大阪市水道記念館管理課長・横山達也さん「多様な生物は地域の遺産」

 トビハゼ、カワアナゴ、ヨドゼゼラ…。淀川といえば国の天然記念物、イタセンパラだが、まだまだ知らない魚がたくさんいる。「琵琶湖・淀川水系には約120種の魚類が生息しています。これだけ多様な種がいる地域は国内では他にはない。魚類を飼育、研究する者にとっては恵まれている」。平成10年のリニューアル後から飼育を担当している大阪市水道記念館管理課長の横山達也さん(44)は力を込める。

 阪急・柴島(くにじま)駅からすぐ。赤レンガと御影石が調和した外観が目を引く。国の有形文化財にも指定されている大阪市水道記念館(大阪市東淀川区柴島)。大正3(1914)年から昭和61(1986)年まで旧第1配水ポンプ場だった建物を保存・活用した。

 平成7年に市の水道通水100周年事業の一環として水道事業のPRを目的に開館。10年に展示スペースがリニューアルされ、琵琶湖・淀川水系の淡水魚など生物の展示を始めた。飼育する生物は増え続け、併設する飼育研究棟と合わせると、202種、約1万1千に上る。特に107種を数える国内産淡水魚の飼育保有数は全国の水族館施設の中で最も多いという。

 展示スペースにある立体的なパノラマ水槽をはじめ、飼育研究棟に並ぶ3段に重ねた水槽。来館者は気軽に身近な環境に生息する魚類などを観察できる。飼育には高度処理した水道水は使わない。淀川の水環境を広く知ってもらうため、ごみや沈殿物を取り除くなどの処理にとどめた水を使う。

 「淀川の水は多様な生物の命を支えている。水の安全性を知ってもらうため淀川の原水に近い水を使っている」と理由を説明する。

 飼育とともに、貴重な生物を後世に伝えるため横山さんら職員は繁殖にも力を入れるが、試行錯誤の連続だ。

 国の天然記念物で、淀川のワンドなど限られた地域に生息するタナゴ類の「イタセンパラ」。10年以上前から人工繁殖を続けているが、近年は近親交配が進んだ影響で奇形種も目立つという。同じく天然記念物のドジョウ科の「アユモドキ」。昨年、人工繁殖に挑戦したが成功しなかった。

 「アユモドキは河川や水田の改修など環境の変化で激減したとされるが、ストレスをためることもなく、非常に飼育しやすい魚。ここで飼育している限りでは、絶滅が危惧(きぐ)されているとは思えないのだが…」

 水源地の調査に同行すると、比較的長寿のコイやフナ、ドジョウ類では成魚は多いが、稚魚が減少するなど生物の生息状況がここ数年で変化しているケースを目にする。河川改修など水環境の変化もだが、ブラックバスやブルーギルといった外来種の増加も生態系に大きな影響を与えている。

 「琵琶湖・淀川水系の多様な生物は地域の遺産。私たちはそれを守らなくてはいけない」。生物の観察を通じて淀川の水の安全を見守り続けている。(加藤浩二)

【メモ】ワンド 川の本流と繋がっているが、河川構造物などに囲まれて池のようになっている地形。水流が穏やかで淡水魚の生息に適しており、水生植物が繁茂する場所は、産卵や稚魚の生息に好条件になる。淀川のワンドは改修工事によって人工的に生まれ、イタセンパラの生息地として注目されている。

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