バスフィッシングと出会って20年あまり。
すっかりオッサンになったかつての釣り好き少年が、
これまでに出会ったさまざまなことを
つれづれ〜っと書いていきます。
ご意見、ご感想、叱咤激励はこちらまでよろしくね。


TEXT by Jun Sugawara

BEAT 33  小さな侵略者 その2(2008/5/10)

さて、続きである。

アメリカで脅威となっているクワッガガイとゼブラマッセル。
「我が国においても、内水面の遊漁そのものを見直すべき事態が発生している」と書いたが、
日本でもクワッガガイとゼブラマッセルに近似した外来の貝が生息域を拡大しているのだ。

その貝とは、バスやブルーギルなどと同じく特定外来生物に指定されている、
カワヒバリガイ(Limnoperna fortunei)のことである。
basswaveのTOP NEWSでもお伝えしているが、
木曽三川のひとつ、揖斐川でカワヒバリガイが初めて発見されたのは1990年のこと。
1991年には西の湖で確認され、琵琶湖や淀川水系でも生息が確認された。

その後はまたたくまに生息域を拡大、
2006年秋には愛知県越戸ダムでの大量斃死が悪臭と水質悪化を招いたという。
現在ではさらに生息域が拡大しており、
バスフィッシャーマンになじみ深い霞ヶ浦でもすでに確認されている。

実はこのカワヒバリガイについては、ずいぶん前からその存在を知っていた。
もう6〜7年前の話だが、最初に教えてくれたのは何度か紹介している森文俊さん。
「これ、バスよりも厄介だぞ」と言いつつ、撮影用に入手したという個体を見せてくれたのだ。
森さんから話を聞いて、その後自分でもいろいろ調べたりしたのだが、
正直なところ「これはあっという間に全国に拡散するだろうなぁ」と思った。
なにしろ琵琶湖産のアユは全国の河川に放流されている。
アユと一緒に琵琶湖の水も全国に放流されているのだから、
これに幼生が混じっていたとしてもなんら不思議はない。

さらにカワヒバリガイが中国産のシジミに混入していたという説が正しいのであれば、
大量に輸入され続けているのだから琵琶湖や木曽川を経由するまでもない。
事実、霞ヶ浦水系では2003年には外来のシジミが確認されており、
食用として輸入されたシジミがなんらかの形で放流されたと考えるのが妥当だろう。

で、実はこの手の軟体動物に関する研究者としてとても有名なのが、
琵琶湖博物館の中井克樹さんである。
中井さんと初めてお会いしたのは2003年6月に琵琶湖博物館で開催されたシンポジウム、
「外来魚のリリース禁止―琵琶湖ルールを考える」の休憩時間。
自己紹介したところ、光栄なことにbasswaveをご覧になったことがあるそうな。
ただ、このとき中井さんと話したのはバスではなく、カワヒバリガイについて。
お忙しい中だったので長時間お話を聞けずにとても残念だったが、
「バスのシンポなのに変なヤツだ」と思われたかもしれない(笑)
わずかな時間だったが、懇切丁寧に教えていただいた中井さんに感謝である。

このころのカワヒバリガイは木曽川と琵琶湖・淀川水系で確認されていただけだが、
この水域だけでもあっという間に個体数が増加した。
カワヒバリガイは条件が揃えば爆発的に殖えてしまううえに、
浮遊幼生期をもつので、水流にのって広範囲に拡散してしまう。
中井さんも「駆除は難しいでしょうね」とおっしゃっていたが、
すでに移入し、定着してしまった水域での完全な駆除は不可能だといえるだろう。

そもそも中国産のシジミなどは食用として大量に輸入されている。
このシジミにカワヒバリガイが付着していたならば、輸入者は外来生物法違反になるはず。
……
だが、この件で検挙されたという話は聞いたことがない。
抗生物質や農薬、ノロウィルスなど直接人体に影響を与えるものは検査されているらしいが、
微細な付着物や幼体までは検査しきれない……ということなのだろう。

とはいえ、これらの検査を管轄しているのは厚生労働省。
外来生物法を所管するのは環境省と農林水産省だが、
この件について両省が調査したという話も聞いたことがない。
せいぜい輸入シジミの産地偽装をした業者に関して、
農林水産省がJAS法に基づく指示処分を行なった程度だろう。

ようするに、現在でもカワヒバリガイは外国からやってきているし、
琵琶湖などから他の水域へと幼生が運ばれて続けている可能性が高いというワケだ。
そして、それらに対する対策はほとんどなされていないのが日本の現状だといえる。
いったい、なんのための外来生物法なのか……と思わずにいられない。

……やっぱり長くなっちゃったなぁ。
ということで、続きは次回。


(basswaveからのお知らせ)

このコーナーでは、みなさんのご意見を随時募集中です。
いただいたご意見はこのコーナーでご紹介しますので、忌憚なきご意見をお寄せください。
ご意見はcontact@basswave.jpまで。
このところスパムメールが膨大に送られておりますので、ご面倒ではございますが、
メールのタイトルを「OFFBEAT BASSWAVEについて」
としてお送りください。
匿名希望の方はその旨をご明記のうえ、ハンドルネームなどをお知らせください。
なお、趣旨に沿わないご意見や特定の企業、個人の誹謗や中傷などは紹介できません。