さて、アメリカでの姿が結構サマになっているモリゾーだが、肝心の釣りのほうはどうなのだろうか。これに関してモリゾーは、いい意味でも悪い意味でも“自分流”を貫いている。たとえば、2001年11月15〜17日に開催された第2戦の舞台、カリフォルニア州レイク・オロビルでの試合が象徴的だったといえるだろう。このレイク・オロビルは山間部にあるリザーバーで、比較的クリアな水質が特徴だ。生息しているバスはラージマウスバスとスモールマウスバス、そしてスポッテッドバスだが、圧倒的に数が多いのはスポッテッドバス。さらに興味深いのは、このレイクのメインベイトがワカサギであることだ。このワカサギはかつて日本から移入されたもので、現地ではポンド・スメルトと呼ばれている。
比較的深いレンジを好むスポッテッドバス、そしてベイトフィッシュがワカサギということでわかるように、このトーナメントで多くのアングラーが狙っていたのがディープエリアである。さらにいえば、ほとんどのアングラーがダウンショットリグをセレクトしていた。つまり……このトーナメントはアメリカとはいえ、非常に日本的な状況だったといえる。ただし、こういった日本的な状況というのは、アメリカ西部エリアでは珍しいことではない。比較的ディープエリアの多いアメリカ西部エリアではダウンショットリグが多用されるし、沖のハンプなど、ディープストラクチャー攻略は必携ともいえるものなのだ。事実、現在BASSMASTER
TOURに参戦しているアメリカ西部エリア在住のアングラー、アーロン・マーテンスやブレット・ハイトなどはこういった釣りを得意にしている。
そのような状況の中、モリゾーがとっていたのはディープストラクチャーではなく、バックウォーターまでをも視野に入れたシャローエリア。
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しかも、クランクベイトを主体としたハードベイトをメインに使用していたのである。トーナメント期間中には寒冷前線の通過もあり、このシャロー攻略はリスキーなものだったが、この戦略がけっして間違いではなかったのも事実である。
まず第一に、シャローエリアではサイズのいいラージマウスバスが釣れる可能性が高いこと。レイク・オロビルのスポッテッドバスの場合、アベレージはせいぜい1ポンド強。つまり、リミットを揃えても6〜7ポンドがアベレージということになる。しかし、数こそ少ないものの、このレイクには1尾で4ポンドを越えるラージマウスが潜んでいる。圧倒的に数が少ないラージマウスだけねらって釣ることは不可能だが、その可能性をできるだけ高くするという意味でシャロー撃ちは正解だったといえるだろう。
第二のポイントは、フィールドが大規模な減水状態にあったことだ。普段は水中にあるハンプなどが陸地となっていたため、質のいいディープストラクチャーそのものが非常に少なくなっていたのだ。実際、メインレイクの岬に近いハンプなどの一級スポットの付近には多くのボートが浮かび、そのようすは……まるで日本のトーナメントのようであった。つまり、フィッシングプレッシャーもかなり高くなっていたのである。
ご存じの方も多いだろうが、モリゾーはこういったボートの群れの中で釣りをすることを嫌っている。日本では異端に思われる彼のスタイルはアメリカ的ともいえるが、日本的なアメリカ西部エリアにおいても、彼のスタイルは異端に見えるものだったのだ。
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