私がバスフィッシングをするために初めて琵琶湖を訪れたのは、今から15年ほど前のことでした。この当時の琵琶湖は、木ノ浜沖でバイブレーションを360°キャストすれば、確実にバスが釣れた時代です。南湖の水質はけっしてよいとは思えませんでしたが、それでもバスをキャッチするのは簡単でした。ですが……現在はどうでしょう。
この日も、加藤さんはバスをキャッチするのにかなり苦労していました。近年になってバスが増えたという報道は多いようですが、少なくとも、私にはここ10年で琵琶湖のバスが増えたとは思えません。琵琶湖でバスフィッシングを楽しんでいる方なら、誰もが「バスは少なくなった」と感じているでしょう。バスが減った要因はさまざまなことが考えられます。私たちバスアングラーのフィッシングプレッシャー、行政による駆除……。
バスのような肉食魚は一時的に増加しても、淘汰されてある程度の生息数で落ち着くともいわれています。ですが、もし……バス減少の一因が琵琶湖の環境悪化にあるとしたら、みなさんはどう思うでしょうか。“湖のギャング”などと呼ばれて強い魚というイメージがあるバスも、実際には一魚種にすぎません。生息環境が汚染されれば、生きていくことなどできないんです。
今回の条例案要綱が、本当の意味で琵琶湖の環境を鑑みたうえでのことなら納得できます。
たとえば、琵琶湖での一切の釣りや職漁を禁止し、内湖や流入河川を含めた周辺環境内での浚渫や開発をやめ、これまでに行なわれた護岸をすべて元の状態に戻し、かつての琵琶湖を取り戻すためにあらゆる手段を講じる。その一環として外来魚を駆除するというのであれば、私たちバスアングラーも納得するしかないでしょう。ですが、琵琶湖の現状は、先に書いたとおりです。
外来生物がいなくなっただけで琵琶湖の環境がよくなることなど、絶対にあり得ません。
先日、琵琶湖湖畔で開催されたシンポジウムで、滋賀県農政水産部の方にお会いしました。その方の名刺にはイラストとともに「琵琶湖にワタカを取り戻そう」という文字が書かれていました。ワタカは水草を主体とする雑食性の魚で、この魚が減少したことによって、琵琶湖の外来の藻類が増加しているのではないか……とのことです。
実際、琵琶湖では在来の水草であるエビモやネジレモなどが減り、オオカナダモなどの外来種が増えているようです。
ちなみに、このワタカという魚は琵琶湖淀川水系の固有種で、ヨシ場をおもな生息場所としています。図鑑などによると、琵琶湖では湖南や湖東部の沿岸や内湖に生息するとされているのですが……。
さて、ワタカはなぜ減少したのでしょうか?
原因は、現在の琵琶湖の湖南や湖東部の沿岸を観察すれば一目瞭然です。行政の方が「外来魚に補食されたからワタカが減少した」などと言い出さないことを、心から祈りたいところです……。
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