バスフィッシングと出会って20年あまり。 すっかりオッサンになったかつての釣り好き少年が、 これまでに出会ったさまざまなことを つれづれ〜っと書いていきます。 ご意見、ご感想、叱咤激励はこちらまでよろしくね。 TEXT by Jun Sugawara
BEAT 13 長野県のシンポジウム(2003/6/2) 5月18日に、長野県で「日本の川(湖)と魚を考える」と題したシンポジウムが開催された。 4月に長野県の内水面漁場管理委員会が外来魚のリリース禁止を決定した直後ということもあり、 このシンポジウムには多くのバスアングラーが注目していたことだろう。 ただし、タイトルからもわかるようにこのシンポジウムの主題はバス問題ではない。 基調講演では天野礼子さんが我が国のダム問題を語り、 C.W.ニコルさんは荒廃したカナダの河川にサケを呼び戻す活動について講演。 つまり、水辺をとりまく環境そのものについて考えることがシンポジウムの目的であったわけだ。 そのためか、一部のバスアングラーからは不満の声も聞かれたが、 いわゆるバス問題というものも、その根本といえる水辺の環境を抜きにして語ることはできない。 バス問題は「在来種の保護」という錦の御旗のもとで語られることが多いが、 バスの補食だけが在来種の危機を招いているわけではけっしてない。 宅地開発や圃場整備による生息地そのものの消失や、戦後の植林事業によって失われた広葉樹林、 ダムや河口堰によって失われた自然の増減水……。 天野礼子さんが日本の水系を語るうえで「もっと大切なことがある」と語っていたのは、 そういう意味だということを、まずは理解する必要があるだろう。 パネルディスカッションでは、長野県知事の田中康夫さんと東京水産大学助教授の水口憲哉さん、 自然環境問題に明るい作家C.W.ニコルさんを迎え、バスのゾーニングについての意見が交わされた。 このシンポジウムの後、田中康夫知事の「検討不足」という判断で、 長野県における委員会指示がペンディングとなったことはみなさんもご存じのことだろう。 野尻湖のようにバスを観光資源としている湖や、バスアングラーにとっては朗報といえるものだが、 手放しで喜べる話ではないこともまた事実だ。 多くのアングラーは「田中知事がリリース禁止をストップさせてくれた」と考えているようだが、 少なくとも知事は県内におけるバス、そしてバスフィッシングを認めたわけではない。 「脱ダム宣言」で知られる田中康夫知事は、極めてリベラルな姿勢で県政にあたっている人物である。 パネルディスカッションでの言葉、そしてこれまでの県政に対する姿勢からもわかるように、 漁業者を中心とした組織のみで内水面の管理を決定することに疑問を投げかけたと考えるべきだろう。 今後、田中知事が長野県内のバス問題をどのように判断していくのかはわからない。 しかし、某県の知事のように「生態系保全のためにダムが必要」などという発言はしないだろうし、 保身のために既得権益を闇雲に保護するということもないだろう。 そういう意味では、私たちバスアングラーは今後の長野県の行方をしっかりと見守り、 マナー問題や自分自身のモラルというものに関しても襟を正していく必要があるはずだ。 また、このほかにもこのシンポジウムでは興味深い点が非常に多かった。 たとえば、C.W.ニコルさん。 ニコルさんはかつて、月刊“ヴューズ”に掲載された「『バス釣り礼賛』に重大疑義あり!」 という記事において、日本のバスに対して否定的なコメントを寄せていた。 また、滋賀県琵琶湖レジャー利用適正化条例の施行を前に開催された外来魚釣り大会の関連イベント として開催されたシンポジウムに招かれるなど、いわゆる「バス駆除派」というイメージが強かった。 しかし、今回のシンポジウムで水口さんの話を聞いていたニコルさんは、 「僕はまだまだバスについてわからないです」と発言している。 穿った見方をすれば、これまでニコルさんは害魚論を唱える人々に利用されていたとも思えてしまう。 いずれにせよ、天野さんが提案していたように、 このような「開かれた議論の場」が今後も増えていくことを期待したいものである。 できれば、漁業者、魚類学者、政治家、水域のサービス業者、そして遊漁者など、 水と水辺に関わるさまざまな人々の間で建設的な議論が行なわれることを願いたい。 そしてなにより、このような場に私たちバスアングラーも積極的に参加する必要があると思う。 天野さんは「ダム問題ならもっと人が集まるのに……」と話していたが、 私たちバスアングラーは、このような場への参加意識が非常に低いと言わざるを得ない。 リリース禁止のような「目の前にある危機感」にあおられるのではなく、 バスを含めた自然環境に対してもっと興味をもち、幅広い知識を身につけてほしい。 そして最後に……。 会場では、FB's Societyの方々がボランティアとして駐車場の整理などを行なっていた。 みなさんには心からお疲れさまと言いたい。 そして、そんなボランティアの方々の脇を、くわえ煙草で歩く方が見られたのは本当に残念だ。 こういった場では、そのような行動ひとつひとつが見られていると考えてほしい。