バスフィッシングと出会って20年あまり。 すっかりオッサンになったかつての釣り好き少年が、 これまでに出会ったさまざまなことを つれづれ〜っと書いていきます。 ご意見、ご感想、叱咤激励はこちらまでよろしくね。 TEXT by Jun Sugawara
BEAT 21 コイヘルペスウィルス問題(2004/1/21) すでにTOP NEWSでもお伝えしているが、 霞ヶ浦水系で養殖されているコイの全量処分が、法律に基づく茨城県の命令によってはじまった。 霞ヶ浦や北浦の養殖業者たちはすべてが廃業の意思を固めているそうで、 名物ともいえるコイの養殖は昭和40年に区画漁業権として免許されて以来、 約40年という歴史の幕を閉じることになる。 霞ヶ浦でバスフィッシングをしている人なら、その多くが養殖イケスを見たことがあるはずだ。 ひょっとすると、ボートなどで近づいて「コラァ!」と怒られた経験のある人もいるかもしれない。 私は10年ほど前、W.B.S.がスタートして間もないころに、 イケスのそばで取材をしていた際に年輩の養殖業者の方と話をしたことがある。 当時のW.B.S.ルールではイケスの網へのキャストは禁じていたものの、 網のない小屋下などでの釣りは認められていたのだ。 「おう、釣れっかぁ?」と声をかけてくれたそのその方はバスフィッシングには比較的好意的で、 コイ養殖に関するいろいろな話を聞かせてくれた。 「若い頃はイケスの小屋で女性と●×したもんだ」という話には爆笑してしまったが、 やはり網にルアーを引っ掛けるトラブルがあると教えてくれた。 特別親しくなったというわけではないのでこの方とはこれっきりだが、 名物ともいえる鯉の養殖がなくなると聞き、寂しさと同時に当時の会話を思い出した。 さて、大騒ぎとなっているコイヘルペスウィルス(KHV)だが、 この影響は霞ヶ浦や北浦の養殖業者だけにとどまらないだろう。 農林水産省のホームページで調べてみたところ、現在のところわかっているのは下記のとおりだ。 ●マゴイとニシキゴイに発症する病気で、死亡率が高く有効な治療法はない。 ●感染したコイから水を介する接触により他のコイに感染する。 ●KHVは30℃以上で増殖することができないため、ヒトでは感染が成立しない。このため、 感染したコイの肉を食べても人体に影響はない。 現在のところ人体への影響がないとされているためBSEほどの騒ぎにはなっていないが、 恐ろしいのは、すでに全国いたる所で陽性のコイが発見されていることだ。 茨城県では持続的養殖生産確保法に基づいてコイの処分命令を出したが、 これだけでKHV問題が終わったわけではないのは誰の目にも明らかである。 バスフィッシングしかしない人にとってはピンと来ないかもしれないが、 コイといえば我が国を代表する釣りのターゲットであり、人気も高い。 それだけに、全国各地の河川、湖沼での放流も非常に盛んだ。 なにしろ、昨年の「琵琶湖レジャー利用適正化条例」(いわゆるリリ禁条例ね)の式典では、 国松県知事が、わざわざ子供たちと一緒にコイの稚魚約500匹を放流しているほどなのだ。 ちなみに、昨年11月に琵琶湖で大量斃死したコイも、その一部で陽性という検査結果が出ている。 すでに琵琶湖にはKHVがまん延していると考えるのが妥当だろう。 こうなると気になるのが、琵琶湖産アユの放流だ。 昨年12月18日付の「ゼゼラノート」では「滋賀県あゆ苗検査条例」について、 興味深い内容が紹介されている。 これによると、アユの販売に関する検査基準が「雑魚、えび等の混入率が0.5パーセント未満」 と記されていることがわかるのだ。 放流用のアユに他魚が混入していることは、 全国の河川にワタカやハスといった魚種が生息していることからも容易に想像ができる。 問題は、この混入した「雑魚」の中に、コイが混じる可能性があることだ。 さらにいえば、KHVは水を介して他のコイに感染するのだから、水さえも危ないといえるだろう。 KHVの問題は、霞ヶ浦や北浦の養殖業者どころか、コイだけにとどまらないのだ。 バスやブルーギルばかりが問題視される昨今だが、 そろそろ内水面の遊漁そのもののあり方を根本的に考えなくてはならないのではないだろうか。 そして、私たちバスアングラーも、この問題と無関係ではないことを忘れてはならない。