眺めるのも大好きだったりする。
そんな私にとって、釣り以外の趣味のひとつがアクアリウムだ。
アクアリウムというと、なんとなくおシャレな響きがあるのだが、
かつて、熱帯魚といえば暗黒系オタク趣味の代表であった。
最近は魚の飼育というよりインテリア的な価値観が見い出されることもあり、
さらに“癒し系”という意味でも、ずいぶんイメージがアップしている。
事実、アクアリウムにはストレスを解消してくれるリラクゼーション効果があり、
これは医学的にも実証されているらしい。
ホントかどうかは怪しいが、
なんとアルツハイマー症の予防にも効果があるといわれているそうだ。
とはいえ、私が魚を飼っている理由は「魚が好きだから」に尽きる。
たしかにボーッと水槽を眺めているのはリラックス気分満点なのだが、
実際には定期的に水換えをしたり、フィルターの掃除をしたりと、苦労も多い。
さまざまなトラブルに見舞われたことも多く、ヒルが大発生した経験もあり、
リラクゼーションどころか、多大なストレスを与えてくれることも少なくないのだ。
というワケで、単にリラックスしたいだけの方は水族館やショップだけで済ますほうが賢明だろう。
しかし、苦労が多い反面、水槽は私にいろいろなことを教えてくれる。
たとえば、ろ過。
ろ過というのは、たとえばスポンジなどで汚れを濾しとる“物理的ろ過”だけではなく、
スポンジやろ材に定着した微小なバクテリアが汚れを食べてくれる“生物的ろ過”が必要なこと。
なので、ろ過槽のスポンジは、水道水でジャブジャブ洗ってはいけない。
殺菌力の高い塩素が残留している可能性のある水道水は、このバクテリアを殺してしまうのだ。
こういったコトはアクアリウム愛好家にとっては常識中の常識なのだが、
ビギナーのうちはあらゆるコトが新鮮で楽しいものなのだ。
そして、このようなコトを覚えるたびに、
「バクテリアを殺してしまう水を飲んでいる私たちは大丈夫なのか?」
とか、
「そのほとんどが垂直護岸で囲まれた霞ヶ浦の自浄作用は大丈夫なのか?」
などなど、フィールドにも思いが膨らむ。
残念ながら自分の目で見たワケではないが、かつての霞ヶ浦や琵琶湖南湖などは、
湖畔すべてが莫大なろ過能力をもっていたのではないかと思う。
「見渡す限りのアシ原で、岸から水辺に辿り着くのが難しかった」といわれる琵琶湖南湖。
「透明度が高く、ほぼ全域に水草が繁茂していた」といわれる霞ヶ浦。
すでに30代半ばのオッサンである私にとってさえ、
こういった話はすでに「とうの昔」の話となってしまっているのだ。
とかく外来魚の悪口ばかりがクローズアップされる日本のフィールド。
しかし、現実は外来魚以前に考えなくてはならない問題が山積みとなっているのだ。
「昔は琵琶湖や霞ヶ浦にも魚がいたんだよ……」。
私がいつか、そんなコトをガキどもに話す時代が来ないという保証などない。
普段、釣り場でしか魚に接する機会がないというアナタには、
ぜひアクアリウムの世界にも触れてみてもらいたい。
これまでとは少し違った視点で水や水草、おサカナについて考えるいい機会になるはずだ。

魚だけでなく、水草や流木、石などをレイアウトすると自然な雰囲気が出せて楽しい。アクアリウム、おススメですぞっ
●ちょっと宣伝になってしまうが、私はアクアリウムの専門誌「アクア・ウェーブ」でもコラムを連載中。アクアリウム関連の本は、森文俊さん率いる「ピーシーズ」でどうぞ!