バスフィッシングと出会って20年あまり。
すっかりオッサンになったかつての釣り好き少年が、
これまでに出会ったさまざまなことを
つれづれ〜っと書いていきます。
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TEXT by Jun Sugawara

BEAT 16  秋田県のイベント「八郎大好き、守ろうフェスティバル」(2003/9/4)

夏休みも終盤となる8月24日、秋田県で「八郎大好き、守ろうフェスティバル」が開催された。
今年の4月1日から、秋田県内では「内水面漁場調整規則委員会指示」という規則によって、
外来魚(オオクチバス、コクチバス、ブルーギル)のキャッチ&リリースが禁止となった。
ちなみに、この委員会指示を守らなかった場合は1年以下の懲役(!)あるいは50万円以下の罰金。
魚釣りしてて魚を再放流したら懲役刑なんて、はっきり言ってコワすぎである。
そう思ったアングラーは非常に多かったようで、この指示以降、八郎湖の釣り人は激減したという。
「八郎湖守ろう協議会」の藤井博一会長によると、
今年のゴールデンウィークの人出は昨年の1/5にまで落ち込んだという。
「八郎大好き、守ろうフェスティバル」は、「八郎湖守ろう協議会」が、
将来のリリース禁止解除を目指す活動の一環として開催したものだ。
このイベントでは有志のアングラーによるゴミ拾いや、
清水國明さんのミュージカルバトルなどが開催されたが、目玉となったのはパネルディスカッション。
パネルディスカッションには地元の漁業者や行政担当者、学者や著名アングラーなどが参加し、
八郎湖の現状やバス釣りに関するさまざまな意見が交わされた。
興味深かったのは、山梨大学教授で理学博士である池田清彦さんの基調講演である。
詳細な論旨は「ゼゼラノート」に掲載されているのでぜひそちらをご覧いただきたいが、
池田さんは以下のようなことを話していた。
●生物多様性の議論の根本には『人間は関係なく自然そのままを残すべき』という意見と『人間の生活を守るために自然を守ろう』という意見がある。最近は前者の意見を支持する学者が増えているが、これは人の手が入っていない自然があって成り立つ話。人の手が入りまくってしまった場所がほとんどの日本では、自然の残しようがない。
●「外来種は悪」のように言われることが多いが、日本の生物はほとんどが大陸から渡ってきた外来種。人間だって外来種だし、コメだってイチョウだって外来種。元々日本にいなかった生物が入ってきたことによって日本の生態系は進化してきたのに、外来種が一切ダメでは進化が止まってしまう。『人間が入れたのはダメ』という人もいるが、台風で自然に飛ばされてきたチョウチョが害虫になっても『自然だからしょうがない』とはならないはず。外来種を否定するのではなく、自然との調和を考えるべき。
●たいていの外来種は、一時的に増えても落ち着いてしまうパターンが多い。アメリカシロヒトリやセイタカアワダチソウもかつて騒がれたが、最近ではあまり見られなくなった。ブラックバスがどうなるかはわからないが、まずはきちんと調査するべき。
●簡単に『駆除』というが、魚のように卵を多く産む生物は、なまじ駆除すると反動によって増えてしまう可能性もある。そのためにも科学的な調査は必要だし、科学的な調査をしたうえでどうするかを考えなくてはダメ。もっとも、八郎湖のように(大規模な干拓や淡水化によって)すでに自然の生態系が失われている場所の場合、個人的には外来魚がいてもしょうがないと思う。
●バスがいなくなったら、バスによってもたらされるお金や、バス釣りによってもたらされる楽しみもなくなるというデメリットがある。そのようなことも充分考慮しなくてはいけない。そういうデメリットがどれほどあるのかを考えずに『外来種はやっつけろ』というのは問題。
●『バスは絶滅させろ』という学者もいるが、学者の本分は学問。バスの研究をするのが学者の仕事であって、その結果バスをどうするかを決めるのは政治の問題。だいたい、日本からバスを全滅させるのにどれだけ金がかかるのか、経済オンチの学者はわかっていない。おそらく5兆円くらいはかかると思うが、そんな金いったい誰が出すのか。
……とまぁ、池田さんがおっしゃっていたのは、だいたいこんなことである。
溜飲を下げるバスアングラーも多いのではないだろうか。
この基調講演のあと、メインイベントともいえるパネルディスカッションが始まったのだが、
ちょっと長くなってしまいそうなので、この続きはまた後日。
てなワケでゼゼラさん、モタモタしててごめんなさい。

今回のイベントの告知ポスター。
イベントに携わったスタッフのみなさんの苦労は相当だったと思うが、ぜひ今後もこのようなイベントは、継続してほしいものだ

●なお、このイベントのレポートは9月26日発売予定の雑誌Basser11月号と翌月発売の12月号にわたって掲載予定。発行元のつり人社のホームページ:(http://www.tsuribito.co.jp/
●関連サイト
八郎湖守ろう協議会(http://savehachiro.fc2web.com/
ゼゼラノート(http://www.zezera.com/